3 北アフリカ地域情勢(エジプト、リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ)
(1)エジプト
アフリカ大陸の北東に位置し、地中海を隔てて欧州に接するエジプトは、中東・北アフリカ地域の安定に重要な役割を有する地域大国である。経済面では、新型コロナの影響(観光収入減少など)を受けつつも、国内総生産(GDP)はプラス成長を維持していたが、ウクライナ情勢の悪化に伴う世界的な食料・資源価格高騰などの影響を受け、12月には国際通貨基金(IMF)から30億ドル、46か月間の拡大信用供与措置(EFF)による支援を受けることとなった。
日本との関係は引き続き良好で、2016年のエルシーシ大統領訪日以降、日本式教育の導入、エジプト・日本科学技術大学(E-JUST)支援強化や、大エジプト博物館(GEM)建設計画、カイロ地下鉄4号線建設計画などの協力案件が進んでいる。3月のアフリカ開発会議(TICAD)閣僚会合での日・エジプト外相テレビ会談、8月のTICAD 8での日・エジプト首脳テレビ会談に続き、9月には国連総会の際に日・エジプト外相会談を実施し、国際情勢について協議した。また、二国間関係の更なる強化を確認した。また、9月の故安倍晋三国葬儀には大統領特使としてエルワジール運輸相が参列し、松野博一内閣官房長官を表敬した。11月にシャルム・エル・シェイクで開催され、エジプトが議長国を務めた国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)には、西村明宏環境大臣が出席した。

(8月27日、東京 写真提供:内閣広報室)
2019年4月から派遣されているシナイ半島駐留多国籍部隊・監視団(MFO)の自衛官2人についても、6月に第4次要員が派遣され、引き続き地域の平和と安定に向けた貢献を行っている。
(2)リビア
リビアは、アフリカ1位の原油埋蔵量を誇るエネルギー大国であるが、2011年のカダフィ政権崩壊後、東西に政治勢力が並立する不安定な状況が続いている。2019年4月には、東部の実力者であるハフタル「リビア国軍」(LNA)総司令官がトリポリへの進軍を指示し武力衝突に発展した。2020年5月以降、トルコの支援を受けた国民統一政府(GNA)側が反撃に転じた後、中部沿岸都市シルテと内陸都市ジュフラを結ぶラインで双方の勢力が均衡し、10月に両勢力間が恒久的停戦合意に署名して以降、東西両勢力間の武力衝突事案は大幅に減少している。
政治面では、2020年11月に国連主導でリビア人の代表75人が参加した政治対話フォーラムがチュニスで開催され、2021年12月24日の独立記念日に大統領選挙を含む一連の選挙を行うことについて基本的合意が成立し、暫定国民統一政府(GNU)が発足したが、選挙関連法の制定に至らず、同年12月22日には選挙の延期が発表された。2022年3月には東部に拠点を置く議会が新内閣を承認したことで、再び東西に政治勢力が並立する状態となった。
日本との関係では、8月のTICAD 8の際、岸田総理大臣とメンフィ首脳評議会議長の間で首脳テレビ会談を実施した。
(3)マグレブ諸国
マグレブ地域は、欧州・中東・アフリカの結節点に位置する地理的優位性や豊富な若年労働力などによる高い潜在性から、アフリカにおいて経済面で高い重要性を有している。一方、新型コロナやウクライナ情勢の影響もあり、アルジェリア、モロッコ及びチュニジアでは貧困層の拡大、地域格差や高失業率、食料価格高騰の影響などの克服が課題となっている。加えて、リビアやサヘル地域からの武器や不法移民の侵入による治安面への影響が懸念されている。
2021年7月以降、サイード大統領によって政治改革が進められているチュニジアでは、2022年7月、憲法改正の是非を問う国民投票が実施され、8月に新憲法が施行された。9月には新選挙法が発表され、12月及び2023年1月に国民代表議会選挙が平穏裏に実施された。
日本との関係では、8月にチュニジアの首都チュニスでTICAD 8が開催され、林外務大臣が総理大臣特使としてチュニジアを訪問し、サイード大統領への表敬及びジェランディ外相との会談を行った。また、岸田総理大臣がサイード大統領と首脳テレビ会談を行い、二国間協力関係をより強化するために引き続き緊密に連携していくことを確認した。

(8月26日、チュニジア・チュニス)
アルジェリアでは、2019年4月、長期政権への反発から抗議デモが長期化したのを受け、ブーテフリカ大統領が退陣し、同年12月には大統領選挙を経てテブン元首相が大統領に就任した。同大統領は「新しいアルジェリア」の実現に向けた政治改革の一環として、憲法改正、国民議会(下院)選挙などを実施し、2021年7月、ベンアブドゥルラフマーン首相を任命し新内閣を発足させた。
2022年は日・アルジェリア外交関係樹立60周年に当たり(165ページ、コラム参照)、新型コロナの流行下でも現地で様々な文化行事などが実施された。12月には、その集大成として、山田賢司外務副大臣が約4年ぶりの政務レベルの訪問としてアルジェリアを訪問し、ザグダール産業相、アルカブエネルギー鉱業相を始めとする政府要人との会談などを実施した。

(12月18日、アルジェリア・アルジェ)
モロッコでは、2021年9月の衆議院議員選挙を受け発足したアハヌーシュ・独立国民連合(RNI)党首率いる連立内閣が、保健・教育・社会保障・税制改革に加え、モハメッド6世国王が提唱する「新しい発展モデル」の実施に注力している。中でも、ロシアによるウクライナ侵略に端を発する食料・エネルギー価格の上昇や、水不足が深刻な課題となっており、2月には特別対策案が発表された。
日本との関係では、林外務大臣が9月にブリタ外相と外相テレビ会談を行った。また、同月、岸田総理大臣が故安倍晋三国葬儀に参列するために訪日したアハヌーシュ首相と首脳会談を行い、幅広い分野における両国の協力関係を一層強化していくことを確認した。また、12月には、山田外務副大臣がモロッコを訪問し、ブリタ外相、ジャズリ首相付投資・公用政策統合・評価担当特命相との会談などを実施した。

(9月28日、東京 写真提供:内閣広報室)
アルジェリアといえば、日本の歌謡曲「カスバの女」での「ここは地の果てアルジェリア」という歌詞をご存じの方も多いかもしれません。日本からは遠い北アフリカの国ですが、アフリカ大陸第1位の面積を誇り、ローマ時代の遺跡やフランス領時代の建物、アラブ建築が存在し、広大なサハラ砂漠と都市が広がる地中海沿岸地域のコントラストが印象的な、風光明媚(び)な国です。
アルジェリア独立運動の際には、独立の旗振り役であった民族解放戦線(FLN)が極東事務所を東京に設けており、日本とは、1962年の独立前から関係のある国です。2022年はアルジェリア独立から60周年を迎えるのと同時に、日・アルジェリア国交樹立から60周年となる記念すべき年です。
これを祝して、6月29日、アルジェにおいて、琴演奏家のみやざきみえこさんによる記念コンサートが開催され、アルジェリア政府関係者、企業関係者、ジャーナリストなどに来場いただきました。また、10月初旬には日本を名誉招待国とする第14回アルジェ国際マンガフェスティバル(FIBDA)が開催され、この機会に尺八奏者のクレアシオン桂さんと津軽三味線奏者の澤田春吟(シルヴァン・ディオニ)さんが、アルジェリアの楽団とも一緒に演奏を行うコンサートを開催し、多くの人がその美しい音色に聞き入りました。さらにFIBDAには日本の大学教授や漫画家が招待され、講演やマンガのワークショップを通じて、現地のマンガファンの方々と交流を深めました。さらに、11月には、アルジェリア合気道連盟に対する支援を含め、草の根・人間の安全保障無償資金協力が2件、草の根文化無償資金協力1件が実施されました。

(6月29日、アルジェリア・アルジェ)

(11月18日、アルジェリア・アルジェ)
外交関係樹立60周年を迎えた両国は、政治、経済、文化など、あらゆる分野で関係を築いてきています。今後も更に両国の関係を深めていく考えです。なお、在アルジェリア日本国大使館の公式facebook(注)は定期的に更新していますので、是非ご覧ください。
(注)Ambassade du Japon en Algérie のサイト:https://www.facebook.com/ambjpalger/
