2022年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 03

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日本の教育システムをいかした科学技術大学をエジプトに設立
~優秀な研究者を育成・輩出し、中東・アフリカ地域の発展に貢献~

エジプトの学生を指導する大川原教授

エジプトの学生を指導する大川原教授

2022年10月エジプト日本科学技術大学(E-JUST)入学式の様子(写真:E-JUST)

2022年10月エジプト日本科学技術大学(E-JUST)入学式の様子(写真:E-JUST)

エジプトでは、大学の学生数増加による実験・実習機材の不足から、特に工学部においては座学による講義形式の教育が中心となり、実践的な教育を実現している大学は限定的でした。日本の工学教育の特徴「少人数、大学院・研究中心、実践的かつ国際水準の教育提供」をコンセプトとする大学新設のためのエジプト政府からの支援要請を受けて、2008年に日本による技術協力プロジェクト「エジプト日本科学技術大学(E-JUST注1)設立プロジェクト」が開始されました。

2008年10月から2014年1月に行われたフェーズ1プロジェクトでは、九州大学、京都大学、東京工業大学、早稲田大学を中心とした日本の12大学の協力の下、主にカリキュラム開発や教員派遣等の支援が行われ、E-JUSTは2009年に工学系の大学院大学として開学しました。また2014年2月から2019年1月に行われたフェーズ2プロジェクトの実施により、工学部と国際・ビジネス人文学部が開設され、学部の受け入れが開始されるとともに、E-JUSTをエジプトの産業および社会の発展に貢献する人材を育成する国内トップクラスの研究大学とするための基盤が整えられました。プロジェクト開始当初は、現地で同大学のコンセプトに対する戸惑いも見られましたが、日本独自の研究室教育の成果が現れ始めると、エジプト人教員の態度や学生の学ぶ姿勢に変化が生じました。

特任教授を務める東京工業大学の大川原(おおかわら)真一氏は、E-JUSTの成果について次のように語ります。「地道に研究指導を続けた結果、日本式の教育方法が高く評価され、当初30人だった学生数は、現在では3,000人にまで増えました。現地の大学フォーラムに参加した際には、E-JUSTのブースは会場の目立つ場所に設置され、高等教育大臣も訪問されるなど、自分たちの取組が高く評価されていることを実感しました。」

大川原氏は毎年E-JUSTの博士課程学生を東京工業大学の研究室で受け入れており、留学生に日本の最先端研究や研究生活に触れてもらうことは勿論のこと、日本人学生にとっても国際的な視点を身に付けられるという双方にとって有益な機会を提供しています。

その後エジプトには、E-JUSTをモデルとした大学が複数設立されました。これは、E-JUSTの目指すコンセプトがエジプトで浸透している証と言えます。第一副学長を務める東京工業大学名誉教授の鈴木正昭氏は、「E-JUSTは今や、エジプト国内トップクラスの研究大学までに発展しました。フェーズ3プロジェクト(2019年2月から2025年1月)では、奨学金制度を活用し、アフリカ地域からの留学生の受け入れを促進することで各国の発展に貢献していきたいと考えています。」と、今後の展望を語ります。


注1 Egypt-Japan University of Science and Technologyの略称。

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