国連外交
林外務大臣のニューヨーク訪問(概要)



林芳正外務大臣は9月19日(月)から23日(金)にかけて、第77回国連総会ハイレベルウィークの機会にニューヨークを訪問。滞在中、8つの多国間会合に出席し、15の二国間会談等を行った。
1 多国間会合(時系列順に記載)
(1) グローバル食料安全保障サミット (9月20日(NY時間。以下同じ。))
林大臣は、グローバル食料安全保障サミットにおいて、喫緊の課題となっている世界的な食料不安に対し、国際社会と緊密に連携・協力して取り組んでいくことを確認した。
(2) ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)フレンズ閣僚級会合 (9月21日)
林大臣は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)フレンズの閣僚級会合を共催した。会合では、新型コロナによるUHC推進への影響や進捗に関する意見が示され、UHC推進へのモメンタムの維持・強化やUHC達成への取組を加速させていく方策などが議論された。林大臣からは、来年のG7広島サミットや国連総会UHCハイレベル会合に向け、ポスト・コロナの時代に求められるUHCの推進に関する議論や取組を引き続き主導していく決意を述べた。
(3) G7外相会合 (9月21日)
今年9回目となるG7外相会合において、ウクライナ情勢について議論を行い、ウクライナ支援や食料・エネルギー安全保障への対応などについて、G7の連携を改めて確認した。また、国連の機能強化、中国やインド太平洋といった地域情勢についても意見交換を行った。ウクライナ情勢に関し、林大臣から、日本のこれまでの取組を説明するとともに、ロシアへの化学兵器等関連物品の輸出の禁止措置及び輸出禁止措置の対象となるロシアの軍事関連団体の追加を新たに講ずる予定である旨紹介した。また、既に長野県軽井沢町で行われることを発表済みの来年のG7外相会合について、その日程を来年4月16日から18日までとすることを発表した。
(4) 日米韓外相会合(9月22日)
林大臣は、ブリンケン米国国務長官、朴振韓国外交部長官との日米韓外相会合において、北朝鮮による更なる挑発行為への対応や北朝鮮の完全な非核化に向けた今後の対応について、すり合わせを行った。さらに、拉致問題について、林大臣から両長官の引き続きの理解と協力を求め、両長官から支持を得た。また、日米韓協力の戦略的重要性を踏まえて、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組や、経済安全保障といったグローバルな課題についても議論した。三者は、日米韓の連携を重層的に進めていくことで一致し、会合後には、日米韓外相共同声明を発出した。
(5) 「ブルーパシフィックにおけるパートナー(PBP)」外相会合 (9月22日)
林大臣は、米豪NZ英の外相と共に「ブルーパシフィックにおけるパートナー(PBP)」の初の外相会合に出席した。林大臣からは、地域から高い評価を受けている太平洋・島サミット等の我が国の取組に触れた上で、PBPにおいては、気候変動等において、太平洋島嶼国による地域の取組を支えていきたい旨述べた。PBP側から、太平洋島嶼国・地域が本年7月にとりまとめた「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」を支えていくこと、地域主義、透明性、説明責任等の共通原則の下、太平洋島嶼国との緊密な対話を進めつつ協力を行うことを強調し、太平洋島嶼国・地域代表からは歓迎の意が表明され、今後の具体的な協力について期待が表明された。
(6) G4外相会合 (9月22日)
林大臣は、G4外務大臣会合において、ロシアによるウクライナ侵略等により、国連が中核的役割を担って形成されてきた国際秩序の根本が動揺しているとの問題意識の下、安保理改革をめぐる現状認識を共有し、今後の取組の方向性について議論した。林大臣からは、国連憲章の理念と原則を実現し、国連への信頼を回復するとの観点から、また、安保理に対する不満と期待が入り混じる国も多いことも念頭に、安保理改革を国連全体の機能強化の文脈に位置付け、総会や事務総長の役割強化等の取組と共に進め、その中でモメンタムを高めていくことを提起し、今後議論を深めていくことになった。また、G4外務大臣で、安保理改革実現に向け、政府間交渉における文言ベースでの交渉開始に向けて総会議長と緊密に協力するとともに、アフリカや米国を含む関係国との連携に向けた方途を議論し、早期に具体的成果を目指すことで一致し、共同プレス・ステートメントを発出した。
(7) 日米豪印外相会合 (9月23日)
林大臣は、日米豪印外務大臣会合において、4か国の外務大臣間で率直な議論を行い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた力強いコミットメントを再確認し、地域に貢献する実践的協力を更に進めていくことで一致した。その一環として、インド太平洋地域における災害対応に関し、「人道支援・災害救援パートナーシップ」のガイドラインに署名した。
また、林大臣からは、国際秩序が揺らぐ中、国連の理念と原則に立ち戻ることが重要であり、いかなる力による一方的な現状変更の試みにも強く反対する重要性を強調した。
(8) 新型コロナ対策(グローバル行動計画)に関する外相会合 (9月23日)
林大臣は、7月に開催された前回外務大臣会合の共催者として、新型コロナ対策(グローバル行動計画)に関する外相会合に出席した。会合では、林大臣から、パンデミックを収束させるための取組を維持することの必要性を述べるとともに、グローバルヘルス・アーキテクチャの強化に向けて、来年のG7広島サミットに向けた議論とグローバル行動計画の取組を効果的に連携させ、積極的に議論を主導していく旨を発信した。会合後に議長声明が発出され、グローバル行動計画の今後の在り方を決定するために再度会合を開催することが合意された。
2 二国間会談等(時系列順に記載)
(1) 日マルタ外相会談 (9月19日)
林大臣は、ボージュ外相との会談において、日本とマルタは基本的価値を共有するパートナーであり、来年から共に安保理入りすることを見据え、法の支配の徹底の重要性や、安保理改革を含む国連全体の機能強化の重要性を確認した。また、ウクライナ情勢、東シナ海・南シナ海情勢及び北朝鮮への対応を始めとする地域情勢について議論し、引き続き連携していくことで一致した。
(2) 日韓外相会談 (9月19日)
林大臣は、朴振(パク・チン)外交部長官と、3か月連続となる日韓外相会談を行った。パク長官との間で、現下の戦略環境において日韓、日米韓協力を推進していく重要性について改めて一致した。また、北朝鮮への対応における更なる連携で一致し、パク長官から拉致問題について改めて支持を得た。旧朝鮮半島出身労働者問題について、パク長官から、韓国側の立場について説明があり、これに対し、林大臣から、日本側の一貫した立場を伝えた。その上で、パク長官との間で、外交当局間で行われている建設的なやり取りを評価しつつ、日韓関係を健全な関係に戻すべく、問題の早期解決に向けて両国間の協議を継続していくこととした。
(3) 日英外相立ち話 (9月20日)
林大臣は、クレバリー外務・英連邦・開発相との立ち話において、英国との関係はかつてないほど緊密であり、国際社会の戦略的課題に対して引き続き具体的な協力を進めていきたい旨述べ、両者は、引き続き緊密に連携していくことで一致した。また、両者は、ウクライナ情勢についても意見交換を行い、引き続きG7を含め緊密に連携していくことを確認した。
(4) 日チェコ外相会談 (9月20日)
林大臣は、リパフスキー外務大臣との会談において、ウクライナの近隣国として、チェコが果たしている避難民受入れ等の多大なる貢献に敬意を表した上で、チェコが基本的価値を共有し、現在EU議長国を務めていることを踏まえ、地域情勢や日・EU経済分野の課題について意見交換を行い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携を確認した。
(5) 日チリ外相会談 (9月20日)
林大臣は、ウレホラ外務大臣と、チリ新政権発足直前の本年2月のテレビ会談に続き、今回対面では初の会談を行った。林大臣から、太平洋に面する諸国同士、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現を含め、連携していきたい旨述べ、基本的価値を共有する戦略的パートナーとして協力を深めていくことで一致した。また、TPP11について、原署名国たるチリの一日も早い締結への期待を伝達した。
(6) 日アルメニア外相会談 (9月20日)
林大臣は、ミルゾヤン外務大臣との会談において、本年外交関係樹立30周年を迎えた日本とアルメニアが、二国間関係の強化だけでなく、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化に向けて協力していくことを確認した。最近緊張が高まっているナゴルノ・カラバフ問題について、林大臣からは、地域の安定のためにもアルメニアとアゼルバイジャンとの間の対話を通じた平和的な解決が重要であると強調した。
(7) 日キルギス外相会談 (9月21日)
林大臣は、クルバエフ外務大臣との会談において、日本とキルギスは本年外交関係樹立30周年を迎え、友好的なパートナーシップ関係のもと、幅広い分野での協力を強化していくことで一致した。また、林大臣から、今般キルギス・タジキスタン国境付近での衝突及び避難民が発生している状況に対する懸念及び外交的・平和的な方法で問題が解決に向かうことを期待する旨を伝えた。
(8) 日スリナム外相会談 (9月21日)
林大臣は、カリブ共同体(カリコム)の議長国であるスリナムのラムディン外務大臣との会談において、二国間関係のみならず、気候変動など国際場裡における取組について議論し、認識のすり合わせを行い、日本とカリコムとの連携を一層強化していくことで一致した。
(9) 日コロンビア外相会談 (9月21日)
林大臣は、コロンビアのレイバ外務大臣と今回初めての会談を行い、林大臣から、日本が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた取組を推進しており、基本的価値を共有する重要なパートナーであるコロンビアと連携していきたい旨述べた。また、様々な国際課題における協力を含め、今後とも二国間で緊密に連携していくことで一致した。
(10) 日ベルギー外相会談 (9月21日)
林大臣は、ラビブ外務・欧州問題・対外貿易・連邦文化施設大臣との会談において、両国の経済・貿易・投資関係の発展に向けて共に取組を進めていくことで一致するとともに、ウクライナ情勢、東シナ海・南シナ海情勢及び北朝鮮への対応を始めとする地域情勢について議論し、同志国として引き続き連携していくことで一致した。
(11) クールシ国連総会議長との会談 (9月22日)
クールシ総会議長との会談では、国際秩序が揺らぐ中で法の支配を徹底するための国連全体の機能強化について意見交換を行った。また、安保理改革を進めるべく連携していくことで一致した。更に、国際社会が未曾有の試練に直面する中で、新たな時代における人間の安全保障に基づく取組の主流化に向けて連携し、将来世代のために責任を果たしていくことで一致した。
(12) 日ヨルダン外相会談 (9月22日)
林大臣は、中東地域の安定の要であるヨルダンのサファディ副首相兼外務大臣との会談において、中東和平を始めとする中東地域情勢等について意見交換を行い、改めて認識をすり合わせることが出来た。また、王室・皇室の友好関係及び戦略的パートナーシップに基づく、両国の友好な関係を一層発展させていくべく、今後とも緊密に連携していくことで一致した。
(13) 日エジプト外相会談 (9月22日)
林大臣は、シュクリ外務大臣との会談において、本年11月にエジプトが議長国を務める国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)に向け、エジプトと連携したい旨述べた。また、NPTの維持・強化に向け協力していくことで一致するとともに、二国間関係の更なる関係拡大に向け、引き続き協力していくことで一致した。
(14) 日ブラジル外相会談 (9月22日)
林大臣は、フランサ外務大臣との会談において、国連安保理での協力を含め、二国間関係及びロシア・中国・北朝鮮を含む国際的な課題につき、基本的価値を共有する「戦略的グローバル・パートナー」として引き続き連携して取り組むことを確認した。また、ポテンシャルの高い経済関係強化のあり方についても議論した。
(15) 日アルバニア外相会談 (9月23日)
林大臣は、アルバニアのジャチカ外務大臣との会談において、本年が両国の友好関係100周年であることを指摘し、経済などの二国間関係、西バルカン諸国のEU加盟及びウクライナ情勢や北朝鮮を含む国際情勢について議論を行い、来年両国が国連安保理非常任理事国を務めることを踏まえ、二国間及び国際場裡での更なる協力拡大について一致した。
3 その他 (時系列順に記載)
(1) 林外務大臣とジャパン・ソサエティ幹部との昼食会及び林外務大臣によるジャパン・ソサエティの視察 (9月19日)
林大臣は、ジャパン・ソサエティ幹部との昼食会の冒頭、100年以上の歴史を有するジャパン・ソサエティの幹部との意見交換の機会を嬉しく思う旨述べるとともに、ウォーカー理事長の下、政策やビジネス、文化、芸術等幅広い分野において日本のプレゼンスを高め、日米協力を支えてきたジャパン・ソサエティの貢献を評価する旨述べた。これに対し、ジャパン・ソサエティ幹部から、日本政府による支援への謝意が示された。その後に行われた林大臣によるジャパン・ソサエティの視察では、ウォーカー理事長他からジャパン・ソサエティの活動及び成果が紹介され、林大臣から、ニューヨークにおける日米間の人的交流と相互理解のハブとなっているジャパン・ソサエティの貢献と職員の尽力に対して改めて感謝の意を表した上で、今後の更なる活動の発展を期待する旨述べた。
(2) リッシュ米国上院議員による林外務大臣表敬 (9月20日)
林大臣は、リッシュ米国上院議員の表敬を受け、冒頭、国連総会の機会にリッシュ上院議員とお会いできて嬉しい旨述べるとともに、これまで自ら日米間の議員交流促進に深く関与してきた旨述べた。また、林大臣から、安倍元総理の逝去に当たり上院が追悼決議を採択したことに感謝する、我が国の外交・安全保障の基軸である日米同盟の一層の強化に取り組んでいきたい旨述べた。さらに、林大臣から、既存の国際秩序が大きな挑戦を受けている中、今ほど同盟国・同志国の連携が求められている時はなく、一層日米で連携していく必要があり、リッシュ上院議員の引き続きの協力を期待する旨述べた。これに対し、リッシュ上院議員から、日米同盟への確固たる支持が示された。また、林大臣から、米国のTPPへの早期復帰を働きかけた。
(3) クレッグMeta国際問題担当プレジデントによる林外務大臣表敬 (9月21日)
林大臣は、クレッグMeta国際問題担当プレジデントの表敬を受け、冒頭、クレッグMetaプレジデントから、日本政府がG7等の枠組みにおいて信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)について主導していることに謝意の表明があったのに対し、林大臣から、2019年のダボス会議で故安倍総理が提唱して以来、日本はDFFTの問題に一貫して取り組んでおり、来年G7議長国を務めるにあたっても議論を深めていきたい考えである旨述べた。その他、クレッグMetaプレジデントより、現下の国際情勢におけるデータ流通についての課題等に関し説明があり、林大臣より、今後とも緊密に連携していきたい旨述べた。
(4) コロンビア大学関係者との懇談(9月21日)
林大臣は、コロンビア大学関係者との間で懇談において、地域及び国際的な政治・経済情勢、幅広い分野における今後の日米関係強化の在り方等について意見交換を行った。また、林大臣から、コロンビア大学を始めとする世界の各学術機関における日本研究の進展を強く期待しており、協力していきたい旨述べた。
(5)現非常任理事国と新非常任理事国との顔合わせ(9月22日)
林大臣は、安保理非常任理事国10か国及び2023年からの新非常任理事国5か国(計15か国)と顔合わせをした。一部の国とは二国間会談を実施し(インド、ブラジル、アルバニア、マルタ) 、連帯を確認した。
(6) 国連関係機関日本人職員との懇談 (9月23日)
林大臣は、ニューヨークで勤務する国際機関の日本人職員との昼食会の冒頭、ロシアのウクライナ侵略のように、国際社会が連携して対応する必要のある喫緊の課題が山積しており、こうした課題に対応するために、国連を始めとする国際機関の役割が一層重要となっている旨を述べるとともに、日本人職員が活躍されていることに敬意を表し、日本政府としての更なる日本人職員の増加、幹部への昇進の後押しをしたい旨述べた。その後は、参加の日本人職員との間で、日本人職員増強に向け政府が取り組むべき事項や有効な支援方策等について、意見交換が行われた。