1 安全保障に関する取組
ア 国際協調主義に基づく「積極的平和主義」
日本を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増しており、北朝鮮は、2016年1月6日には4回目となる核実験を実施したほか、2月7日には「人工衛星」と称する弾道ミサイルを発射した。北朝鮮は、弾道ミサイルの開発・配備や核開発を進めている。中国は、国防費を過去28年間で約44倍に増加させる一方でその細部内訳を明らかにしないなど、透明性を欠く中で軍事力を強化するとともに、東シナ海、南シナ海の海空域における、既存の国際秩序とは相いれない独自の主張に基づく力による現状変更の試みを継続しており、これらは、地域及び国際社会の懸念事項となっている(1-1(2)、2-1-2(1)、2-1-6及び3-1-3(4)参照)。さらに、大量破壊兵器等の拡散や国際テロの深刻化、サイバーや宇宙などの新たな領域における課題の顕在化等、グローバルな安全保障上の課題は広範かつ多様なものとなっている。このような安全保障環境の下、脅威が世界のどの地域で出現しても、日本の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になっている。もはやどの国も、一国のみで自らの安全を守ることはできない。日本の繁栄は、平和で安定した国際環境なしにはあり得ない。
日本は、戦後一貫して日本国憲法の下で平和国家として歩み、国際社会や国際連合を始めとする国際機関と連携し、国際社会の平和と繁栄に積極的に寄与してきた。こうした日本の平和国家としての歩みは、国際社会において高い評価と信頼を勝ち得てきており、国際社会は日本がその国力にふさわしい形で国際社会の平和と安全のため、一層積極的な役割を果たすことを期待している。
日本は、平和国家としての歩みを引き続き堅持し、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から力強い外交を推進し、国際社会からの要請に応えるべく、国際社会の平和と安定に一層積極的に貢献していく。



上:2006年1月22日
下:2015年9月3日
イ 平和安全法制の制定
日本を取り巻く安全保障環境の変化に対応し、国民の命と平和な暮らしを守るためには、力強い外交を推進し、安定しかつ見通しがつきやすい国際環境を創出していくことが重要である。その上で、あらゆる事態に対し切れ目のない対応を可能とするとともに、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献するためには、新たな国内法制の整備が必要であった。このような背景の下、5月に政府により国会に提出された「平和安全法制」関連法案は、衆参両院合わせて200時間を超える審議を経て、与党に加え、野党3党(日本を元気にする会、次世代の党、新党改革)の賛成も得て、9月19日に成立した。
この法制は、専守防衛に徹することを始めとする日本の平和国家としての歩みをより確固たるものにしていくためのものである。これにより、日米同盟が強化され、日本の抑止力が向上し、紛争を未然に防ぐことが可能になるとともに、国際社会へのより一層の貢献が可能となった。
「平和安全法制」については、様々な機会を捉えて、諸外国に対し、その内容を丁寧に説明してきている。これに対し、米国はもとより、オーストラリア、ASEAN諸国、ヨーロッパ諸国を始め多くの国々から、理解と支持が表明されている。これは、「平和安全法制」が、世界の平和と安全に貢献する法律であることの何よりの証(あかし)である。

ウ 領土保全
領土保全は、国家にとって基本的な責務である。日本の領土・領空・領海は断固として守り抜くとの方針は不変であり、引き続き毅然(きぜん)かつ冷静に対応する。同時に、在外公館の人脈や知見を生かしつつ、領土保全に関する日本の主張を積極的に国際社会に発信している。