2022年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス1

開発協力大綱の改定

1 2015年以降の情勢の変化

開発協力大綱を改定した2015年以降、持続可能な開発目標(SDGs)の採択や気候変動に関するパリ協定の発効など、国際的な協力を通じて地球規模課題に取り組む動きが進展しました。その一方で、ロシアによる不当かつ不法なウクライナ侵略など、普遍的価値に基づく国際秩序は厳しい挑戦を受けており、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の理念の具現化がますます緊要となっています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大が世界の経済・社会に深刻な影響を与える中、国際情勢の急激な変動によるサプライチェーンの分断や、新型コロナの拡大とともに急加速したデジタル化の進展によるサイバーセキュリティの問題など、経済と安全保障が直結して各国に影響を及ぼしています。

世界がこうした不確実性に晒(さら)される中、開発途上国は安定的な発展を見通すことが困難になっています。貧困削減は遠のき、食料危機やエネルギー危機が人道状況の悪化に拍車をかけるなど、人間の安全保障の理念に沿った対応が急務となっています。同時に、SDGsや気候変動等への取組における民間セクターや市民社会等の取組の増加など、開発協力をめぐる官民の役割分担も変化しています。

2 開発協力大綱の改定

第2回有識者懇談会の様子

第2回有識者懇談会の様子

林外務大臣

林外務大臣

このように国際情勢が大きく変化する中、日本が引き続き国際社会の期待と信頼に応えるとともに、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜き、日本自身の平和と繁栄といった国益を確保していくためには、日本の「外交力」のさらなる強化が不可欠です。そのためには、外交の最も重要なツールの一つであるODAのさらなる活用を図ることが必要です。これを受け、2022年9月、外務省は、開発協力大綱の改定を行うことを発表し、林外務大臣の下、中西寛(ひろし)京都大学大学院法学研究科教授を座長とする「開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会」を立ち上げることとしました注1

3 有識者懇談会の開催

「開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会」報告書の林大臣への提出

「開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会」報告書の林大臣への提出

武井外務副大臣

武井外務副大臣

吉川外務大臣政務官

吉川外務大臣政務官

2022年9月から11月にかけて、林大臣の下で4回の有識者懇談会が開催され、今後約10年の開発協力の方向性、ODAの戦略性の強化、実施上の原則、実施基盤等について精力的な議論が行われました。12月には懇談会の議論を取りまとめた報告書注2が、林大臣に提出されました。

この報告書では、現行の大綱の策定以降の国際情勢の変化を踏まえ、時代に即したODAの一層の戦略的活用の観点から提言がなされました。今後の開発協力の方向性としては、人間の安全保障を基本理念として、「普遍的価値に基づく国際秩序の維持」、「世界と共に発展・繁栄する環境作り」、「地球規模課題に対する国際的取組の主導」の3点を掲げることが提案されています。

その上で、(1)同志国、民間セクター、市民社会など国内外のパートナーとの連携強化、(2)ODAの支援手法の柔軟化、(3)オファー型支援の強化による日本の強みをいかした開発協力の魅力向上などについても提案されました。また、こうした取組を裏打ちするものとして、今後10年間で国際目標であるODA実績対GNI比0.7%を達成するなど、国際目標の達成に向け具体的な道筋を示すべきとの点について提言がありました。

今後、報告書の内容も踏まえ、幅広い国民の意見を聞きながら、2023年前半を目処に新たな開発協力大綱を策定する予定です。


注1 https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_001245.html

注2 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100432142.pdf

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