報道発表

ラオスに対する無償資金協力に関する書簡の交換

平成31年3月20日

1 本20日(現地時間同日),ラオス人民民主共和国の首都ビエンチャンにおいて,我が方引原毅駐ラオス大使と先方センペット・フンブンニュアン外務副大臣(H.E. Mr. Sengphet HOUNGBOUNGNUANG,Vice Minister of Foreign Affairs of the Lao People’s Democratic Republic)との間で,ラオスに対する計4件の無償資金協力(合計9.97億円)に関する交換公文の署名及び書簡の交換が行われました。

2 対象案件の概要は,それぞれ以下のとおりです。

(1)浄水場の機能改善等による,持続可能な都市環境の整備に向けた支援(無償資金協力「ルアンパバーン市上水道拡張計画(詳細設計)」)【供与限度額:9,700万円】
 世界遺産地区を抱えるラオス北部の都市,ルアンパバーン市は,配水管網が古いもので建設後50年を経過しており漏水率が高く,同地域への給水を担うナムカン浄水場でも,原水濁度の高い雨期には十分な浄水処理ができない問題を抱えています。一方,同市を訪れる観光客は2015年の年間約60万人から年々増加しており,地域の水需要も1日当たり2015年の約27,000m3から2025年には33,100m3(日平均配水量)に増加する見込みです。そのため,給水率の増加のみならず,安全で安定的な水を持続的に供給するため,送配水管の更新や浄水場機能の改善が喫緊の課題となっています。
 この協力では,総延長約60kmの配水管の新規敷設・更新,45基の消火栓新設,約2,400か所の給水管の切替,ナムカン浄水場における取水・浄水・排水処理施設の新設等を行い,ルアンパバーン市の水供給能力の向上を図っていきます。
 この計画の実施により,給水人口が2017年実績の約58,800人から,事業完成3年後(2025年)には約70,800人に増加するとともに,ルアンパバーン市の持続可能な都市環境整備を通じた同国の経済・社会インフラ整備に寄与することが期待されます。

(2)水産関連施設等の整備による,水産業の持続的な発展及び水産物の安定的供給に向けた支援(無償資金協力「経済社会開発計画(水産分野)」)【供与額:2億円】
 ラオス国民にとって水産物は,動物性タンパク質摂取量の約半分を占める重要な栄養源となっており,一人あたり年間水産物消費量も,約8kg(2000年)から約14kg(2010年)と増加傾向にあります。また,最近では自給的漁業という観点に加え,販売収入による生計向上や雇用創出という観点でも水産業は重要な役割を担っています。特に,ビエンチャンをはじめとする都市近郊地域では,灌漑池や河川流域等で商業養殖が発展しつつあり,ラオスの養殖生産量も93,000トン(2002年)から128,000トン(2010年)へと拡大しており,水産業の強化は,同国の栄養改善のみならず貧困削減の視点からも喫緊の課題となっています。
 この計画では,水産関連機材等(稚魚ふ化システムや水質検査キット等)を供与することにより,ラオスの水産業の持続的な発展及び水産物の安定的供給の改善・強化を図り,もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与することが期待されます。

(3)テロ・治安対策機材の整備による,治安維持管理能力の強化に向けた支援(無償資金協力「経済社会開発計画(治安対策分野)」)【供与額:2億円】
 ラオスは,ASEAN諸国の中で唯一の内陸国であり,タイ,ベトナム,カンボジア,ミャンマー及び中国の5か国と国境を接するなど,地政学的に極めて重要かつ地理的利便性が高い場所に位置しています。しかしそれゆえに,テロ,違法薬物取引及び人身売買等の越境犯罪の拠点又は通過点とされるリスクが常に内在しています。ラオスを訪問する旅行者の数についても,2016年は約420万人以上と,10年前(2007年)の約160万人と比較すると,2.5倍以上増加しており,今後もこうした人や物の交流は加速化していくことが予想されます。
 一方で,ラオスの出入国管理の要を担う治安維持省は,財政難の影響もあり,テロリストや犯罪集団等を水際で阻止するための出入国審査用システムや機材の導入が困難な状況にあります。国境におけるテロ等の越境犯罪の水際対策が実効性をもって行われていないことは,その隙に乗じてテロリスト等が出入国を図るとともに,資金,武器その他の禁制品が国内外に密輸入される危険性を常にはらんでいることを意味しており,この事態はラオス国内のみならず周辺国の平和と安定にとって重大な問題です。
 この計画では,テロ対策や治安維持の強化に資する機材を供与することにより,ラオスの治安維持管理能力の改善と強化を図り,もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与することが期待されます。

(4)石油製品・鉄鋼製品等を供与することによる,ラオス政府の財政改善に向けた支援(無償資金協力「経済社会開発計画」)【供与額:5億円】
 ラオスは,鉱物資源,水力発電分野における成長などを背景として経済発展を遂げている一方で,2024年までの後発開発途上国(Least Developed Country : LDC)からの脱却に向けた解決すべき問題は山積しています。なかでも,財政の改善は喫緊の課題のひとつです。ラオス政府は,2013年にIMFの指摘(財政規律,徴税強化,マクロ経済安定)を受け,マクロ経済委員会を設置し,現在まで,徴税強化,優先度の低い公共事業の中止,公務員給与増額の停止,生活諸手当の凍結,外貨準備高の改善等,具体的な施策を進めています。しかし,2017年には対外債務の超過によりIMFのリスク評価が「高い」と評価されるなど,同国のマクロ経済は予断を許さない状況となっています。
 この計画では,石油製品・鉄鋼製品等を供与し,ラオス政府がそれらを活用することにより,同国の財政改善を図り,もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与することが期待されます。

3 これらの案件は,平成28年9月の「日・ラオス首脳会談」において安倍総理大臣から発表された「日本・ラオス開発協力共同計画」を具現化するものです。

[参考]ラオス人民民主共和国基礎データ
 ラオス人民民主共和国は,面積約24万平方キロメートル,人口約649万人(2015年,ラオス統計局),一人当たり国民総所得(GNI)は2,270ドル(2017年,世界銀行)。


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