2022年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 01

SDGs9

自由と平和の象徴「フリーダム・ブリッジ」
~南スーダン初の大型インフラ建設事業~

完成したフリーダム・ブリッジ。物流の円滑化と経済発展への貢献が期待される。(写真:大日本土木(株))

完成したフリーダム・ブリッジ。物流の円滑化と経済発展への貢献が期待される。(写真:大日本土木(株))

ジュバ大学の学生に対して、講演を行う梅田氏と南スーダンの技術者(写真:(株)建設技研インターナショナル)

ジュバ大学の学生に対して、講演を行う梅田氏と南スーダンの技術者(写真:(株)建設技研インターナショナル)

長きにわたる紛争を経て2011年7月にスーダンから独立した南スーダンでは、社会・経済インフラの欠如が深刻です。南スーダンは内陸国であるため物流を陸上輸送に頼っていますが、道路や架橋の整備が遅れており、経済発展の阻害要因となっています。首都のジュバ市には、国を東西に二分するナイル川が流れていますが、ナイル川に架かる橋は、1972年に建設された老朽化の激しい橋が一つしかありませんでした。この橋は、修復のために片側通行を余儀なくされるなど、通行や物流に大きな支障をきたしていました。

そこで、日本は、2013年から無償資金協力「南スーダン国ナイル架橋建設計画」において、ウガンダやケニアにつながる国際回廊の一部となるナイル川をまたぐ二番目の橋の建設を開始しました。

当初の計画では2016年末に完工予定でしたが、着工して間もない2013年12月に、大統領派と副大統領派による衝突が発生したため工事が中断しました。2015年2月に再開するも、2016年7月に再び衝突が起こり工事は再中断を余儀なくされました。さらに、その後2019年5月に再開しましたが、2020年4月には新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて2021年3月まで工事を中断せざるを得ませんでした。

当工事のコンサルタントを務めた株式会社建設技研インターナショナルの梅田典夫氏は、当時の状況を次のように語ります。「実際の施工期間が3年10か月だったのに対して、工事中断期間は4年11か月にもなりました。しかし、日本人スタッフが国外に退避している間も、政府要人が現場をたびたび視察に訪れて気遣ってくれたことを、留守番の南スーダン人スタッフの報告で知りました。私たちが建設している橋に、国の期待が寄せられていることを感じました。」

2021年3月の再開以降は、南スーダン作業員の協力もあって、工事は順調に進みました。「彼らは初めて体験する作業によく順応してくれました。毎日の作業を通して、時間厳守を身に付け、規律を守り、作業現場の整理整頓に努めるなど、技術以外にも学んだことが多かったと思います。おかげで、私たちも気持ちよく仕事ができました。」と、梅田氏は語ります。

「南スーダンには今までにこれほどの大型土木工事の施工はありません。土木工学を専攻する大学生の学びの場として、工事の進捗に合わせて、彼らを現場に招いて土木工事を体感してもらい、国の未来を担う若者への技術移転を試みました。また、“教えることは二度学ぶこと”の考えの下、現地の大学で橋梁(りょう)建設の講演を行った際には、南スーダンの技術者自らが事業を説明するように指導しました。」

三度の工事中断を経て、着工から8年9か月、全長560mの橋が2022年5月に完成しました。これによりナイル川を渡る際の時間が短縮され、大型車両が安全に通行できるようになったため、内陸国南スーダンの経済発展に重要な国際物流の円滑化が期待されています。開通式には、キール大統領、マシャール第一副大統領も参加しました。大統領は、日本への感謝を示すとともに、復興と平和への思いを語りました。この橋は「フリーダム・ブリッジ(自由の橋)」と呼ばれ、平和と自由の象徴となっています。日本の協力が、南スーダンの復興と発展につながっています。

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