2022年版開発協力白書 日本の国際協力

(5)大学・教育機関との連携

日本政府は、大学が有する開発途上国の開発に貢献する役割、国際協力を担う人材を育成する役割、日本の援助哲学や理論を整理し、発信する役割など、援助の理論整理、実践、国民への教育還元までの援助のサイクル全般への広い知的な側面において、大学と協力し、連携を図っています。実際に、様々な大学と共同で、技術協力や円借款、草の根技術協力を始めとする事業を推進しています。

一例をあげると、日本政府は、途上国の経済社会開発の中核となる高度人材の育成を目的とする人材育成奨学計画(JDS)を通じて、途上国の若手行政官等を留学生として国内累計41大学で受け入れています。これまでに入学した留学生は、修士課程と博士課程合わせて5,000名を超えます。また、タイにおける産業人材育成のため、日本独自の教育システムである「高専(高等専門学校)」の設立・運営を通じて、日本と同水準の高専教育を提供する協力を実施しています。さらに、ASEAN諸国に対しては、JICAの技術協力プロジェクトとして、アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)プロジェクト解説を実施しており、日ASEAN大学間のネットワーク強化や産業界との連携、周辺地域各国との共同研究などを行っています(「国際協力の現場から3」も参照)。

加えて、外務省・JICAは文部科学省、科学技術振興機構(JST)、日本医療研究開発機構(AMED)と連携し、「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」注16を実施しており、日本と途上国の大学・研究機関等の間で国際共同研究が行われています(実績については科学技術・イノベーション促進、研究開発を、エルサルバドルおよびメキシコでの協力については「匠の技術、世界へ1」および「匠の技術、世界へ2」を参照)。

こうした大学との連携は、途上国の課題解決における学術面での能力向上に寄与していることに加え、海外からの研修員が日本の大学で研修・研究することで、日本の大学の国際化にも貢献しています。

用語解説

ジャパン・プラットフォーム(JPF)
大規模災害時や紛争により大量の難民・国内避難民等が発生したときなどに日本のNGOによる迅速で効果的な緊急人道支援活動を支援・調整することを目的として、2000年にNGO、政府、経済界の連携によって設立された緊急人道支援組織。JPFは、日本政府から供与されたODA資金や企業・市民からの寄付金を活用して、大規模な災害が起きたときや、紛争により大量の難民・国内避難民等が発生したときなどに、生活物資の配布や生活再建などの緊急人道支援を実施する。
NGO・外務省定期協議会
NGOと外務省との連携強化や対話の促進を目的とし、ODAに関する情報共有やNGOとの連携の改善策などに関して定期的に意見交換する場として、1996年度に設けられた。全体会議、ODA政策協議会と連携推進委員会の2つの小委員会で構成。
アセアン工学系高等教育ネットワーク
(AUN/SEED-Net:ASEAN University Network/Southeast Asia Engineering Education Development Network)
ASEANに加盟する10か国における工学分野のトップレベルの26大学と、日本の支援大学14校から構成される大学ネットワークとして、2001年に発足。東南アジアと日本の持続的な発展のために、工学分野で高度な人材を輩出するべく様々な研究・教育活動を実施している。このプロジェクトは、東南アジア諸国の政府や大学、本邦大学の協力の下、JICAを通じて主に日本政府が支援を行っている。

  1. 注16 : 用語解説を参照。
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