3 新興ドナーや民間主体による「途上国支援」の増加

2022年6月のOECD閣僚理事会に出席し、コーマンOECD事務総長と立ち話をする三宅外務大臣政務官(当時)
近年、DACメンバーに加え、DACに参加していない中国、インド、インドネシア、サウジアラビア、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、トルコ、南アフリカ等の新興ドナーや民間の財団などによる開発途上国支援が増加しています。DACに実績報告を行っている非DAC諸国は少ないですが、DACの統計で集計されているだけでも、2021年では、非DAC諸国による支援は計190億ドル以上、DAC諸国および非DAC諸国からの民間資金は計2,700億ドル以上、NGOによる支援は計約120億ドルに達しています注17。
G20バリ・サミットで採択された首脳宣言において、「持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支援するため、民間投資の促進を含め、より多様な革新的資金源及び手段を通じ、低・中所得国及びその他の開発途上国への更なる投資を引き出す。」と言及されているように、SDGsの達成に向けて、様々な主体による資金が途上国に向けられることが求められています。
途上国への資金の流れが多様化する中、その流れを正確に把握し、限りある開発資金を効果的に活用することは国際社会が連携して開発協力を推進するためには不可欠ですが、非DAC諸国などが実施する途上国支援の内容は、DACが作成・公表する統計では全てが明らかにならないのが現状です。また、国際ルール・スタンダードに合致しない不透明かつ不公正な貸付慣行の存在も指摘されています。
こうした情況下、2022年にはG7、G20やTICAD8、OECD等の様々な国際フォーラムにおいて、開発金融の透明性等について議論が行われました。例えば、3月に開催されたTICAD閣僚会合では、林外務大臣から、透明で公正な開発金融の重要性について発言するとともに、8月に開催されたTICAD 8では、岸田総理大臣からのビデオメッセージで、透明で公正な開発金融の確保が重要であることが訴えられました。また、9月に開催されたG20開発大臣会合では、武井外務副大臣から、質の高いインフラ投資に関するG20原則に規定される透明性、開放性、経済性、債務持続可能性、環境・社会への配慮といった要素を確実に実施していくことの重要性について述べ、G20各国にも同様の取組や知見の共有を呼びかけ、さらに、開発資金の透明性・公平性の確保や開発金融に関する国際ルール・スタンダードの遵守の重要性を訴えました。
また、2022年6月のOECD閣僚理事会において採択された閣僚声明では、新興ドナーによるOECDの基準および規範への挑戦を認識し、OECDの役割を強化することにより、また、OECDの基準をグローバルに推進することにより、我々のグローバルな関与を強化する旨が表明されました。これは、2021年10月に、OECDの今後10年間の基本方針を示す文書である「OECD設立60周年ビジョン・ステートメント」にて、「全ての関係者」に対し、透明性および説明責任を向上させるようOECDの基準および慣行の遵守を促進する旨が表明されたことに続くものです。また、10月に開催されたOECD開発センター注18理事会第8回ハイレベル会合にて採択された「開発センターの将来展望に関する政策声明」においては、債務、財政の持続可能性などの分野における問題を、透明性と説明責任を持って是正する必要がある旨が表明されました。
日本としては、中国等、新興ドナーの途上国支援が国際的な基準や取組と整合的な形で透明性を持って行われるように、引き続き国際社会と連携しながら働きかけていきます(債務問題への取組および諸外国・国際機関との連携も参照)。

- 注17 : OECDデータベース(OECD.Stat)(2022年12月)。
- 注18 : 様々な開発課題・経済政策に関する調査・研究等を行うOECDの一機関。OECD加盟国だけでなく、中国を始めとするOECD非加盟の新興ドナーや途上国もメンバーとなっている。