外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

第4節 欧州

総論
〈欧州の重要性〉

欧州は、言語、文化・芸術活動、有力メディアやシンクタンクの発信力などを背景に、国際世論に対して大きな影響力を有しており、経済面でも、欧州連合(EU)加盟28か国合計で世界のGDPの23%を占めるなど、大きな存在感を示している。また、欧州主要国は、国連安全保障理事会やG7などの国際的枠組みにおけるメンバーとして、国際政治や国際社会における規範形成に大きな役割を果たしている。さらに、日本と欧州は、自由、民主主義、人権、法の支配などの基本的価値や原則を共有し、国際社会の平和と繁栄のために共に主導的な役割を果たしている。

欧州は、日本が「地球儀を俯瞰する外交」を展開する上で重要である。欧州各国との二国間関係に加えて、EU、北大西洋条約機構(NATO)、欧州安全保障協力機構(OSCE)など、欧州の地域機関との協力をより一層強化するとともに、「V4(ヴィシェグラード4)+日本」や「NB8(北欧・バルト8か国)+日本」など、欧州域内の地域的枠組みとの協力も推進することにより、日欧関係の幅を更に広げていくことが重要である。

〈対欧州外交〉

こうした認識の下、2014年4月末から5月にかけて、安倍総理大臣はドイツ、英国、ポルトガル、スペイン、フランス、ベルギーの6か国を訪問し、各国、EU、NATOの首脳などと会談を行った。また、1月のダボス会議、3月の核セキュリティ・サミット、6月のG7首脳会合、10月の第10回アジア欧州会合(ASEM)首脳会合の機会にも欧州を訪問した。岸田外務大臣も年頭にスペイン、フランスを訪問したほか、9月にドイツを訪問するなど、様々な機会に欧州諸国の外相と会談を行った。また、2015年1月、岸田外務大臣はフランス、ベルギー、英国を訪問し、各国外相、EU新指導部、NATO新事務総長との会談を行った。このように、欧州諸国・機関との間では、首脳級・外相級の往来が極めて活発に行われ、各国・機関との関係が強化されただけでなく、首脳・外相レベルでの信頼関係も構築された。これらの機会を通じて、安全保障、経済、地球規模の課題など、幅広い分野における日本の立場や取組について理解を促進するとともに、日欧間での具体的な協力を前進させた。例えば、安全保障分野では、9月以降、NATOやEUとの間で、ソマリア沖・アデン湾において海賊対処の共同訓練を複数回実施したほか、英国及びフランスとの間でも、安全保障分野での協力が進展している。また、経済分野では、日EU経済連携協定(EPA)に関し、2014年中に5回の交渉会合を実施するとともに、11月の日・EU首脳会談では、2015年中の大筋合意を目指し、交渉を加速させることで一致した。このほか、欧州各国及びEUとの間では、教育、文化、科学技術など幅広い分野で協力を促進し、日本の魅力の発信や相互理解の促進などを通じた、重層的かつ緊密な関係の維持に努めている。

〈ウクライナ情勢〉

2014年2月以降のウクライナ危機をめぐっては、日本は法の支配、ウクライナの主権及び領土一体性を尊重し、力による一方的な現状変更は許容し得ないとの立場から、G7の連帯を重視して対応してきた。10月の日・ウクライナ首脳会談や10月及び11月の日露首脳会談などの機会を捉え、安倍総理大臣から両国首脳に直接、停戦合意の履行などを働きかけた。また、ウクライナ情勢をめぐり、2014年末までに日本は5回にわたり、特定個人の入国査証発給禁止や資産凍結などの措置を発動している(日本の措置の詳細については第2章第5節1.(2)「日露関係」参照)。同時に、日本は、①経済状況の改善、②民主主義の回復、③国内の対話と統合の促進が重要との観点から、ウクライナの改革努力を後押しするための支援を行っている。日本として引き続きG7の連帯を重視し、事態の平和的解決に向けて積極的な役割を果たしていく。

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