麻生外務大臣

釜山APEC閣僚会合の際の日韓外相会談および晩餐会
(概要)

平成17年11月14日

 11月14日、APEC閣僚会合に先立って、麻生外務大臣は、釜山にて、潘基文(パン・ギムン)韓国外交通商部長官と日韓外相会談を行うとともに、これに続いて同長官主催の晩餐会に出席したところ、やりとりの概要は以下のとおり。

1.日韓関係(総論)

(1)冒頭、潘長官より、今回お会いできて嬉しい、麻生大臣は政治家として多くの経験をお持ちであり、今後日韓関係を順調にリードしていく上で大きな指導力を発揮されることを期待している、市場経済及び民主主義を共有する最も近い隣国として、未来に向けて一生懸命一緒に仕事をできることを期待している、両国の外交当局責任者間の信頼ある協議が重要である旨述べた。また、本日、麻生大臣が空港到着直後に故・李秀賢(イ・スヒョン)氏の慰霊碑を参拝されたことに対する謝意が表明された。

(2)これに対し、麻生大臣より、APECの議長国として最もご多忙な日に外相会談を設けていただき感謝している、日韓の友好関係の促進のために外務大臣として誠心誠意頑張りたい旨述べた。

2.歴史認識

(1)潘長官より、総理の靖国神社参拝問題についての韓国政府の立場は10月の訪日の際に十分伝えたので、本日再論するつもりはない、日本の指導者がこれまでに行った謝罪及び反省の言葉を韓国国民が信頼できるようにして頂きたい旨述べた。

(2)これに対し、麻生大臣より、靖国神社への参拝については、小泉総理もご自分の気持ちは潘長官に伝えたと承知している旨述べた。

(3)また、新たな追悼・平和祈念施設の検討に関し、潘長官より、日本国内の議論の進展状況、日本政府の立場につき照会がなされたのに対し、麻生大臣より、政府としても、官房長官の下で検討している、国内でも意見が分かれている旨述べた。

3.交流

(1)麻生大臣より、国交正常化が実現した40年前当時は年間1万人であった日韓間の人の往来が現在は1日1万人以上になっている点、若い世代におけるサッカー、アニメ、J-POP、J-ファッション等の分野での活発な交流等に言及しつつ、日韓間の交流が極めて広く深くなったと実感している旨述べた。

(2)これに対し、潘長官より、日韓間の政治関係が困難な中、経済、文化、人的交流等が影響を受けずに進展していることを嬉しく思う、日韓間のいいムードを壊さないよう指導力を発揮し、いい方向に持っていくことが政治の役目と思っている旨述べた。

(3)また、韓国人に対する査証免除に関し、潘長官より、来年3月以降の査証免除の恒久化が要望されたのに対し、麻生大臣より、さらに政府内で検討を進めたい旨伝えるとともに、韓国内での犯罪対策の重要性を指摘した。

4.日韓間の過去に起因する諸問題

(1)潘長官より、過去に起因する諸問題に関し、(イ)第二期日韓歴史共同研究、(ロ)在サハリン「韓国人」支援、(ハ)戦前の朝鮮半島出身者の遺骨返還、(ニ)戦前の強制連行「被害者」認定のための資料提供、(ホ)在韓被爆者(手帳の在外申請)、(ヘ)韓国人ハンセン病患者への補償につき言及があり、我が国の積極的対応が要望された。

(2)これに対し、麻生大臣より、(イ)歴史共同研究第一回会合の年内立ち上げに目途をつけたい、(ロ)在サハリン「韓国人」に対し、人道的観点から可能な限りの支援を継続する、韓国側と共に努力する、(ハ)遺骨の調査・返還は、今月中に開催予定の第三回政府間協議にて具体的進展を図りたい、(ニ)「被害者」認定資料は、個人情報保護法による制約もあるので現実的に対応可能な方法につき検討する、(ホ)在韓被爆者に対する健康管理手当ての在外受付は11月中に開始する、被爆者手帳の在外受付は、被爆者の高齢化という事情を踏まえ、支援のあり方を引き続き検討する、(ヘ)ハンセン病患者の問題につき、外地療養施設に入所していた方々への補償を念頭におきつつ立法措置を検討している、必要な事前調査に協力してほしい旨、それぞれ説明した。

5.ハイレベルの対話

 麻生大臣より、ハイレベルの対話の継続の重要性を伝え、18日の日韓首脳会談を成功させたい、その上で12月のノ・ムヒョン大統領訪日を歓迎したい旨述べた。(先方からは特段の反応なし。)

6.北朝鮮

(1)麻生大臣より、朝鮮半島に核とミサイルが存在することは同半島の安定にとって非常に不安定な要素を与える、六者会合を早期に再開し、次回会合で北朝鮮の核廃棄へ向けて具体的成果を収めることが北東アジア全体の安全に重要な意味を持つ、日韓及び日米韓が協調して進めていくべき旨述べた。

(2)これに対し、潘長官より、次の六者会合では、共同宣言の履行計画の議論を実質的に進展させたい、日本が提案した3つの交渉分野(トラック)で進めていくとの考えは韓国の立場と相互補完的な案であり、お互いによく検討していきたい旨述べた。

(3)また、日朝関係に関し、潘長官より、六者会合の再開を契機として日朝政府間対話が再開されたことを歓迎し、進展を期待・支持する旨述べた。

7.東アジアにおける地域協力

(1)潘長官より、APECに続き、12月にASEAN+3、東アジア首脳会議もあるので、日本と協力し、成功させたい、日中韓協力枠組みも大事である旨述べた。

(2)これに対し、麻生大臣は賛意を示し、12月のマレーシアの会議での日中韓外相会議の開催に向け、議長国である中国も含めてよく調整していくことで一致した。さらに麻生大臣より、東アジア共同体については、日韓は民主主義、市場経済という共通の価値観を有しており、同じ基盤に立って地域協力を一層進めていきたい旨述べた。

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