2022年版開発協力白書 日本の国際協力

用語集

アンタイド/タイド援助 アンタイド援助とは、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)の定義によれば、「OECD全加盟国および実質的にあらゆる援助受取国からの自由かつ十分な調達が可能であるような贈与または借款」とされている。タイド援助は、これらの調達先が援助供与国に限定されるなどの条件が付くものを指し、日本語では「ひもつき」援助と訳されることがある。2001年にDACで後発開発途上国(LDCs)向け援助のアンタイド化勧告が合意され(技術協力と食糧援助を除く、有償資金協力と無償資金協力が対象)、DACメンバー国に適用されている。同勧告の対象国は、2008年にLDCs以外の重債務貧困国(HIPCs)に、2018年にその他低所得国(OLICs)および世界銀行IDA融資のみの適格国(IDA-only countries and territories)にも拡大された。
援助協調 開発途上国の開発目標の達成のため、様々な援助主体が情報共有を行い、援助の戦略策定やプロジェクト計画・実施などにおいて活動を協調させ、途上国と共に効果的・効率的な開発協力を進めていくこと。案件ごとのドナー同士の連携・調整だけではなく、被援助国の開発政策に沿って、ドナーが共通の戦略や手続で支援を行う総合的な援助協調が世界各国で進められている。なお、近年、新興国や民間セクターなど、開発に関わるアクター(主体)が多様化していることから、主に先進国ドナー間の協調を指す「援助協調」に加え、「開発協力のためのパートナーシップ」や「開発協力のアクター(主体)間の連携」などの言葉も使われる。
ODAを活用した官民連携 民間企業の意見をODAの案件形成の段階から取り入れて、例えば、基礎インフラはODAで整備し、投資や運営・維持管理は民間で行うといったように、官民で役割分担し、より効率的・効果的な事業の実施を目指すもの。上下水道、空港、高速道路、鉄道などの分野での連携事例がある。JICAが行う企業提案型の民間連携事業としては、「海外投融資」の活用を前提とした事業の計画策定を支援する「協力準備調査(海外投融資)」、途上国の課題解決に貢献する日本の民間企業などのビジネスづくりを支援する「中小企業・SDGsビジネス支援事業」などがある。
開発協力大綱 日本が実施する開発協力の最上位の政策文書として、開発協力の理念、重点政策、実施の在り方などを定めたもの。1992年6月に策定後、2003年8月に改定された政府開発援助大綱(ODA大綱)を再度改定し、名称を「開発協力大綱」に変え、2015年2月に閣議決定された。2023年前半を目処に、新たな大綱の策定を予定している(「開発協力トピックス」も参照)。
「開発途上地域」指定国 ODA対象国・地域に関するDACリスト(図表Ⅰ-10を参照)から卒業した国の中で、JICA法第3条(機構の目的)を踏まえ、「開発途上地域」に当たると整理を行い、日本として支援を継続している国。2022年12月現在、「開発途上地域」指定国には、アラブ首長国連邦、アンティグア・バーブーダ、ウルグアイ、オマーン、クウェート、クック諸島、サウジアラビア、セーシェル、セントクリストファー・ネービス、チリ、トリニダード・トバゴ、バハマ、バルバドス、バーレーン、ブルネイが該当する。
技術協力 日本の知識・技術・経験をいかし、途上国・地域の社会・経済の開発の担い手となる人材の育成を行う協力。
技術協力プロジェクト 専門家派遣、研修員受入、機材供与などを最適な形で組み合わせて途上国の関係機関と事業計画の立案、実施を一貫して計画的かつ総合的に実施する技術協力。
専門家派遣 日本から途上国へ専門家を派遣し、相手国の行政官や技術者に必要な技術や知識を伝えるとともに、これらの人々と協働して現地に適合した技術や制度の開発、啓発や普及などを行う事業。
第三国専門家派遣
技術協力を効果的に実施するため、協力対象の途上国に他の途上国から専門家を派遣する事業。
研修員受入 途上国において指導的役割を担うことが期待されている行政官や技術者などに対して、各分野の技術研修、新知識の習得支援あるいは訓練を行うことを目的とする事業。
第三国研修
途上国が日本の支援の下、優れた開発経験や知識・技術の移転・普及・定着などを目的に、他の途上国から人員を受け入れて実施する研修。
機材供与 技術協力プロジェクトや専門家の業務に係る技術協力などのために機材を供与すること。
開発計画調査型技術協力 途上国の政策立案や公共事業計画策定を支援することを目的に、調査の実施過程を通じ、相手国担当機関に調査・分析手法や計画の策定手法などの技術移転を図るもの。都市開発や運輸交通、主要インフラ分野における開発計画の策定などが主要な例。
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS) 用語解説を参照。
コストシェア技術協力 「開発途上地域」指定国のうち、引き続き日本の支援を必要とする開発課題を有する国を対象に行う技術協力。JICAを通じた開発協力によって日本がこれまで蓄積してきた経験も活用しながら、日本の質の高い技術・知識・経験を提供し、相手国政府に必要な経費を原則負担させる形で実施することにより、相手国の経済社会開発に寄与し、それらの国と日本との良好な二国間関係の維持および増進を図るとともに、日本のエネルギーの安定確保、日本企業に有利なビジネス環境の構築・インフラ輸出促進にも貢献することを目的としている技術協力。
基礎生活分野/人間の基本的ニーズ(BHN:Basic Human Needs) 食料、住居、衣服など、人間としての基本的な生活を営む上で必要最低限のもの。保健や教育なども含む。
国別開発協力方針(旧国別援助方針) ODAの戦略性・効率性・透明性の向上に向けた取組の一環として、被援助国の政治・経済・社会情勢を踏まえ、当該国の開発計画や開発上の課題などを総合的に勘案して策定する日本のODA方針。
事業展開計画 国別開発協力方針の別紙として、実施決定から完了までの段階にある個別のODA案件を、国ごとに設定したODAの重点分野・開発課題・協力プログラムに分類して、一覧できるようにとりまとめたもの。被援助国および日本の関係者間で共有され、援助の予見可能性を高めることに役立つ資料として、毎年1回更新している。
グラント・エレメント 援助条件の緩やかさを示す指標。借款の利率、返済期間・回数、返済据置期間を反映し、パーセントで表示される。贈与はグラント・エレメント=100%となる。数字が高いほど、緩やかさの程度が大きい。
経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC) OECDにおいて、開発援助に関する事柄を取り扱う委員会。2023年3月時点において、OECD加盟38か国のうち、30か国および欧州連合(EU)からなる。なお、2022年版開発協力白書におけるDAC諸国の各種支援実績は2021年のものであり、2021年においては29か国およびEU、2022年11月に新たにDACメンバー国となったリトアニアの支援実績は含まれない。
現地ODAタスクフォース 2003年度から、途上国における日本の開発協力を効果的・効率的に実施するため、大使館およびJICAを中心に、JETRO(日本貿易振興機構)、JBIC(国際協力銀行)などの現地事務所を主要な構成メンバーとして立ち上げられたタスクフォース。途上国の開発政策と日本の開発協力政策の調和を図り、相手国政府との政策協議や、他ドナーとの援助協調、要望調査を通じた案件形成、実施監理などを行っている。
国際開発金融機関(MDBs:Multilateral Development Banks) 途上国の貧困削減や持続的な経済・社会的発展を、金融支援や技術支援、知的貢献を通じて総合的に支援する国際機関の総称。一般的にMDBsと言えば、全世界を支援対象とする世界銀行グループ(World Bank Group)と、各所轄地域を支援するアジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行(IDB)、アフリカ開発銀行(AfDB)、欧州復興開発銀行(EBRD)の4つの地域開発金融機関を指す。
国際協力機構(JICA) 国際協力事業団を前身とし、2003年10月1日に発足した独立行政法人。日本のODAの主な実施機関。2008年10月、これまで実施してきた技術協力に加え、国際協力銀行(当時)の海外経済協力部門が担当してきた有償資金協力(円借款など)、外務省が実施してきた無償資金協力に係る業務の一部が統合された。これによって、3つの援助手法を一元的に実施する総合的な援助実施機関となった。
国際協力銀行(JBIC) 2012年4月1日に日本政策金融公庫から分離して設立された、日本政府が全株式を保有する政策金融機関。一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としつつ、(1)日本にとって重要な資源の海外における開発および取得の促進、(2)日本の産業の国際競争力の維持および向上、(3)地球温暖化の防止などの地球環境の保全を目的とする海外における事業の促進、(4)国際金融秩序の混乱の防止またはその被害への対処、の4つの分野について業務を行い、日本および国際経済社会への健全な発展に寄与することを目的としている。
国際緊急援助隊 国際緊急援助隊の派遣に関する法律に基づき、海外の地域、特に開発途上にある地域における大規模な自然災害や人為的災害(紛争起因の災害を除く)に対し、被災国政府などの要請に応じ、緊急援助活動を行う人員を派遣する事業。救助チーム、医療チーム、感染症対策チーム、専門家チームおよび自衛隊部隊の5種類がある(「ア 国際緊急援助隊」も参照)。
国際貧困ライン 世界銀行が定めている、貧困を定義するためのボーダーライン。全ての国の貧困層を同じ基準で測定するため、世界の最貧国数か国の国別貧困ライン(各国において、最低限必要な衣食住が確保できなくなる収入レベル)を共通の通貨価値に換算し、平均したもの。2015年に改定された最新の国際貧困ラインは、1日1.90ドルに設定されている。
債務救済 途上国の国際収支が悪化し、既存の債務の支払いが困難になった場合、支払期限が到来したか、または将来到来する債務の支払いを猶予し、一定期間にわたる分割返済を認めたり(債務繰延:リスケジュール)、これを免除(債務免除または債務削減)したりすること。
持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)/持続可能な開発目標(SDGs) 2015年9月に国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標。ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)の後継として、保健や教育などのMDGsの残された課題や、環境問題や格差拡大などの新たに顕在化した課題に対応すべく策定された。17のゴールと169のターゲットからなる持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を掲げている。先進国を含むユニバーサル(普遍的)な目標であり、誰一人取り残さない社会の実現を目指し、経済・社会・環境をめぐる広範な課題に統合的に取り組むこととされている。
JICA海外協力隊 (2)JICA海外協力隊(JICAボランティア事業)を参照。
贈与相当額計上方式(GE:Grant Equivalent方式) 脚注10を参照。
BOP(Base of the Pyramid)ビジネス 途上国の貧困層を対象にした、社会的な課題解決に役立つことが期待されるビジネス。低所得層は約50億人、世界人口の約7割を占めるとも言われ、潜在的な成長市場として注目されている。低所得層を消費、生産、販売などのバリューチェーンに巻き込むことで、現地における様々な社会的課題の持続可能な解決に役立つことが期待される。
無償資金協力 途上地域の開発を主たる目的として同地域の政府などに対して行われる無償の資金供与による協力。国際社会のニーズに迅速かつ機動的に対応するための有効な手段であり、国際社会の安定確保や日本のリーダーシップ向上に資する大きな政策的効果がある。
経済社会開発計画 外務省が実施のために必要な業務を行う無償資金協力のうち、事業実施への資金供与ではなく物資輸入のための外貨支援を行うもの。調達代理機関を通じて調達を行う。
食糧援助 貧困削減を含む経済社会開発努力を実施している途上国に対し、食糧援助規約に関連して行われる食糧援助を実施するため、必要な生産物および役務の調達のための資金を贈与する無償資金協力。
草の根・人間の安全保障無償資金協力 人間の安全保障の理念を踏まえ、途上国における経済社会開発を目的とし、草の根レベルの住民に直接貢献する、比較的小規模な事業のために必要な資金を供与する無償資金協力(供与限度額は原則1,000万円以下)。NGOや地方公共団体などを対象としている。
日本NGO連携無償資金協力 日本の国際協力NGOが途上国・地域で実施する経済社会開発プロジェクトや、災害等復旧・復興支援プロジェクトなどに対する無償資金協力。
緊急無償資金協力 海外における自然災害や紛争の被災者・難民・避難民などを救援することを目的として、被災地で緊急援助活動を行う国際機関・赤十字や被災国政府に対し、緊急に実施される無償資金協力。
一般文化無償資金協力 用語解説を参照。
草の根文化無償資金協力 用語解説を参照。
有償勘定技術支援 円借款または海外投融資による有償資金協力の迅速・円滑な実施もしくは達成、またはその開発効果向上を目的として研修、専門家派遣、調査などをJICA有償資金協力勘定から実施するもの。
有償資金協力 開発途上地域の開発を主たる目的として、資金の供与の条件が開発途上地域にとって重い負担にならないよう、金利、償還期間などについて緩やかな条件が付された有償の資金供与による協力。開発途上地域の政府などに対して開発事業の実施に必要な資金、または当該開発途上地域の経済の安定に関する計画の達成に必要な資金を貸し付ける「円借款」と、日本国内または開発途上地域の法人などに対して開発事業に必要な資金を融資・出資する「海外投融資」がある。有償資金協力は、無償資金協力と比較して大規模な支援を行いやすく、途上国の経済社会開発に不可欠なインフラ建設などの支援に効果的である。また、途上国に返済義務を課すことで自助努力を促す効果を持つ。さらに、途上国と長期にわたる貸借関係を設定することにより、中長期にわたる安定的な関係の基礎が構築できる。
海外投融資 JICAが行う有償資金協力の一つで、途上国での事業実施を担う民間セクターの法人などに対して、必要な資金を出資・融資するもの。民間企業の途上国での事業は、雇用を創出し、経済の活性化につながるが、様々なリスクがあり、高い収益が望めないことも多いため、民間の金融機関から十分な資金が得られないことがある。海外投融資は、そのような事業に出資・融資することにより、途上国の開発を支援している。支援対象分野は、(1)インフラ・成長加速化、(2)SDGs・貧困削減、(3)気候変動対策を含む(詳細は「エ 海外投融資」を参照)。
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