2022年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 02一般公募

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故郷を追われたシリア難民の命と尊厳を守る
~レバノンでのUNHCRの支援~

雪が降る中で、越冬支援としてUNHCRから受け取ったマットや毛布を運ぶ難民(写真:UNHCR)

雪が降る中で、越冬支援としてUNHCRから受け取ったマットや毛布を運ぶ難民(写真:UNHCR)

難民の家族のシェルターを訪問し、日々の生活のニーズや困難などについて話を聞く伊藤代表(中央)(写真:UNHCR)

難民の家族のシェルターを訪問し、日々の生活のニーズや困難などについて話を聞く伊藤代表(中央)(写真:UNHCR)

2011年にシリア紛争が始まってから10年以上が経ちます。国際社会の注目が他の地域の人道危機に移りつつある一方で、シリア難民の多くはいまだ故郷に戻ることができず、明日の生活にさえも不安を抱いています。なかでも、隣国のレバノン注1で暮らすシリア難民は、その9割が貧困状態に陥るなど、多くの困難に直面しています。

最も大きな課題の一つが、安全で快適なシェルター(住居)の確保です。難民はアパートや一軒家、店舗や倉庫のスペースを間借りするなどして暮らしていますが、プライバシー、安全性、老朽化などの問題に直面しています。個人でシェルターを借りて契約を結んでいる難民は、貧困により賃料を払うことができず、立ち退きを迫られることもあります。また、レバノンの冬は零下まで気温が下がることも少なくなく大変過酷で、難民一人ひとりの命と尊厳を守るためにも、難民の住環境の向上が優先事項となっています。

そこで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、日本政府から支援を受けて、防水や防風、プライバシー強化のための補強工事、修繕に必要な資材の配布を行うとともに、排水システムなどのインフラ整備を支援しています。また、厳しい寒さから難民の命を守るために、保温性の高い毛布や防水シート、寝袋、冬用の暖かい衣類など、防寒用品の配布も行っています。

さらに、難民保護の取組の一環として、コミュニティセンターの設立・運営支援も実施しています。英語やパソコン、職業訓練、治安や保健衛生に関する啓発活動など、様々なプログラムやサービスを提供しており、難民と現地の人々が共にアクセスできる施設です。また、日々の生活で生じた問題に対する相談も個別に受け付けており、難民を含めて地域の全ての人が共生しながら安心して暮らせるよう、一人ひとりのニーズに応じた支援を続けています。

紛争開始から10年を超えた今、レバノンでは、人道支援のニーズも多様化しています。UNHCRレバノン事務所の伊藤礼樹(あやき)代表は「心から願っているのは、様々な危機に直面しているこの国を国際社会が忘れることなく、レバノン人、難民、移民を含む全てのコミュニティにとって安全で尊厳ある生活が確保されることです。UNHCRはレバノンと共にあります。」と訴えます。UNHCRは、これからもレバノン政府、軍や警察、メディア、NGO、国連機関、アカデミア、在レバノン各国大使館と緊密に連絡を取り、連携しながら、難民の安全を確保し権利を守る支援を行っていきます。


注1 レバノンは人口当たりの難民の数が最も多い国の一つであり、難民人口のうちシリア難民の数は約81万人(2022年12月時点)、パレスチナ難民を含めるとレバノンの人口の25%から30%が難民であると言われている。

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