2 カナダ
(1)カナダ情勢
2015年11月に発足したトルドー政権は、安定的な支持率を背景に、着実に政権運営を行っている。
外交面では、カナダは伝統的に緊密な米加関係を背景に国連、北大西洋条約機構(NATO)、G7、G20、米州機構(OAS)など多国間の場を活用した外交を展開してきたが、特に、トルドー政権は、多国間主義を外交政策の基本とし、シリア難民の受入れを始めとする人道・国際協力分野への積極的取組、気候変動対策に関するパリ協定の批准等を通じ、マルチ外交への回帰を実践しつつ、首脳の外国訪問や対話を通じて各国との関係強化に乗り出すなど、二国間外交面でも積極的な姿勢が見られる。
経済面では、トルドー政権は、好調な経済情勢を背景に、インフラ銀行の創設を含む国内インフラへの投資拡大、中間層のための雇用と富の創出を基本に積極的な政策を進めている。対外的には、中産層の雇用創出を目的とした進歩的な貿易政策の推進を基本政策として、カナダ欧州自由貿易協定(CETA)の推進、北米経済関係の強化及び中国・インド等の新興市場との経済関係強化に取り組んでいる。

(2)日・カナダ関係
日本とカナダは、アジア太平洋地域の重要なパートナーであると同時に、共にG7のメンバーとして、政治、経済、安全保障、人的交流等、幅広い分野で密接に協力している。
安倍総理大臣とトルドー首相は、5月、G7タオルミーナ・サミット(イタリア)の機会に、立ち話を行い、日・カナダ物品役務相互提供協定(ACSA)が実質合意に至ったことを歓迎し、早期に署名を目指すことで一致した。また、安倍総理大臣とトルドー首相は、2月、6月及び10月に計3度の電話会談を行い、北朝鮮問題等の地域情勢やTPP協定等の貿易問題を中心に首脳間で密接に協議を行った。
9月、河野外務大臣は、国連総会の機会に、ニューヨークで、フリーランド外相と会談を行い、北朝鮮に対する圧力を最大限化していくため日本とカナダ両国が連携していくこと、拉致問題の解決に向けても両国で協力していくことで一致した。また、両大臣は、国連安保理改革や北米自由貿易協定(NAFTA)についても意見を交わし、「日加協力新時代」の下で、二国間及び国際場裏での協力を一層進めていくことを確認した。さらに両外相は、11月8日に、ベトナム・ダナンで開催されたAPEC閣僚会議の機会にも会談を行い、北朝鮮に対する圧力最大化の必要性を再確認した。また、二国間関係の強化や、自由貿易の促進、核軍縮、安保理改革等の国際場裏の諸課題についても議論を行った。


なお、2018年3月にはチリでほかの10か国と共にカナダも環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)に署名し、早期の締結に向け必要な国内プロセスを進めていくことを表明した。これにより日・カナダ間の経済連携協定が成立することとなり、日本とカナダの経済関係の更なる強化が期待される。
このほか、12月にはオタワで第10回日・カナダ政務・防衛当局間、防衛当局間(PM/MM)協議を開催し、安全保障分野での両国の連携を確認した。また、両国政府関係者も参加して、第15回日・カナダ安全保障シンポジウムがオタワで開催され、活発な意見交換が行われた。
これらのほか、日・カナダ間では要人往来が活発に行われており、カナダ連邦政府のシャンパーニュ国際貿易相、クアルトロー・スポーツ障害者担当相や、アルバータ州、ブリティッシュ・コロンビア州、ノバ・スコシア州政府首相等が訪日した。

カナダのアルバータ州レスブリッジ市には、第二次世界大戦中、ブリティッシュ・コロンビア州から多くの日系人の方々が強制移住させられました。そのような経緯もあり、レスブリッジ市では今でも日系人の比率が比較的高く、現地には「レスブリッジ日系人協会」も存在します。
日加友好庭園は、レスブリッジ市における日系人の多文化共生社会への貢献を記念し、カナダ建国100周年に当たる1967年に開園しました。以来、日本とカナダの友好の象徴としてレスブリッジ市の重要な観光資源、市民の憩いの場となっています。

同庭園の建設の際には、日本の伝統的な美の哲学に加え、アルバータ州の植生や地質、文化を取り入れるよう細心の注意が払われ、今日見られるような日本文化とアルバータ州の大自然の美しい融合として形作られました。同庭園では、茶道や盆栽等、日本文化に関する様々なイベントが開催されています。
また、日加友好庭園は日本の皇室との関係が深く、1967年の開園式には高松宮同妃両殿下が、また、1992年の開園25周年記念式典には高円宮同妃両殿下がそれぞれ御出席されました。2017年は開園50周年に当たることから、7月14日と15日の2日間、大規模な式典が行われました。式典に御臨席になった絢子女王殿下は、お言葉の中で、幾多の困難を乗り越えて現在の地位を築いた日系カナダ人の方々の功績をたたえるとともに、市民により絶えず手入れされ、大切に育まれてきた日加友好庭園は、日本とカナダのみならず、両国と日系カナダ人の方々との友好・親善関係を象徴するものであり、このような関係が末永く続くことを願っていると述べられました。

(7月14日、カナダ・レスブリッジ 写真提供:日加友好庭園)
このほか、田邊邦彦在カルガリー日本国総領事から同庭園に対して日加友好庭園が日本とカナダとの友好関係や対日理解を促進する上で果たしてきた役割をたたえ、外務大臣表彰が行われました。