(2)自然災害時の人道支援
近年、気候変動の影響もあり、短時間・局所的といった異常な集中豪雨の発生頻度は世界的に増加しており、洪水や土砂災害による被害も激甚化・頻発化の傾向にあります。開発途上国では、経済・社会基盤が脆(ぜい)弱であるため、災害により大きな被害を受ける国が多くあり、国際社会からの支援が求められています。
●日本の取組
日本は、海外で大規模な災害が発生した場合、被災国政府または国際機関の要請に応じ、直ちに緊急援助を行える体制を整えています。協力体制には、人的援助、物的援助、資金援助があり、災害の規模や被災国等からの要請内容に基づき、いずれかまたは複数を組み合わせた協力を行っています。
ア 国際緊急援助隊
人的援助として、国際緊急援助隊があり、(ⅰ)救助チーム、(ⅱ)医療チーム、(ⅲ)感染症対策チーム、(ⅳ)専門家チーム(災害の応急対策と復旧活動に関する専門的な助言・指導を行う)、(ⅴ)自衛隊部隊(特に必要があると認められる場合に医療活動や援助関連の物資や人員の輸送を行う)を個別に、または組み合わせて派遣します。
イ 緊急援助物資
物的援助としては、緊急援助物資の供与を行っています。日本は海外3か所の倉庫に、被災者の当面の生活に必要なテントや毛布などを備蓄しており、災害が発生したときには速やかに被災国に供与できる体制にあります。2022年、日本は16か国注41に対して緊急援助物資の供与を行いました。
ウ 緊急無償資金協力

2022年1月下旬にマラウイで発生したサイクロンの被災者に、日本から届いた緊急物資を引き渡すマラウイ災害管理局の職員(写真:JICA)
資金援助として、日本は、海外における自然災害や紛争の被災者、難民・避難民等を救援することを目的として、被災国政府や被災地で緊急援助を行う国際機関などに対し、緊急無償資金協力を行っています。
2022年8月、日本は、パキスタンで発生した洪水被害に対して、パキスタン政府からの要請を受けてテントおよびプラスチックシートの緊急援助物資を供与したのに加え、その後の被害の継続・拡大を受けて、複数の国際機関を通じて、食料、シェルター・非食料援助物資、保健・医療、水・衛生等の分野の人道支援として総額700万ドルの緊急無償資金協力を実施しました。このほか、1月にトンガで火山噴火・津波被害が発生した際も、人的援助、物的援助、緊急無償資金協力を組み合わせた支援を行いました(トンガへの支援詳細は、第Ⅲ部3大洋州地域を参照)。
エ その他の取組
日本のNGOも、ODAを活用した被災者支援を行っており、また国際機関などが実際に緊急援助活動を実施する際のパートナーとして、日本のNGOが活躍することも少なくありません。ジャパン・プラットフォーム(JPF)注42は自然災害や紛争によって発生した被災者および難民・避難民等への人道支援を行っており、JPFの加盟NGOは、アフガニスタン(地震)、パキスタン(洪水)、ウクライナ(紛争)など、現地政府の援助がなかなか届かない地域で、現地のニーズに対応した様々な支援を実施しています(実績などは日本のNGOとの連携を参照)。
自然災害の多い日本とASEAN諸国にとって、災害対応は共通の課題です。日本は、2011年に設立されたASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を支援し、その能力強化等に貢献してきました。2022年も引き続き、緊急物資を迅速に被災国へ輸送するロジスティック・システムの構築および同システムを活用した支援や人材育成を行っています。
- 注41 : アフガニスタン、キューバ、キリバス、グアテマラ、コンゴ民主共和国、ツバル、トンガ、ザンビア、パキスタン、フィリピン、ブラジル、ベリーズ、ホンジュラス、マダガスカル、マラウイ、南スーダンの16か国。
- 注42 : 用語解説を参照。