8 女性
(1)G7シャルルボワ・サミット
G7シャルルボワ・サミット(カナダ)では、分野横断的なテーマとしてジェンダーが取り上げられた。首脳宣言でジェンダー平等に向けた取組の継続が確認されたほか、「途上国の女児・思春期の少女・女性のための質の高い教育の推進に関するシャルルボワ宣言」、「デジタル文脈におけるジェンダーに基づく暴力の撲滅に対するシャルルボワ・コミットメント」などが採択された。日本はこの機会に、途上国の女児・思春期の少女・女性に対する質の高い教育、人材育成支援のために2億米ドルの支援を発表した。
(2)G20ブエノスアイレス・サミット
G20ブエノスアイレス・サミット(アルゼンチン)では、女性のエンパワーメントについて、女性の労働参画推進、デジタル化や理系分野への参画におけるジェンダーギャップ(男女格差)の解消、職業や育児休暇へのアクセス、女性起業家への継続的な支援などの観点から議論が行われた。2017年7月のG20ハンブルグ・サミット(ドイツ)の際に立上げが発表され、日本が5,000万米ドルの拠出を行った女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)については、継続的な実施を歓迎することがブエノスアイレス・サミットの首脳宣言の中に盛り込まれた。
(3)国際女性会議WAW!
日本は、女性の活躍推進のための日本の取組を国内外に発信するとともに、女性をめぐる様々な課題について、政治、経済、社会分野の第一線で活躍する国内外のトップリーダーが議論する場として、2014年から国際女性会議WAW!を開催している。5回目となるWAW!は2019年3月にG20のエンゲージメント・グループ(国際社会におけるステークホルダーにより形成された政府とは独立した団体)の一つであるW20と同時に開催した。
第5回WAW!のテーマは「WAW! for diversity」で、持続可能な開発目標(SDGs)に謳(うた)われた「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向けては、あらゆる視点を取り込んでいくことが重要との認識の下、現在の日本社会及び国際社会が抱える今日的な課題について、女性の視点を中心に議論を行った。「地方活性化と雇用創出、そのためのリーダーシップ」、「多様性を育てるメディアとコンテンツ」、「女性の参画と紛争予防・平和構築・復興」、「多様性を成長に:企業経営や職場環境」、「家族の未来:頼る・活かす・分かち合う」などのトピックについて議論した。


(2019年3月23日、東京)
また、W20では「ジェンダーギャップの解消を通じた新しい成長のカタチ:女性のエンパワーメントを実現するガバナンスとは」、「女性起業家が創る新しい市場価値」、「ジェンダー投資:世界の新潮流」、「デジタル時代のジェンダー平等」、「患者や介護者としての女性の就業:健康格差の是正による男女平等と労働参加の向上」、「労働におけるジェンダーギャップを解消する:ハッピーなワークとライフの実現へ」について議論した。
(4)国際協力における開発途上国の女性支援
安倍総理大臣は2016年5月に、開発協力大綱に基づく新たな分野別開発政策の一つとして「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表するとともに、2016年から2018年までの3年間で、約5,000人の女性行政官等の人材育成と約5万人の女子の学習環境改善の実施を表明し、着実に実施した。また、同2016年12月に開催された第3回国際女性会議WAW!で、安倍総理大臣は、開発途上国の女性たちの活躍を推進するため、①女性の権利の尊重、②能力発揮のための基盤の整備及び③政治、経済、公共分野におけるリーダーシップ向上を重点分野として、2018年までに総額約30億米ドル以上の支援を行うことを表明し、着実に実施した。これらに加えて、2018年のG7シャルルボワ・サミットでは、途上国の女児・思春期の少女・女性に対する質の高い教育、人材育成支援のため2億米ドルの支援を発表した。
(5)国連における取組
ア 国連女性の地位委員会
3月に第62回国連女性の地位委員会(CSW)が開催され、日本からは、山下内閣府大臣政務官を首席代表に、田中由美子日本代表、各府省庁、国際協力機構(JICA)及びNGOから成る代表団が出席した。会議では、「農山漁村の女性と女児のジェンダー平等とエンパワーメント達成のための課題と機会」を優先テーマに議論が展開された。田中代表は、一般討論演説で、家族の話し合いをベースに給与や休暇などを取り決める家族経営協定の推進といった国内の取組をアピールした上で、アフリカにおけるジェンダー啓発活動などの国際的な支援を紹介したほか、閣僚級ラウンドテーブルでは、農村や地域の女性を含めた全ての女性に対する暴力の根絶に向けた取組の重要性を強調した。
イ UN Women
2018年の国連女性機関(UN Women)に対する拠出金は、約2,366万米ドルで、シリア難民女性のエンパワーメント(能力・地位の向上)やアフリカにおける暴力過激主義対策などに使用されている。UN Womenでは、ジェンダー平等のために男性・男児の関与を呼びかける「HeForSheキャンペーン」を実施しており、同キャンペーンを加速させる10人の首脳の一人として、安倍総理大臣が選出されている。今後とも同機関との連携を一層深めていく予定である。
ウ 性的暴力への対応
紛争の武器としての性的暴力は、看過できない問題であり、加害者不処罰の終焉(しゅうえん)及び被害者を支援していくことが重要である。21世紀こそ女性の人権侵害のない世界にするため、日本はこの分野に積極的に取り組んでおり、国連アクションや紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表(SRSG-SVC)事務所といった国際機関との連携、国際的な議論の場への参加を重視している。
日本は、2018年、紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表事務所に対し、110万米ドルの財政支援を行い、イラクと中東アフリカ諸国の警察・司法能力強化などに貢献している。さらに、国際刑事裁判所(ICC)の被害者信託基金にも引き続き拠出を行っており、累計約75万ユーロの拠出中約55万ユーロを紛争下における性的暴力対策にイヤーマーク(使途指定)し、被害者保護対策にも取り組んでいる。
エ 女性・平和・安全保障(Women, Peace and Security:WPS)
より効果的に平和な社会を実現するためには、紛争予防、紛争解決、平和維持・構築のあらゆるフェーズで女性の参画を確保し、ジェンダーの視点を入れることが重要である。このため、日本は、国連安保理決議第1325号女性・平和・安全保障及び関連決議の履行に向けた「行動計画」を2015年に策定し、2016年から同計画を実施するとともに、そのモニタリング及び評価を行っている。2018年7月にはその成果として第2回の年次報告書を公表した。また、同計画には策定から3年後に改訂を行うことが明記されており、2019年3月に改訂版を策定した。日本は行動計画に沿って、主にUN Womenや紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表事務所などの国際機関への拠出によりWPS分野へ貢献している。2018年のカナダにおけるG7トロント外相会合では、G7女性・平和・安全保障パートナーシップ・イニシアティブの立ち上げにG7外相として一致した。日本はスリランカをパートナー国として、2019年からスリランカのWPS分野の実施を支援していく。
オ 女子差別撤廃委員会
日本は、1987年から継続して女子差別撤廃委員会に委員を輩出している。2018年6月にニューヨークの国連本部で開催された第20回女子差別撤廃条約締約国会合では、女子差別撤廃委員会委員選挙が行われ、秋月弘子亜細亜大学教授が当選を果たした。

亜細亜大学教授 秋月弘子

2018年は、世界人権宣言の採択70周年でした。そして2019年は、女子差別撤廃条約の採択40周年です。これらの記念すべき年に女子差別撤廃委員会(CEDAW)委員として選出され、委員としての仕事を始められることを、私は大変光栄に思います。
全ての女性・女児が、自分の望む生き方を選択することができ、自分のなりたい自分となることができるような世界をつくることが私の願いです。けれども、条約採択後40年も経つのに、世界中で女性差別が残っています。法令上の平等だけでなく、事実上の平等の観点からも問題の本質を明らかにし、条約の実質的、実効的な実施を確保するためのお役に立ちたいと思っています。
CEDAWの主な任務は、条約の実施に関する進捗状況を検討するために、各締約国から提出された報告書を審査することです。条約実施の主役は各締約国であり、委員は条約実施を助ける脇役です。委員として、各締約国から条約の国内実施状況、及び、困難な問題がある場合にはその問題について、十分に意見を聞きたいと思います。同時に、女性・女児も権利の主体であること、したがって、権利と自由に関する教育を行うことにより女性・女児のエンパワーメントが必要であること、及び、政策決定の際には女性の意見を十分に反映させるために女性の参加を確保することが必要であることなどを、建設的な対話を通して各締約国と共に考え、伝えていきたいと思います。さらに、市民社会との対話を通して十分な情報を得て、また、女性・女児から直接意見を聞くなどして、バランスの取れた公平な見解を示せるよう努力したいと思います。
CEDAWの委員として、全ての人、特に女性と女児が、自由で、尊厳と権利とにおいて平等な社会の構築に貢献できるよう努力させていただきます。