2022年版開発協力白書 日本の国際協力

(2)実績から見た主要ドナーの開発協力概要

いかなる協力がODAに該当するのか、それをどのように報告するかについては、OECD開発援助委員会(DAC)が国際的なルールを定めています。DACが定めるルールでは、ODAは、(ⅰ)公的機関またはその実施機関によって供与される、(ⅱ)開発途上国の経済開発や福祉の向上を主目的とする、(ⅲ)譲許的性格を有する(政府貸付等の場合、貸付条件(金利、償還期間等)が受取国にとって有利に設定されている)、の3要件を満たすものとされています。

このように、DAC諸国はDACが定めるルールに基づいて開発協力を行っていますが、主要ドナーが実施するODAの内容は国によって異なっています。ここでは、主にG7諸国を中心としたDACドナーの援助概要について2021年の実績を参考に概説します。

■主要ドナーの支援実績

2021年のDAC諸国のODA供与額(贈与相当額計上方式(GE方式))は、約1,859億3,000万ドルでした。国別実績(GE方式、DAC諸国における構成比)では、1位が米国(約478億500万ドル、25.7%)、2位がドイツ(約332億7,200万ドル、17.9%)、3位が日本(約176億3,400万ドル、9.5%)、4位が英国(約157億1,200万ドル、8.5%)、5位がフランス(約155億600万ドル、8.3%)、6位がカナダ(約63億300万ドル、3.4%)7位がイタリア(約60億8,500万ドル、3.3%)、8位スウェーデン(約59億3,400万ドル、3.2%)、9位オランダ(約52億8,800万ドル、2.8%)とG7諸国が上位を占めています注14

■主要ドナーの支援分野

2021年の実績では、米国、英国、フランス、ドイツ、カナダは、教育、保健、上下水道等の社会インフラ分野への支援を重点的に行っています。また、米国は社会インフラ分野への支援と同程度(ODA全体の40%弱)を人道支援等の緊急援助・食糧援助に充てています。一方で、道路や橋、鉄道、通信、電力等の経済インフラ分野については、日本が最も多く35.8%を、次いでフランスが23.1%をそれぞれ配分しています。日本の協力に占める経済インフラ分野での支援が大きいのは、自らの戦後の復興経験からも、開発途上国の持続的な経済成長を通じた貧困削減等の達成のためには、まず経済インフラを整え、自助努力を後押しすることが不可欠と考えているからです(図表Ⅰ-7)。

図表Ⅰ-7 主要DAC諸国の二国間ODAの分野別配分(2021年)
■主要ドナーの支援地域

日本はアジア地域を中心に支援している(2021年の支出総額(以下同)の約59.1%)のに対し(図表Ⅰ-2)、米国、カナダ、フランス、英国、ドイツおよびイタリアはサブサハラ・アフリカ向け支援が1位(それぞれ34.9%、42.4%、26.6%、23.4%、19.8%、40.5%)となっています注15。また、地域別で見た主要DAC諸国からの支援実績の割合では、米国は中東・北アフリカ(30.5%)、サブサハラ・アフリカ(37.2%)、および中南米地域(28.7%)で1位となっています。大洋州ではオーストラリアが総供与額の45.3%を支援しているほか、旧ユーゴスラビア諸国やウクライナなどの欧州地域ではドイツが31.0%を占めています。このように、各国による支援重点地域は、地理的近接性や歴史的経緯等による影響も受けています(図表Ⅰ-8)。

図表Ⅰ-8 地域別実績における主要DAC諸国(2021年)
■援助形態別の実績(2021年)

援助形態別に見ると、2021年のDAC諸国全体のODA実績のうち、贈与が約85.4%(二国間無償注16:約49.3%、二国間技術協力:約9.3%、国際機関向け贈与:約26.8%)、政府貸付等が約14.7%(二国間:約13.5%、国際機関向け:約1.2%)となっており、日本とフランスを除く主要DAC諸国実績上位10か国は、そのほとんどを贈与(二国間無償、二国間技術協力、国際機関向け贈与)の形態で実施しています(図表Ⅰ-9)。

日本のODAに占める有償資金協力(円借款等)の割合が多いのは、開発を与えられたものとしてではなく、開発途上国自身の事業として取り組む意識を高めることが、効果的な開発協力のために重要との考えに基づき、途上国の人々自らによる経済成長への努力を支援することを目的としているためです。途上国側から見れば、自らが借りたお金で国の社会や経済の発展を目指した事業を行うことになり、それだけに一生懸命に事業に取り組むことにつながります。円借款事業が終了した後も、途上国の人々が自らによって事業を持続・発展的に行えるようになることを目指した協力を行っている点は、自助努力を重視する日本ならではの支援といえます。

図表Ⅰ-9 DAC諸国の援助形態別実績(2021年)

  1. 注14 : OECDデータベース(OECD.Stat)(2022年12月)。
  2. 注15 : OECDデータベース(OECD.Stat)(2022年12月)。
  3. 注16 : 二国間無償は、図表Ⅰ-1無償資金協力、債務救済、国際機関等経由を指す。
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