第3節 中南米
中南米地域は、6億人を超える人口と、約5兆2,000億米ドルに達する域内総生産(GDP)を有する33か国で構成され、国連加盟国の約17%を占める国際場裏の一大勢力である。また、鉱物、エネルギー等天然資源や食料の一大生産地である上に、成長著しい巨大市場を擁し、大きな経済的潜在力を有している。
近年の資源価格の低下に伴い2016年にはマイナス成長を記録した地域もあったが、2017年には全体としてプラス成長が予測されている。国際資源価格の影響を受けながらも、経済改革や市場開放を推進する国々を中心に、グローバル・バリューチェーンの中で自由貿易体制における地位を高めつつある。このような中南米諸国は、自由貿易の旗振り役を担う日本にとって重要なパートナーである。経済成長を遂げ被援助国からの「卒業」を控えた中南米諸国との間では、先方のニーズが依然高い分野での支援や地域内他国への三角協力の拡大が課題となっている。
中南米諸国の多くは、自由主義や民主主義等の価値観を日本と共有している。北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射に対しては大多数の国が直ちにこれを非難する声明を発出するなど、日本と共に国際的な圧力強化に取り組んでいる。また、環境・気候変動対策や軍縮・不拡散といった地球規模課題において協調して対応するなど、国際場裏における政策的連携を進めている。
中南米地域には、世界にいる日系人の6割を占める約210万人から成る日系社会が存在している。これは日本が独自に有する中南米諸国との間の絆(きずな)である。日系社会は100年以上に及ぶ現地社会への貢献を通じ、中南米地域における伝統的な親日感情を醸成してきている。
日本の対中南米外交は、安倍総理大臣が2014年の中南米歴訪の際に提唱した、三つの「共に」(Juntos(ジュントス):「共に発展」、「共に主導」、「共に啓発」)の指導理念の下で展開している。近年、日本と中南米との要人往来はかつてなく活発化しており、2017年は中南米諸国から多数の要人が訪日したほか、日本からも外務省や関係省庁の要人が同地域の延べ50か国以上を訪問している。
経済面では、「共に発展」するとの観点から、中南米諸国との協力を進めている。2017年は11か国による環太平洋パートナーシップ交渉(TPP11)の大筋合意で協力したほか、日系企業の進出やビジネス環境の整備に資する各種協議を行った。また、「共に主導」の理念の下、中南米諸国を国際社会共通の課題解決のためのパートナーとして協力を推進している。2017年は、3度の首脳会談を含む二国間会談を開催したほか、8月のアジア・ラテンアメリカ協力フォーラム(FEALAC(フィーラック))外相会合や、9月の日・ラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC(セラック))拡大トロイカ外相会合など、地域的枠組みとの対話も通じて、政策の連携と国際社会に向けた共通メッセージの発信を行った。「共に啓発」に係る取組としては、特に日系社会との連携に力を入れているほか、ビジネス、文化、科学技術分野での更なる協力を目指している。また、中南米親日派・知日派育成プログラム(Juntos!!)や、各種招へい等の事業により人材交流を促進するとともに、2017年4月サンパウロ(ブラジル)にジャパン・ハウスを開設した。


