省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

1-3 未来志向の日韓関係の推進

北東アジア課長 伊藤直樹
平成18年5月
施策の目標
良好な日韓関係を更に高い次元に発展させること、また、これを通じての地域の平和と繁栄への寄与。
施策の位置付け
平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
第162回施政方針演説に言及あり。
第164回施政方針演説に言及あり。
施策の概要(10行以内)
 本件施策は、民主主義、市場経済という基本的価値観を共有する日韓両国が、友好協力関係を強化するとともに、共通の課題に向かって取り組む中で、地域の平和と安定に寄与することをその目的とする。
 具体的には、首脳・外相会談をはじめとする政治分野での対話の促進、人的交流の拡大、日韓EPA交渉の推進を図るとともに、過去に起因する諸懸案への取組、日韓間の懸案への対応を行う。

【施策の必要性】

 韓国は我が国にとって地理的に最も近い位置にあるのみならず、民主主義、市場経済という基本的価値観を共有し、ともに米国との同盟関係を有する最も重要な隣国の1つである。日韓両国が、未来志向の友好協力関係を強化するとともに、共通の課題に向かって「運命共同体」として緊密に連携して取り組んでいくことは、我が国の直接的な利益となるのみならず、地域の平和と安定に寄与する。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

 首脳・外相会談をはじめとする政治分野での対話、人的交流の拡大等を通じあらゆるレベルでの交流・対話を促進していく中で、北朝鮮問題、東アジア共同体の構築、国連改革等共通の課題への連携・協力へ向けた取組を進めていくとともに、大局的な観点から未来志向の日韓関係を強化していく。そのためにも、過去に起因する諸懸案への取組、日韓間の懸案への対応を進めていく。

【施策の効率性】(3行以内)

(1)竹島問題、教科書問題、靖国神社参拝問題を巡り日韓関係は一時期ぎくしゃくしたが、首脳・外相会談を含む政府ハイレベルの政治分野での緊密な対話により、一部の問題における立場の相違が日韓両国の友好協力関係全体を後退させることなく、大局的な観点から未来志向の日韓関係を発展させていくことの重要性を伝え、日韓関係をマネージすることができ、施策の効率性も確保されたといえる。
(2)また、韓国国民の過去に対する心情を重く受け止め、人道的観点から在サハリン「韓国人」支援、朝鮮半島出身者の遺骨調査・返還、在韓被爆者支援等に誠実に対応することにより、未来志向の日韓関係の基盤構築の一助とすることができ、施策の効率性も確保されたといえる。
(3)人的交流の拡大については、「日韓交流おまつり」をはじめとする「日韓友情年2005」の下での文化交流事業や、短期査証の無期限免除、羽田-金浦の直行便の倍増等、交流強化に役立つ措置を複数組み合わせて講じたことにより、折からの韓国大衆文化ブーム(いわゆる「韓流」)と相俟って、国民レベルでの相互理解の促進を図ることができ、施策の効率性も確保されたといえる。
(4)北朝鮮問題に対しては、日、米、韓が緊密に連携・協力をしつつ、北朝鮮の核廃棄を求めてきた結果、第4回六者会合の「共同声明」において、北朝鮮は「すべての核兵器及び既存の核計画の検証可能な放棄」を約束する等の結果に結びついている。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
604,703
675,296
単位:千円
(注)本省分予算

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
28
30
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)。施策1-2「朝鮮半島の安定に向けた努力」との合計。

【外部要因】

(1)日韓関係は韓国国内における対日世論の影響を受けやすく、歴史問題や竹島問題等の懸案が両国民の相互に対する感情を悪化させる可能性を常にはらんでいる。
(2)上記に関連し、韓国の盧武鉉政権の過去・歴史認識に関する政策姿勢(とりわけ日本の侵略戦争及び植民地支配に対する評価及び具体的対応)が日韓関係の具体的あり方を大きく左右することにつながる。
(3)朝鮮半島における南北関係の進展が拉致問題、核問題といった北朝鮮を巡る諸懸案に対する日韓の連携・協力に影響を及ぼしうる。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 通常の評価を行う。

【評価の切り口】

(1)更に高い次元での日韓関係の構築
(2)日韓の連携・協力を通じた地域の平和と安定への寄与

【目標の達成状況(評価)】

(1)更に高い次元での日韓関係の構築
(イ)首脳・外相会談を含めた政治分野での緊密な対話については、平成17年6月及び11月に日韓首脳会談が行われ、外相会談も6回行われた。竹島問題や、靖国神社参拝問題等で日韓関係がぎくしゃくした時期においても、外交当局間の対話は維持されている。
(ロ)人的交流の拡大については、国交正常化40周年を記念した「日韓友情年2005」の下で「日韓交流おまつり」をはじめとする700件を超える記念行事を成功させ、羽田-金浦の直行便の倍増、短期査証の無期限免除等を通じ、年間400万人を越える日韓間の往来を実現し、日韓両国民の相互理解と交流の流れは一層高まった。

(2)日韓の連携・協力を通じた地域の平和と安定への寄与
(イ)過去に起因する諸問題への取組については、朝鮮半島出身者の遺骨調査・返還へ向けた政府間協議を3度にわたり開催し、進展を図るとともに、在韓被爆者支援として在外公館での健康管理手当支給申請の受付を11月末から開始する等、韓国国民の過去を巡る心情を重く受け止め、人道的見地から誠実に対応している。また、歴史共同研究については、平成17年6月の日韓首脳会談において第2期日韓歴史共同研究の立ち上げに合意した。
(ロ)北朝鮮問題に対しては、日韓が連携・協力して北朝鮮の核廃棄を求め、第4回六者会合において「共同声明」の採択に成功、北朝鮮が「すべての核兵器及び既存の核計画の検証可能な放棄」を約束する等、朝鮮半島の非核化へ向けた重要な基礎となっている。
(ハ)日韓経済の緊密化については、日韓間の貿易は増加し、投資も高い水準を維持した。また、企業間の提携・協力関係もIT分野で進展する等、両国の経済関係は一層深化したものとなった。

【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)

「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)
(1)日韓関係がぎくしゃくした時期においても外交当局間の対話は維持されるなど、政治分野の対話の促進は確実に維持されている。ただし、日韓首脳会談については、11月のAPECにおける会談以降、会談がなされていない状態となっている。
(2)人的交流の拡大については、「日韓交流おまつり」をはじめとする「日韓友情年2005」の下での文化交流事業や、短期査証の無期限免除、羽田-金浦の直行便の倍増等により、400万人を越える日韓間の往来と相互理解の醸成がなされた。
(3)過去を巡る諸懸案についても、首脳・外相会談での確認や政府間協議の開催等を通じ、人道的観点からの誠実な対応が進められている。
(4)北朝鮮問題に対しては、日韓が連携・協力して北朝鮮の核廃棄を求め、第4回六者会合において「共同声明」の採択に成功、北朝鮮が「すべての核兵器及び既存の核計画の検証可能な放棄」を約束する等、朝鮮半島の非核化へ向けた重要な基礎を築くことができた。
(5)日韓経済の緊密化については、日韓間の貿易は増加し、投資も高い水準を維持している。FTA交渉については再開の具体的目処は立っていないが、日韓FTA交渉の開始とともに2002年以降中断されていた次官級による日韓ハイレベル協議を再開することに合意する等、外交当局間による対話は進展した。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

(1)竹島問題等の懸案に対する我が国の立場について韓国側の理解を得るための粘り強い働きかけと、大局的な観点からの未来志向の日韓関係の強化を併せて進展させる。
(2)北朝鮮の核問題に加え、拉致問題における日韓間の連携・協力の強化を図る。
(3)日韓FTA交渉の早期再開を目指す。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 大局的な観点からの未来志向の日韓関係の更なる発展と、北東アジア地域の平和と安定へ向けた連携・協力の強化を併せて進展させる。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)


【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 日韓関係の推進をみるための2つの「評価の切り口」のうち、「更に高い次元での日韓関係の構築」に関しては、年間400万人を超える日韓間の往来の実現等が成果として具体的に示されている。もう1つの「切り口」の「日韓の連携・協力を通じた地域の平和と安定への寄与」については、日韓が連携して北朝鮮の核廃棄を求めた結果、六者会合において、「共同声明」の採択等が具体的成果として示されている。日韓間の過去に起因する問題及び竹島問題等の懸案問題の解決に向けた具体的取組及び進展状況についても言及されており、全体として適切な評価といえる。

【事務事業の評価】

事務事業名:政治分野の対話の促進

事務事業の概要
 首脳・外相レベルの会談を含めた政治分野での緊密な対話の実施、及び、核・拉致といった北朝鮮問題をはじめとする共通の課題に対する協力・連携の強化等を図る。
有効性(具体的成果)
 首脳・外相会談を含めた政治分野での緊密な対話については、平成17年6月及び11月に日韓首脳会談が行われ、外相会談も6回行われた。竹島問題や、靖国神社参拝問題等で日韓関係がぎくしゃくした時期においても、外交当局間の対話は維持されている。
 北朝鮮問題に対しては、日韓が連携・協力して北朝鮮の核廃棄を求め、第4回六者会合において「共同声明」の採択に成功、北朝鮮が「すべての核兵器及び既存の核計画の検証可能な放棄」を約束する等、朝鮮半島の非核化へ向けた重要な基礎となっている。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 未来志向の日韓関係を発展させていくためには、政治分野での緊密な対話が不可欠である。北朝鮮問題、東アジア共同体等、増加する日韓共通の課題へ対応するため、また、一部の問題における日韓間の立場の相違が日韓の友好協力関係の基盤を損なわないようにするため、今後も、より緊密な対話及び連携・協力の強化を進めていく必要がある。

事務事業名:人的交流の拡大

事務事業の概要
 「日韓友情年2005」等の文化交流事業、無期限査証免除へ向けた協議等を通じ、日韓間の人的交流を拡大し、国民レベルでの相互理解と信頼醸成を築く。
有効性
(具体的成果)
(1)人的交流の拡大については、国交正常化40周年を記念した「日韓友情年2005」の下で「日韓交流おまつり」をはじめとする700件を超える記念行事を成功させた。
(2)また、人的交流を拡大するための環境整備として、平成17年6月の日韓首脳会談において羽田-金浦の直行便の倍増に合意、平成18年3月には、「愛・地球博」期間の暫定的査証免除の実施結果を受け、短期査証の無期限免除を決定したことで、年間400万人を越える日韓間の往来を実現し、日韓両国民の相互理解と交流の流れは一層高まった。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 昨年度の日韓友情年2005を機に促進された日韓間の相互理解を人的交流の拡大に着実に結びつけるべく、ポスト友情年イベントや短期査証の無期限免除の実施をフォローアップするとともに、修学旅行の相互受け入れの促進をはじめとする青少年交流の拡大、官民若手交流等の招聘事業の推進に取り組み、日韓間で高まった相互への関心を着実に行動へ移していけるよう、政府として、環境整備に積極的に努めていく必要があるため。

事務事業名:過去に起因する諸問題への取組

事務事業の概要
 在サハリン「韓国人」支援、朝鮮半島出身者の遺骨調査・返還、在韓被爆者支援等、韓国国民の過去を巡る心情を重く受け止め、人道的見地から誠実に対応する。
有効性
(具体的成果)
(1)朝鮮半島出身者の遺骨調査・返還については、3度にわたる政府間協議を開き、民間徴用者遺骨の実地調査、祐天寺保管の軍人・軍属遺骨の返還の早急な実施に向け調整を続けている。
(2)在サハリン「韓国人」支援については、永住帰国・一時帰国支援の着実な実施に加え、平成17年9月には韓国帰国者のための安山療養院の開所式が催された。
(3)在韓被爆者問題については、在外公館での健康管理手当支給申請の受付を平成17年11月30日より開始した。
(4)また、歴史共同研究については、平成17年6月の日韓首脳会談において第2期日韓歴史共同研究の立ち上げに合意した。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 未来志向の日韓関係を更に発展させていく上で、韓国国民の過去を巡る心情を重く受け止めつつ、日韓の過去に起因する諸問題に人道的観点から誠実に対応していくことは不可欠である。今後も、諸問題の解決へ向けた進展を得られるよう、更なる外交努力が必要である。

事務事業名:日韓間の懸案への対応

事務事業の概要
 竹島問題、日本海呼称問題等の日韓間の懸案に対し、我が国として主張すべきは主張しつつ、一部の問題における日韓間の立場の相違が日韓の友好協力関係全般を後退させることのないよう、大局的な観点から問題の平和的解決を図る。
有効性
(具体的成果)
 平成17年2月の島根県議会の「竹島の日」条例の上程を機に、盧武鉉大統領の3・1演説、NSC常任委員会の声明等、竹島問題を巡って日韓関係は急速に悪化した。我が国は、大臣談話を発出し、竹島の領有権を巡る我が国の立場は一貫していることを明確にした上で、韓国国民の過去を巡る心情を重く受け止め、和解に基づく関係構築を呼びかけた。その後、4月、5月の外相会談及び6月の首脳会談を経て、日韓関係は平静へと向かった。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 竹島問題や日本海呼称問題は、日韓双方の感情的対立を煽り、大局的な観点に立った未来志向の日韓関係の発展を阻害するおそれがあり、これらの問題に対する大局的かつ冷静な対応は日韓関係の発展にとり不可欠である。また、現在の盧武鉉政権の対日政策、竹島問題への対処方針に照らせば、今後再び竹島問題を巡って日韓関係が悪化するおそれがあり、更なる外交努力を傾けていくことが必要である。

事務事業名:経済緊密化のための各種協議の推進

事務事業の概要
 日韓FTA交渉をはじめとする各種協議を通じ、東アジアの先進資本主義国たる日韓両国の経済的結びつきを深め、両国の経済発展のみならず地域の経済発展に寄与することを目指す。
有効性
(具体的成果)
 日韓FTA交渉は平成16年11月の第6回会合以降、中断の状況であり、我が方としては、まずは交渉のテーブルに着くべきであり、交渉の中で双方の立場の相違を埋めていきたいとの立場から、韓国側に交渉再開を働きかけてきた。これに対し、韓国側は、日本側の農水産品の関税撤廃案のレベルは低すぎ、交渉再開には日本側がこのレベルを引き上げる必要があるとの立場を崩していない。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 日韓両国の経済的連携の強化は両国のみならず、地域の経済発展や安定にとって不可欠である。我が方としては、日韓EPAは東アジアの経済連携にとって重要であり、いつでも交渉再開に応じる用意があるとの考えであり、交渉再開へ向け、今後も更なる働きかけを行う必要がある。

【評価をするにあたり使用した資料】


 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
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