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青年交流:アジア欧州ヤングリーダーズシンポジウム

平成9年3月

【第1回アジア・欧州ヤングリーダーズシンポジウム】

アジア欧州ヤングリーダーズシンポジウム

各分科会最終報告書
第四分科会:主権国家間の地域内協力及び地域間協力のあり方 まとめと提案

 第1セッションでは、協力と統合の性格と制度化の問題について焦点を当てた。アジアとヨーロッパの参加者は、それぞれの地域における協力と統合の発展の現状を確認し、さまざまな種類の地域組織について、直接意見を交換した。
 参加者は、それぞれの地域で採用されている異なるアプローチを踏まえ、地域レベル、あるいは国家レベルの利益のために、超国家的組織と政府間組織のどちらを選択すべきかについて話し合った。地域統合の定義は、広範囲にわたって取り上げられた。EUのモデルが地域統合の例として、ASEANは地域協力の例として取り上げられた。アジアとヨーロッパでは、国際的制度に何を求めるかという概念が異なることが指摘された。相違点の1つとして、アジアにおける安全保障協定は、一般的に、二国間協定の領域に留まっているが、同時に、アジア諸国は、ARF(ASEAN地域フォーラム)などの多国間フォーラムを通じて信頼醸成措置や予防外交の構築を図っている。一方、ヨーロッパにおける安全保障は、主として統合の問題として取り扱われている。

 第2セッションでは、欧州連合モデルが、アジアにおける種々の組織体制と比較された。アジア全体を包含する、結合力のある枠組みの欠如が指摘された。最初に提起された問題は、地域レベルおよび世界レベルの両方において、共通の利益をどのように明確化するかであった。さらに、組織上の問題がいくつか明らかにされた。ASEM加盟国拡大の前に、まずASEMプロセスを強化することが重要であることが確認された。
 地域間協力の強化については、効率的かつ透明なメカニズムの必要性とともに、反対に、制度化によって、ASEMを特徴付ける打ち解けた雰囲気が失われる可能性があることが指摘された。
 次に、意思決定のいわゆるエンジン部分、対話のための閣僚会議、および具体的なプロジェクトの3段階からなる構造が提案された。この構造案では、上部レベルでは中央集権、下部レベルでは地方分権が行なわれると考えられる。また、この提案は、柔軟性が必要であることを示唆している。EUモデルは、数々の条約に基づき設定された公式の枠組みの中で意思決定がされるので、ASEMの将来像のモデルとはならない。一方アジアでは、地域協定はコンセンサスにより漸進的に発展している。異なるアプローチを調和させる必要性が指摘された。
 さらに、アジア・欧州間には統合プロセスに相違点が存在することが強調された。

結論

 第3セッションでは、参加者はそれまでの議論をまとめ、以下の結論に達した。

1.ASEMの進展について:

 現在ASEMは、コンセンサスや活動があってもなくても、諮問機関的フォーラムの役割を果たしている。しかし一方でASEMは、行動と意思決定の機会を提供するプロジェクトが多く存在する。今後ASEMは、諮問機関的フォーラムから調整機関的フォーラムに移行する可能性がある。その場合、特定の問題や種々の意見の調整を行なうことにより、他のフォーラムが行なっている作業に貢献することが可能である。現行のASEMの構造を再定義すべきであることが指摘された。

2.ASEMプロセスの包括的な性格について:

 ASEMは、政治、経済、文化など、多くの分野で活動を行なっている。協力は、すべての分野で必要である。政治的協力と経済的協力にかかわる事項以外にも、目を向けることが必要である。しかし、同時に、ある特定の分野における協力が、他の分野における協力よりも速いペースで実現する場合があることを念頭に置かなければならない。進展のペースが違うことは、当然のことである。また、一つの分野における進展が比較的遅いことにより、他の分野における進展に影響を及ぼすことがあってはならない。さらに、人的資源は知識、交流および教育の各プログラムを通じて開発されるべきであると強く認識された。

3.第三者に関する問題について:

 アジアとヨーロッパは、第一に、アジア・ヨーロッパ・北米の三地域が形成する三角形の第三辺であることを心得て、両地域間のつながりを強化する努力を行なうべきである。同時に、大西洋関係および太平洋関係などから得られた経験から、考慮に値する有益な先例を見い出し、参考にすべきである。第三者との連携を形成することが望ましい場合、これを行なうことも可能である。その場合、例えば各種セミナー、学究的機関、あるいは民間セクターなどASEMの枠組みとは独立した外部の努力との連携が可能であろう。これらの連携が漸次ASEMのプロセスに浸透していく可能性がある。

4.さまざまな活動の調整:

 加盟国の協力活動を調整するために、ある種の組織的構造、即ち情報・通信・協調が必要である。情報センターという形態で、このような重要な役割を果たすべきである。現在、各加盟国は、独自にさまざまな案を策定しており、もしこれらの提案を実施するために26の異なるグループが設置された場合、ASEMのプロセスは拡散する。したがって、APECのモデルに倣い、特定の分野毎に、種々の提案に対応する作業グループを設置することが有益であると思われる。これを行なわない場合、各閣僚会議やその他の会議におけるプロセスも、同様に拡散しすぎることになろう。既存の制度やメカニズムを利用することも可能だが、最終的には、常設の事務局を設置するべきであろう。非政府組織および民間セクターからの提案も奨励されるべきである。

5.地域間フォーラム対政府間フォーラム:

 理論的に見ると、ASEMは政府間フォーラムである。しかし、ASEMは、既存の枠組みやメカニズムを基礎に構築されてきたため、実質的には地域間会議といえる。だが、この形態を永久的に維持する必要はない。加盟国の資格、地域内及び地域間調整のためのメカニズムの展開が、今後この問題に影響を与える要因となろう。


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