G7
G7カナナスキス・サミット(概要)
令和7年6月17日
6月15日から17日にかけてカナダ・カナナスキスにて開催されたG7カナナスキス・サミットに石破総理大臣が出席したところ、概要は以下のとおりです。
議題・日程
1 出席者
- G7
日:石破総理大臣、加:カーニー首相(議長)、仏:マクロン大統領、米:トランプ大統領、英:スターマー首相、独:メルツ首相、伊:メロー二首相、EU:コスタ欧州理事会議長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長 - 招待国(7か国)
豪州:アルバニージー首相、ブラジル:ルーラ大統領、インド:モディ首相、韓国:李在明大統領、メキシコ:シェインバウム大統領、南アフリカ:ラマポーザ大統領、ウクライナ:ゼレンスキー大統領 - 招待機関(3国際機関)
国連:グテーレス事務総長、世界銀行:バンガ総裁、NATO:ルッテ事務総長
2 日程及び出席国
6月16日(月曜日)
- セッション1「世界経済の見通し」
出席国:G7メンバー - セッション2(ワーキング・ランチ)「経済成長、経済安全保障・経済強靱性」
出席国:G7メンバー - セッション3「コミュニティを安全にする」
出席国:G7メンバー - セッション4「世界を安全にする」
出席国:G7メンバー
6月17日(火曜日)
- セッション5「強く、主権を有するウクライナ」
出席国:G7メンバー、ウクライナ、NATO - セッション6「閉会セッション」
出席国:G7メンバー - セッション7「エネルギー安全保障」
出席国:G7メンバー、招待国・招待機関(ウクライナ及びNATOを除く)
成果文書
G7カナナスキス・サミットの機会に発出された成果文書は以下のとおりです。
各セッション概要
セッション1「世界経済の見通し」
- 石破総理大臣は、世界経済は地政学的緊張や自然災害等のリスクに晒され、不確実性が一層増している旨指摘し、G7として緊密な意思疎通を行い、不確実性を下げ、安定的な成長を実現していくことが必要である旨強調しました。
- 国内経済・国際経済システムの改善
- 石破総理大臣から、米中を含む各国間の貿易収支の不均衡の背景には、持続不可能な各国内のマクロ経済の不均衡が存在すると指摘し、問題の解決に向けては、各国が国内経済・国際経済システムの改善に取り組む必要があると指摘しました。
- 加えて、石破総理大臣は、非市場的政策・慣行により、アジアを含む途上国の産業・雇用に悪影響が生じている旨を指摘し、今こそG7が結束して、ルールに基づく自由で公正な経済秩序を築くべく、国際社会をリードすることが必要である旨強調しました。
- 多角的自由貿易体制の維持・強化
石破総理大臣から、特に、WTOは世界経済の成長に不可欠な基盤を提供し、G7各国もその恩恵を受けてきた旨述べました。また、石破総理大臣は、WTOを中核とする多角的自由貿易体制の維持・強化は不可欠であると述べた上で、公平な競争条件の確保、「途上国地位」の問題、紛争解決制度の改革などの課題を踏まえ、各国に受け入れられる形で、WTOの改革を実現する必要がある旨強調しました。 - 石破総理大臣から、G7を始めとする各国は、投資を通じて自らの産業を強化し、そしてお互いの経済を強化していく必要がある旨強調しました。G7首脳は、G7が結束し、率直な議論を通じて世界経済を巡る諸課題に主導的に対処していく必要があるとの認識を共有しました。
セッション2(ワーキング・ランチ)「経済成長、経済安全保障・経済強靱性」
- 石破総理大臣から、重要鉱物のサプライチェーンの強靱化・多角化は喫緊の課題であり、G7やパートナー国と緊密に連携して対応することの必要性を強調しました。
- また、石破総理大臣から、資源国の役割は非常に重要であり、サプライチェーン多角化のための新規鉱物資源プロジェクトの立ち上げや、途上国の現地高付加価値化に向けた「強靭で包摂的なサプライチェーンの強化に向けたパートナーシップ(RISE)」などにおける協力が重要である旨述べました。
セッション3「コミュニティを安全にする」概要
- 石破総理大臣から、山火事に関し、日本でも乾燥や強風によって、より頻繁かつ大規模に山火事が発生している旨述べた上で、日本は固定翼機による消火能力強化を含む消火体制・装備の充実などの対策強化の検討や、気象衛星を活用した山火事の早期の発見・消火に努めており、各国とも連携・協力していきたい旨述べました。
- また、石破総理大臣から、国境を越えた抑圧への対応におけるカナダのリーダーシップを高く評価するとともに、各国で連携して対応することの重要性を強調しました。
- さらに、石破総理大臣は、貧困撲滅を含めた移民発生の根本原因への対処の必要性を強調した上で、移民の密入国に関与する国際組織犯罪の撲滅に向けて、今後ともG7でも連携していきたい旨述べました。
セッション4「世界を安全にする」
- 本セッションでは、世界が新たな転換期を迎える中、ウクライナ、中東及びインド太平洋情勢等の国際情勢の諸課題について、G7各国で率直な意見交換を行いました。
- ウクライナ情勢
- 石破総理大臣から、早期の全面停戦、公正かつ永続的な平和の実現は、G7共通の目標であり、ロシアに前向きかつ具体的な行動を迅速に取らせるためにはG7の結束は重要である旨述べました。
- その上で、石破総理大臣から、ウクライナの和平のあり方は、インド太平洋を含む国際秩序全体に影響を及ぼし得る旨指摘し、再侵略を抑止する和平の枠組みの構築が重要であることを強調しました。
- また、ウクライナ支援に関して、石破総理大臣から、G7で連携してウクライナ支援を継続していくとともに、対露制裁を継続していく旨述べました。
- さらに石破総理大臣から、北朝鮮兵士のロシア派遣を含む、露朝軍事協力の進展に深刻な懸念を表明しました。G7各国は、中国がロシアの継戦能力を下支えしていることについて懸念を共有しました。
- 中東情勢
- イスラエル・イラン情勢 石破総理大臣から、事態の沈静化に向けた外交努力の重要性を強調しました。また、イランの核兵器開発は決して許してはならない旨述べ、協議を通じた核問題の解決の重要性を改めて首脳間で確認しました。
- ガザ情勢 石破総理大臣から、ガザで民間人を含む多くの人命が失われていることは看過できないとした上で、全ての当事者に対し、軍事的手段によらず交渉に立ち戻り、停戦・人質解放の合意の継続に向けて誠実に取り組むよう、改めて強く求める旨述べ、引き続きG7を始めとする関係国・機関と緊密に連携していきたい旨強調しました。
- インド太平洋
- 国際社会の平和・安定や繁栄に大きな影響を与えるインド太平洋情勢及び同地域での諸課題について、G7首脳で率直な意見交換を行いました。
- 石破総理大臣は、就任以来多くのアジアの国と会談を実施し、アジアの生の声に耳を傾けてきたことを踏まえ、G7としてより一層この地域に関与していくことが重要である旨述べました。G7首脳は、中国をめぐる諸課題に共に取り組むことで一致するとともに、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展を含む様々な課題への懸念を表明し、本件への対応について、引き続き緊密に連携していくことで一致しました。
セッション5「強く、主権を有するウクライナ」
- 石破総理大臣から、ロシアによる攻撃に日々勇敢に立ち向かうゼレンスキー大統領、ウクライナの人々に敬意を表する旨述べるとともに、早期の全面停戦、ひいては公正かつ永続的な平和の実現のために、ロシアに前向きかつ具体的な行動を迅速にとらせる必要があり、引き続きG7の結束・連携が重要である旨を指摘しました。石破総理大臣から、ロシアによる侵略のインド太平洋への影響について言及し、多くの国から賛意が示されました。
- ウクライナ支援に関し、石破総理大臣から、本年10月22日に東京で開催する閣僚級の地雷対策会議について紹介した上で、ウクライナの産業振興を含む官民一体の復旧・復興支援を一層推進していく旨述べました。
- また、石破総理大臣から、日本はウクライナ情勢について、引き続きNATO加盟国を含む同志国等との連携強化を推進する旨述べました。
- 石破総理大臣から、露朝協力の進展への深刻な懸念を示し、北朝鮮がロシアから協力を得ることは、グローバルな安全保障上の問題をもたらす旨述べました。加えて、石破総理大臣から、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源の一つとみられる暗号資産窃取につき懸念を表明するとともに、拉致問題の即時解決に向け、引き続き理解と協力を改めて求めました。
セッション6「(閉会セッション)」
本セッションでは、議長国カナダのカーニー首相が今回のサミットの成果を総括しました。また、来年の議長国フランスのマクロン大統領から、来年のG7サミットを6月14日から16日までフランス・エビアンにて開催するとの発表がありました。
セッション7「エネルギー安全保障」
- エネルギーの多様化・サプライチェーンの強靱化
- 石破総理大臣から、日本は、エネルギー安全保障に寄与する再生可能エネルギーや原子力などのエネルギー供給源の活用に強力に取り組むとともに、LNGなどの供給源の多様化、脱炭素化に向けた水素・アンモニア、二酸化炭素回収・貯留などの新たな技術の活用に世界に先駆けて取り組むことを強調しました。
- また、石破総理大臣から、エネルギー供給源の多様化のみならず、これを支えるサプライチェーンの強靱化・多角化も、G7やパートナー国・機関が連携して取り組むべき課題である旨指摘しました。その観点から、石破総理大臣は、日本が世界銀行と共に主導してきたRISE(強靱で包摂的なサプライチェーンの強化に向けたパートナーシップ)の取組について、5月のG7財務大臣・中央銀行総裁会議において、ラテンアメリカ、カリブ地域もその対象地域に加えるほか、支援する活動の範囲をサプライチェーン全体に広げることで合意したことを歓迎する旨述べました。
- さらに、石破総理大臣から、日本は、豪州、ラテンアメリカ、アフリカ諸国などの資源国における探査活動や人材育成等を通じて、資源国の事業の発展やサプライチェーンの強靱化に貢献していく旨述べました。
- 技術・イノベーション、インフラ協力
- 石破総理大臣から、AIの普及に伴うエネルギー需要の大幅な増加が避けられない中、原子力やガス火力を含む、あらゆるエネルギーの活用が必要である旨述べつつ、イノベーションを通じたペロブスカイト太陽電池、次世代型地熱、次世代革新炉などの脱炭素電源の拡大の重要性を指摘しました。さらに、フュージョンエネルギーの実現に向けた取組を進めることが重要である旨指摘しました。
- 石破総理大臣から、日本は、脱炭素化にも積極的に貢献していく旨述べました。
- 石破総理大臣は、日本が率先して提唱してきた質の高いインフラ投資の重要性を指摘した上で、大規模なインフラ支援に加えて、農村用の電力支援や飲み水の確保など、途上国の人々の生活水準の向上を図るという草の根の視点も必要である旨述べました。また、石破総理大臣から、民間資金動員の重要性を指摘した上で、日本が本年、国際協力機構(JICA)の金融手法を拡充し、途上国企業への保証や債券取得等を可能にした旨紹介しました。さらに、債務持続可能性の確保のため、G20「共通枠組」の実施改善や、債務透明性向上の取組の必要性も強調しました。
- 石破総理大臣は、本年8月に日本が主催する第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)も見据え、途上国の成長を後押しするため、日本は責任を果たしていく旨述べました。