核軍縮・不拡散
ミサイル技術管理レジーム(MTCR)ダブリン総会
パブリック・ステートメント(仮訳)
平成29年11月1日
- ミサイル技術管理レジーム(MTCR)は2017年10月16日から20日まで,ダブリンにおいて第31回総会を開催した。冒頭,サイモン・コーブニー・アイルランド外務・貿易大臣とストゥルラ・シグルヨンソン・アイスランド外務次官が歓迎の挨拶を行った。総会の議事進行は,2018年に予定されている次回総会までMTCR共同議長を務めるブレフニー・オライリー・アイルランド大使とビャルニ・ヴェストマン・アイスランド公使が担当した。
- 2017年はMTCRが1987年に創設されてから30周年となる。この30年間でMTCRの参加国は7か国から35か国に拡大し,不拡散に関する効果的な多国間の枠組みであることを証明してきた。過去30年間に培われてきた関連品目の輸出管理,情報共有,各種協力は,適正な貿易を妨げることなく,大量破壊兵器の運搬手段となるミサイルシステムの開発・生産・取得に必要な資機材・技術・知識の拡散者に対し,それらを入手する機会を大きく減らしてきた。MTCRはこれからも,大量破壊兵器の運搬が可能なミサイルシステムや,そのために必要な技術や資機材の拡散を抑えるための国際的な努力を促進するため,非参加国への関与を続ける。
- 今回の総会の主な目的は,過去12か月間のMTCRの活動を検討・評価し,大量破壊兵器が運搬可能な無人システムの拡散を防ぐという参加国の取組を強化することであった。この点に関して,参加国は無形技術移転,無人航空機,キャッチオール規制,地域における拡散,非参加国への戦略的アウトリーチについて,より大きな考慮を払った。
- MTCR参加国は,大量破壊兵器(核・化学・生物兵器)とその運搬手段の拡散が国際的な平和と安全にとって脅威であり続けていることを想起した。参加国は,大量破壊兵器運搬システムに寄与し得る国際的な移転の規制によって拡散リスクを抑えることへのコミットメントを改めて表明した。また,釜山での前回総会以降のミサイル拡散の展開について詳細な情報交換を行った。
- MTCR参加国は,MTCRガイドラインとその附属書の規制リストが,ミサイル関連品目・技術の輸出管理のための国際的なベストプラクティス(最良実践例)の基準となっていることを歓迎し,この基準がより多くのMTCR非参加国によって遵守され,いくつかの国連安保理決議にも盛り込まれていることに留意した。
- MTCR参加国は全ての国に対し,大量破壊兵器運搬のためのミサイル計画に寄与し得る品目や技術の移転を防ぐため,国内法令と国際法に合致した形で最大限の警戒を行うよう呼びかけた。参加国は,MTCRの目的を支持する関心国等に情報提供や支援を行うことへのコミットメントを確認した。
- 地域的及び国際的な安全保障のため,MTCR参加国は全ての国に対し,MTCRガイドラインの遵守や,適切な国内法令と法執行メカニズムの確立を通じて,不拡散というMTCRの目標を支持するよう呼びかけた。この観点から,参加国は,可能な限り多くの国が同ガイドラインを遵守することが,大量破壊兵器運搬システムの拡散リスクの抑制と国際安全保障の推進に大きく貢献することを強調した。参加国は,諸国が自発的に同ガイドラインの遵守を宣言するとともに,MTCR附属書の全ての品目を同ガイドライン(同附属書と同ガイドラインの事後的な改訂内容も含む)に従って規制するという政治的コミットメントをMTCR事務局に書面で正式に通知するよう呼びかけた。現在,エストニアとラトビアがMTCR遵守国となっている。
- MTCR参加国は,宇宙計画を含む技術開発が大量破壊兵器の運搬システムに寄与し得ないものである限りは,それを妨げないようにMTCRガイドラインが作成されていることを強調した。
- MTCR参加国は世界的なミサイル拡散活動,特に,他の地域でのミサイル拡散活動をあおり得る中東,北東アジア及び南アジアで進行中のミサイル計画に関して,幅広い議論を行うとともに懸念を表明した。参加国はまた,関連する地域機関等に対し,大量破壊兵器の運搬が可能なミサイルの拡散防止における輸出管理の役割に注意を払うよう促した。
- MTCR参加国は,MTCRの権限の範囲内で,国連安保理決議第1695号,第1718号,第1874号,第2087号,第2094号,第2270号,第2321号,第2356号,第2371号及び第2375号,中でもとりわけ決議第2371号を,これらの決議における弾道ミサイルに関する規定を念頭に置きながら,完全に履行するとのコミットメントを確認した。参加国は,北朝鮮のミサイル開発が引き起こしている重大な国際情勢を念頭に,2016年2月以降の北朝鮮による弾道ミサイル発射の急激な増加とミサイル技術の重大な進展を受け,北朝鮮の弾道ミサイル計画に寄与し得る移転の規制に際して最大限警戒するという確固たるコミットメントを改めて表明した。イランについては,国連安保理決議第2231号で承認された包括的共同作業計画(Joint Comprehensive Plan of Action)の履行の継続的な進展に留意し,同決議をその附属書Bにおける弾道ミサイルに関する規定を念頭に置きながら履行するとのコミットメントを確認した。参加国は,ミサイル計画の展開について意見交換を続けることで一致した。
- MTCR参加国は,ハム・サンウク前議長(韓国外交部・局長)によるアウトリーチ活動に格別の謝意を表明した。新議長は,MTCRの透明性を高め,その目的を推進し,これまでの訪問先の国々との対話のモメンタムを維持するため,フォローアップと更なるアウトリーチ活動や接触を行うよう奨励された。参加国はまた,ミサイル関連の輸出管理の履行に関してMTCR非参加国やその他の関心国等を支援するとともに,そうした活動に関して議長に報告することについての個別的,集団的,地域的な努力の継続を奨励した。
- MTCR参加国は,MTCRで進められている技術的な作業が極めて重要であることを再確認した。参加国は,機微な品目や技術に関する急速な技術発展や拡散者の調達慣行の変化が,これらに対する幅広い認識と効果的な行動を引き続き必要とすることを強調した。参加国は,設備・ソフトウェア・技術に関するMTCR附属書が,ミサイル拡散を防ぐためのMTCRの取組の礎であることを認識し,技術専門家会合(TEM)の業績に対して深い謝意を表明した。
- MTCR参加国はまた,審査・執行専門家会合(LEEM)と情報交換会合(IEM)の取組に深い謝意を表明した。参加国は両会合において,大量破壊兵器運搬手段の計画に資する調達活動・戦略や拡散動向,無形技術移転(ITT)がもたらす深刻なリスクと課題,ミサイル計画の主要な技術動向,規制リスト以外の品目に対するキャッチオール規制,仲介・通過・積替えに関する問題やこれらを悪用した輸出規制回避の試みなど,数々の問題について議論を継続した。こうした議論を通じて,不断の注意や,ベストプラクティス(最良実践例)を含む情報共有,MTCR参加国の輸出管理制度や執行努力の最新化が極めて重要であるとともに,大量破壊兵器運搬手段の拡散を抑えるための参加国の取組に大きな影響を及ぼすことが示された。
- MTCR参加国は,新規参加国に関する問題について意見交換を行い,個々の参加申請を詳細に議論した。この問題は今後も議題として取り上げられることとなった。
- MTCR参加国は,議長職の継続性や実効性を含むMTCRの内部運営に関する数々の問題について検討を行った。
- MTCR参加国は,フランスに対し,パリにおける拡大ポイント・オブ・コンタクト会合の成功裏の開催と,MTCR事務局としての役割に謝意を表明した。
- MTCR参加国は,弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)議長を務めるマレク・シチギェル・ポーランド大使による演説に留意した。
- MTCRには以下の35か国が参加している:アルゼンチン,オーストラリア,オーストリア,ベルギー,ブラジル,ブルガリア,カナダ,チェコ,デンマーク,フィンランド,フランス,ドイツ,ギリシャ,ハンガリー,アイスランド,インド,アイルランド,イタリア,日本,ルクセンブルク,オランダ,ニュージーランド,ノルウェー,ポーランド,ポルトガル,韓国,ロシア,南アフリカ,スペイン,スウェーデン,スイス,トルコ,ウクライナ,英国,米国。