外交青書・白書
第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交

5 国際連合(国連)における取組

(1)国際連合(国連)

ア 日本と国連との関係

2016年は日本が国際連合(国連)に加盟して60周年の節目の年であった。1956年12月18日、日本は、二度の世界大戦の反省に立ち、戦争の惨禍から将来の世代を救うために設立された国連の第80番目の加盟国となった。加盟以来、日本は国連を通じ、世界の平和と繁栄のために積極的に貢献してきた。

国連は、世界のほぼ全ての国(2016年12月現在193か国)が加盟する普遍性を備えた国際機関であり、紛争解決や平和構築、テロ対策、軍縮・不拡散、開発、人権、環境・気候変動、防災を含む多種多様な分野において、高度な専門性を持って、国際社会が直面する諸課題に取り組んでいる。

国連本部(写真提供:UN Photo/Andrea Brizzi)
国連本部(写真提供:UN Photo/Andrea Brizzi)

2016年1月から2年間、日本は加盟国中最多の11回目となる国連安全保障理事会(国連安保理)の非常任理事国を務めており、国際社会の平和と安全の維持のために、主要な役割を果たしている。国連安保理非常任理事国として、また、国連加盟60周年を契機に、日本は国連を通じた協力を更に強化し、地球規模課題への対応など、一国では実現できない外交目標の達成に向けて一層積極的に取り組んでいる。

2016年9月に開会した第71回国連総会には、安倍総理大臣及び岸田外務大臣が出席した。

安倍総理大臣は、4年連続となる国連総会一般討論演説において、北朝鮮による核実験及び弾道ミサイル発射の脅威は、これまでと異なる次元に達したとした上で、国連安保理の議論を先導していく決意を表明するとともに、拉致問題についても提起し、早期解決の必要性を国際社会に対して訴えた。また、安倍総理大臣は、日本の国連加盟60周年に当たり、加盟以来、日本が国連の場で積み重ねてきた国際貢献に言及した上で、この先60年においても、日本が国連強化のための努力を惜しまないことを強調した。最後に、安倍総理大臣は、国連の強化のためには、国際情勢の変化を踏まえた、国連のガバナンス構造の根本的変化が必要であり、国連安保理改革が急務であることを加盟国に訴えて、演説を締めくくった。

国連総会に出席する安倍総理大臣(9月21日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)
国連総会に出席する安倍総理大臣(9月21日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)

第71回国連総会の主要課題の1つは、紛争により人道状況の悪化するシリア情勢及びそれに伴う難民・移民問題への対応であった。

安倍総理大臣は、難民及び移民に関する国連サミットにおいてステートメントを行い、日本の難民・移民問題に対するアプローチとして、「人間の安全保障」及び「人道支援と開発支援の連携」を紹介した上で、2016年から2018年までの3年間で、総額28億米ドル規模の難民・移民への人道支援、自立支援及び受入れ国・コミュニティ支援を行うことを表明した。

また、安倍総理大臣は、オバマ米国大統領主催の難民サミットにも出席し、前述の支援に加え、①世界銀行のグローバル危機対応プラットフォームへの総額1億米ドル規模の協力、②紛争の影響を受けた約100万人に対する教育支援・職業訓練等の人材育成の実施、及び③青年海外協力隊員によるシリア難民及びホストコミュニティ支援の実施を表明した。

さらに、安倍総理大臣は、シリア情勢に関する国連安保理ハイレベル会合に出席し、人道アクセスが改善し、政治プロセスへ移行していくことを国連安保理として力強く後押しすることの必要性を指摘した上で、日本の具体的な貢献策として、2016年、シリア・イラク及び周辺国に対し11.3億米ドルの支援を国際機関との連携の下、実施することを表明した。

これらに加えて、安倍総理大臣は、男女平等促進のため男性の関与を呼びかけるUN Womenのキャンペーン「HeForShe」レセプションに出席し、「女性が輝く社会」の実現に向けた日本の取組について発信するとともに、参加者に積極的な取組を呼びかけた。

安倍総理大臣は、国連総会出席の機会に、各国首脳を始めとする要人との会談を精力的に実施した。

潘基文(パンギムン)国連事務総長との会談において、安倍総理大臣は、北朝鮮の核・ミサイル問題について緊密に連携していくことを確認するとともに、「平和安全法制」の施行により、国連平和維持活動(PKO)を始め安全保障分野において、一層の国際貢献が可能となることを説明した。

安倍総理大臣と潘基文(パンギムン)国連事務総長との会談(9月20日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)
安倍総理大臣と潘基文(パンギムン)国連事務総長との会談(9月20日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室)

ピーター・トムソン第71回国連総会議長との会談において、安倍総理大臣は、国連安保理改革、開発、難民問題などの分野で、緊密に協力したいと述べたのに対し、トムソン総会議長は、持続可能な開発のための2030アジェンダの達成を最優先事項として取り組むとともに、国連安保理改革について、加盟国と緊密に連携しつつ、交渉を進めていきたいと説明した。

また、安倍総理大臣は、第3回日本・太平洋島嶼(とうしょ)国首脳会合を主催し、日本と太平洋島嶼国との協力が着実に実施されていることを確認した上で、北朝鮮への対応、海における法の支配、国連安保理改革などの分野における協力を呼びかけた。また、安倍総理大臣は、米国、英国、カタール、パキスタン、トルコ、イラン、アフガニスタン、コロンビア及びウクライナとの会談を行ったほか、オバマ米国大統領及び李克強(りこっきょう)中国国務院総理と立ち話を行い、二国間関係の強化にも積極的に取り組んだ。

さらに、安倍総理大臣は、ニューヨーク滞在中、対日投資セミナー、訪日観光セミナー、金融関係者との対話や和食レセプションに出席し、日本の経済・金融政策について有識者や企業関係者などに対して直接説明するとともに、日本の観光資源や和食など日本の魅力を積極的に発信した。また、安倍総理大臣及び岸田外務大臣は、国連日本人職員と懇談を行い、更なる活躍を期待して激励した。

岸田外務大臣は、G7外相会合及び日米韓外相会合における議長並びに第8回包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合及び日・カリコム(カリブ共同体)外相会合における共同議長を務めたほか、国連安保理改革に関するG4外相会合など計8つの多国間会合に出席した。また、8か国と外相会談などを行い、国連総会出席の機会を通じて、各国の外相との間で相互の信頼関係を強化した。

イ 国連安全保障理事会(国連安保理)、国連安保理改革
(ア)国連安全保障理事会(国連安保理)

国連安全保障理事会(国連安保理)は、国連の中で、国際の平和と安全の維持に主要な責任を有している。国連安保理決議に基づくPKOなどの活動は多様さを増しており、大量破壊兵器の拡散やテロなどの新たな脅威への対処など、年々その役割は拡大している。

このような中、日本は、2016年1月から2年間の任期で、国連加盟国中最多となる11回目の国連安保理非常任理事国を務め、地域情勢や平和構築等に関する国連安保理での議論に積極的に貢献している。特に、北朝鮮による1月及び9月の核実験並びに累次にわたる弾道ミサイル発射を受けた2度の国連安保理決議採択に尽力するとともに、国連安保理議長国を務めた7月には、「アフリカにおける平和構築」に関する公開討論において岸田外務大臣が議長を務めるなど、国際の平和と安全の維持に関わる議論に力を発揮してきた(詳細は特集「国連安保理非常任理事国としての活動」159ページ参照)。

また、2016年には10年の任期(再選1回)を務めた潘基文前国連事務総長の後任となる次期事務総長選出のプロセスが進められた。10月には、国連安保理がグテーレス前国連難民高等弁務官(元ポルトガル首相)を任命することを国連総会に勧告し、これを受け総会において同氏を次期国連事務総長として任命する決議が採択された。日本は国連安保理理事国として本選出プロセスに関与する中で、グテーレス国連事務総長と国連の在り方について議論を重ねてきており、今後も緊密に協力していく。

(イ)国連安保理改革

国連発足後70年以上がたち、国際社会の構図が大きく変化するに伴い、国連の機能が多様化した現在においても、国連安保理の構成は、基本的には変化していない。国際社会では、国連安保理改革を早期に実現し、その正統性、実効性、代表性及び透明性を向上させるべきとの認識が共有されている。

日本は、これまで軍縮・不拡散、平和維持・平和構築、人間の安全保障等の分野で国際社会に積極的に貢献してきており、国連を通じて世界の平和と安全の実現により一層積極的な役割を果たすことができるよう、常任・非常任議席双方の拡大を通じた国連安保理改革の早期実現と日本の常任理事国入りを目指し、各国への働きかけを行っている。

国連安保理改革に関するG4(日本、インド、ドイツ及びブラジル)外相会合における岸田外務大臣(9月21日、米国・ニューヨーク)
国連安保理改革に関するG4(日本、インド、ドイツ及びブラジル)外相会合における岸田外務大臣(9月21日、米国・ニューヨーク)
国連安保理議場(写真提供:UN Photo/Loey Felipe)
国連安保理議場(写真提供:UN Photo/Loey Felipe)
特集
国連安保理非常任理事国としての活動

2016年1月から2年間、日本は国連加盟国中最多となる11回目の国連安全保障理事会(国連安保理)非常任理事国という責任ある役割を務めており、日々国連安保理において国際社会の平和及び安全のために精力的に取り組んでいます。

【北朝鮮に関する国連安保理決議の採択等】

北朝鮮による核実験及び弾道ミサイル発射を受け、日本は米国、韓国などの関係国と緊密に連携し、国連安保理理事国として、国連安保理における議論を先導しました。その結果、北朝鮮に対する制裁措置を強化するとともに、拉致問題を含む人権・人道問題に関する言及を強めた国連安保理決議第2270号及び同第2321号が採択され、国際社会全体として北朝鮮に対して断固とした対応を採るという姿勢を示しました。また、日本は、国連安保理の下に設置された制裁委員会の作業に積極的に関与するとともに、関係国が決議を全面的かつ厳格に履行するよう働きかけてきています。

また12月、国連安保理において、人権状況を含む「北朝鮮の状況」に関する会合が3年連続で開催されました。本会合では、拉致問題を始めとする北朝鮮の人権問題の解決に向けた取組や北朝鮮の核・ミサイル問題への対応について有意義な議論が行われました。

【「アフリカにおける平和構築」に関する国連安保理公開討論】

7月、日本は国連安保理の議長国を務め、岸田外務大臣が議長となって「アフリカにおける平和構築」に関する国連安保理公開討論を主催しました。同会合には潘基文(パンギムン)国連事務総長ほか、アミナ・ケニア外務長官、ンジャイ・セネガル外務・在外セネガル人相などの閣僚が参加して各国の経験や知見に基づく発言が行われ、包括的な議論が行われました。本会合に際し、多数の参加国が日本による会合開催のイニシアティブを評価し、「アフリカにおける平和構築」について、制度構築、人材育成、信頼構築、法の支配、科学技術の活用等の重要性を強調する国連安保理議長声明が採択されました。

国連安保理公開討論「アフリカにおける平和構築」において議長を務める岸田外務大臣(7月28日、米国・ニューヨーク)
国連安保理公開討論「アフリカにおける平和構築」において議長を務める岸田外務大臣(7月28日、米国・ニューヨーク)
【個別の重要課題への貢献】

日本は、次期国連事務総長選出プロセスに積極的に関与し、また、安倍総理大臣がシリアに関するハイレベル会合へ出席するなど、国際社会の平和及び安全の維持のために国連安保理のあらゆる課題において積極的な役割を果たしています。さらに、国連安保理作業方法に関する公開討論を主催し、国連安保理の文書手続作業部会の議長を務める中で、国連安保理入りを控えた非常任理事国が事前に国連安保理の手続に習熟し、より効率的に準備を行えるようにするなど、国連安保理の透明性、運営改善に貢献しています。このような取組を通じ、日本は国連安保理の機能強化に向けた議論を主導しています。

(ウ)国連安保理改革をめぐる最近の動き

国連では、2009年から総会の下で国連安保理改革に関する政府間交渉が行われている。2016年2月から始まった第70回会期の政府間交渉において、ルーカス政府間交渉議長は「国連安保理と総会の関係」及び「拡大後の総数・作業方法」について主要な一致点の要素をまとめた文書を作成した。また、7月には政府間交渉を第71回会期(9月から1年間)に引き継ぐ決定が国連総会においてコンセンサスで採択された。

加えて、日本は国連安保理改革の推進のために協力するグループであるG4(日本、インド、ドイツ及びブラジル)の一員としての取組の強化も重視している。9月にはG4外相会合を開催し、国連安保理改革に関する更なるモメンタムを作り、包括的な国連安保理改革に向けて引き続き取り組むことを確認した。

また、7月には、G4のほか、アフリカ、カリブ諸国、英仏、北欧といった改革を推進する幅広いグループによって国連安保理改革フレンズ・グループが立ち上げられ、9月のハイレベル会合において各国は国連安保理改革が喫緊の課題であるという認識を共有し、早期の有意義な国連安保理改革の実現に向け協力することが確認された。

日本は引き続き、改革推進派諸国と緊密に連携し、国連安保理改革の実現に向けたプロセスに前向きに関与していく。

ウ 国連行財政
(ア)国連予算

国連の予算は大きく分けて通常予算(1月から翌年12月までの2か年予算)とPKO予算(7月から翌年6月までの1か年予算)で構成されている。

このうち、通常予算については、2015年に2016~2017年度の予算審議が行われ、同年12月に約54億米ドルの予算が承認された(2014~2015年度最終予算(約58億1,000万米ドル)比で約8%減)。また、PKO予算については、2016年6月に、2016~2017年度のPKO予算が承認され、予算総額は約78億7,000万米ドル(前年度最終予算比約4.84%減)となった。

国連2か年通常予算の推移(2008-2017年)
国連2か年通常予算の推移(2008-2017年)
PKO予算及びミッション数の推移(2002-2017年)
PKO予算及びミッション数の推移(2002-2017年)
(イ)日本の貢献

国連の活動を支える予算は、各加盟国に支払が義務付けられている分担金と各加盟国が政策的な必要に応じて拠出する任意拠出金から構成されている。このうち、分担金については、日本は2016年通常予算分担金として約2.4億米ドルを負担しており、米国に次いで2番目である。2016年PKO分担金としては約10.2億米ドルを負担しており、米国、中国に次いで3番目である。日本は主要財政貢献国の立場から、国連が予算をより一層効率的かつ効果的に活用するよう働きかけを行ってきている。

主要国の国連通常予算分担率
順位※ 国名 2013-2015年 2016-2018年 増減ポイント
1 米国 22.000% 22.000% +0
2 日本 10.833% 9.680% -1.153
3 中国 5.148% 7.921% +2.773
4 ドイツ 7.141% 6.389% -0.752
5 フランス 5.593% 4.859% -0.734
6 英国 5.179% 4.463% -0.716
7 ブラジル 2.934% 3.823% +0.889
8 イタリア 4.448% 3.748% -0.700
9 ロシア 2.438% 3.088% +0.650
10 カナダ 2.984% 2.921% -0.063

※2016-2018年の順位

主要国のPKO予算分担率
順位※ 国名 2015年 2016年 2017年 2018年
1 米国 28.3626% 28.5738% 28.4691% 28.4344%
2 中国 6.6368% 10.2879% 10.2502% 10.2377%
3 日本 10.8330% 9.6800%
4 ドイツ 7.1410% 6.3890%
5 フランス 7.2105% 6.3109% 6.2878% 6.2801%
6 英国 6.6768% 5.7966% 5.7753% 5.7683%
7 ロシア 3.1431% 4.0107% 3.9960% 3.9912%
8 イタリア 4.4480% 3.7480%
9 カナダ 2.9840% 2.9210%
10 スペイン 2.9730% 2.4430%

※2016-2018年の順位
出典:国連文書

また、2016年末まで国連事務総長を務めた潘基文(パンギムン)事務総長は国連行財政改革を優先課題として推進し、日本もこれを支持してきた。同改革により、国連の財政・予算・人的資源管理の効率化が期待される。しかし、これまでに導入された措置について具体的な成果が出るには依然として時間を要すると見込まれている。日本は、引き続き加盟国間の意見の相違を調整しつつ、国連における具体的な行財政改革が進むよう、各加盟国や国連側との協議に積極的に取り組んでいる。

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