ラオス人民民主共和国

平成28年9月6日

1 基本認識 

 ASEAN経済共同体(以下、「AEC」という)が発足し,経済統合が進む中,ASEAN唯一の内陸国であるラオスの発展は,ASEAN統合の進展と共にある。そしてラオスの安定と繁栄は,ASEANの一体性を確保し,地域全体の平和と繁栄を確保するために必要不可欠である。

 こうした認識を踏まえ,ラオスは,第8次国家社会経済開発5か年計画(the National Socio-Economic Development Plan VIII,計画年:2016年から2020年)(以下,「第8次NSEDP」という)に着手し,「3つの成果(成果1 経済:強い経済基盤と経済的脆弱性の低減,成果2 社会:人材開発,貧困削減,質の高い教育・医療へのアクセス,ラオス特有の文化の保護・発展,成果3 環境:グリーンかつ持続的な自然資源と環境の保護と活用,自然災害や気候変動への備え)」を掲げ,この成果の実現を通じて,SDGs達成に向けた持続可能な発展を確保し,2020年までのLDC脱却という目標を達成する国家計画を策定した。日本とラオスは両国間の互恵的な「戦略的パートナーシップ」に基づき,第8次NSEDPの目標達成のため共に力強く取り組んでいく。

 「3つの成果」を達成するためには,I.周辺国との連結性強化,II.産業の多角化・中小企業の発展・産業人材の育成による競争力強化,及びIII.環境・文化保全に配慮し均衡の取れた地方・都市開発を通じた格差是正,の3点が,ラオスにとって最も重要な課題となる。日本は,これら課題に果敢に取り組むラオスに対して継続的に協力していく強い決意を表明する。

 両国は2015年7月の第7回日メコン首脳会議にて採択された「新東京戦略2015」も踏まえつつ,この共同計画を通して,以下の方針で取り組んで行くことを確認する。

2 共同計画の目指すラオスの将来像

 本共同計画においては,以下の諸点を実現することにより,2020年のLDC脱却達成,SDGs達成に向けた進展を図る。

  • 陸路・空路がASEAN基準・国際基準を満たす,自然災害に対して強靱な交通網として整備される。それにより,安全・円滑なヒト・モノの流通が確保され,メコン地域の流通ハブの基礎が形成される。
  • 豊富な水資源を活用した電源開発の促進及び電力網の整備により,産業インフラが持続可能な形で整備され,産業競争力が高められる。あわせてメコン地域への電力輸出を促進し,ラオス及び周辺国の経済発展と国内の財政強化に寄与する。
  • 産業人材育成の環境が整備され,グリーン成長に貢献する多様な企業の起業及び競争力の強化が図られる。投資・ビジネス環境が整備され,民間企業の活動の活性化が図られる。
  • かんがい農業が可能となり,安全かつ各地域色のある農産物が生産され,コールドチェーンによって新鮮・安全に内外の市場に提供される。それにより、多くの国民が従事する農業が産業として確立し、農家所得が向上する。
  • 都市及び地方の双方で保健・医療・教育・上下水道・電気・公共交通といった公共の社会基盤が,均衡のとれた形で整備され,全土にわたってグリーン成長が促進される。それによりそれぞれの地域での特色ある文化・生活の基盤が確保される。

3 協力の三本柱

 上記を実現させるため,以下を協力の三本柱として展開する。

I 周辺国とのハード・ソフト面での連結性強化

 ラオスは,第8次NSEDPにおいて,強い経済基盤と経済的脆弱性の低減(成果1)を実現するため,地域及び国際社会における統合を推進することとしている。

 日本は,ラオスの持続可能な経済発展に資するために,「質の高いインフラパートナーシップ」及び「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」に基づき,「日メコン連結性イニシアティブ」の下,周辺国との連結性を強化するためハード・ソフトの両面で質の高い支援を実施する。

 以上を踏まえ、両国は、次に掲げる協力を実施する。

  • AEC発足により,メコン地域におけるラオスの内陸物流が益々重要な役割を担うことを踏まえ,次のプログラムに共同で取り組む。
    • メコン地域の交通のハブとなるための道路・橋梁インフラの整備
    • メコン地域の物流ネットワーク拠点となるための制度・インフラの整備(通関改善,国境チェックポイント等)
  • 日本の支援によりビエンチャン国際空港の拡張工事が進んでいることを踏まえ,ラオスの空港整備について,中長期的な観点から次のプログラムに共同で取り組む。
    • 空の連結性強化のためのビエンチャン国際空港の整備・運営
    • 地方空港における安全運行体制の整備
  • ラオスの豊富な水資源を最大限に活用し,電力の安定供給によって産業発展の基盤整備を促進するために,次のプログラムに共同で取り組む。
    • メコン地域の「バッテリー」として期待されるラオスの電源・送電網整備

II 産業の多角化と競争力強化,そのための産業人材育成

 ラオスは,第8次NSEDPにおいて,強い経済基盤と経済的脆弱性の低減(成果1)を実現するため,官民の労働力の能力開発,国内企業の国内外における競争力強化等を推進することとしている。また,社会開発の推進(成果2)を実現するため,食料安全保障の確保及び栄養状態の改善等を進めることとしている。

 日本は,「産業人材育成協力イニシアティブ」及び「イノベーティブ・アジア」を掲げ、ラオス産業の人材基盤整備と競争力の強化を支援するとともに,ラオスの高度人材が日本のイノベーション環境を体感し,両国のイノベーションに貢献するための施策を講じる。

 以上を踏まえ、両国は、次に掲げる協力を実施する。

  • 産業を多角化し、競争力を強化するためには,産業人材育成に包括的に取り組む必要がある。また,育成された人材の就労環境整備のために,産業政策の策定,中小企業の起業推進と競争力強化,海外投資誘致の促進等を進める必要がある。そのため次のプログラムに共同で取り組む。
    • 理数科等の基礎教育の強化、高等・職業訓練教育の拡充
    • 投資環境整備,産業政策策定能力向上及び官民対話の推進
    • 中小企業の起業・育成に必要な金融アクセス改善
  • 農業はラオスの主要産業の1つであり,周辺国に有望な市場を有し,肥沃な農地から潜在的に高い開発ポテンシャルを有している。農業を競争力ある産業として確立させ、食料安全保障を確保するために,農業の基盤整備は優先事項となっている。日本が有する農業振興に係るハード・ソフト両面の経験・ノウハウを活かし,次のプログラムに共同で取り組む。
    • 商品作物振興のためのかんがい農業,安心・安全なクリーン農業等の振興
    • 周辺国市場の水準に合致するフードバリューチェーンの構築

III 環境・文化保全に配慮した均衡のとれた都市・地方開発を通した格差是正

 ラオスは,第8次NSEDPにおいて,社会開発の推進(成果2)を実現するため,生活環境の改善を通した貧困削減,質の高い教育・保健医療,社会福祉へのアクセスの改善,伝統や文化の保全を図ることとしている。また,環境保全(成果3)を実現するため,持続的な自然資源管理を推進することとし,グリーン・クリーン政策を掲げている。日本は,都市開発,質の高い社会サービス,環境保全と開発の両立について多くの経験とノウハウを有している。

 これら観点から,次に掲げる協力を実施する。

  • 首都ビエンチャン及び地方都市における急速な都市開発・人口増に対応するため,グリーン成長に基づき,都市環境整備,景観・文化の保全,市民への公共サービスの拡充のため,次のプログラムに共同で取り組む。
    • 首都交通の開発戦略の策定を含むバス等の公共交通手段の整備
    • 上水道など公共基盤インフラ整備
    • 世界遺産都市であるルアンパバーンを含む地方都市における持続的な開発
  • メコン河及びその流域の保全が,ラオスのみならず,メコン地域全体のグリーン・クリーンな発展に裨益することを踏まえ,次のプログラムに共同で取り組む。
    • メコン河流域の森林保全等の環境保全と持続的開発
  • SDGsの達成,2020年までのLDC脱却に必要な,貧困削減及び人的資源開発指数の改善のため,また,2025年のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けて,次のプログラムに共同で取り組む。
    • 保健医療や教育分野等での質の改善,国内格差是正

IV 横断的な課題

 これら協力の三本柱の着実な実施を確保するためには,マクロ経済の安定化や財政の安定,開発計画と予算編成の整合,ガバナンスの強化等が不可欠である。ラオス政府は,第8次NSEDPにおいて,マクロ経済安定化のメカニズムの改善,財務計画の強化,憲法及び法律の厳格な実施(法の支配に基づく国家発展)を重要項目としている。かかる観点から,協力の三本柱を補完するものとして,次の事項に共同で取り組む。

  • マクロ経済,財政安定のために、歳入強化に取組み,起業家を含む民間セクターや国民の通関及び納税への意識を向上・普及するとともに、開発予算の計画的な管理・モニタリングを強化する。
  • 法の支配の推進のために必要な法律を策定し、普及・執行能力を強化するとともに、サムサーン政策のもと適切に開発事業を遂行するための中央・地方行政能力の向上を図る。
  • 他の開発パートナーと連携しながら,不発弾除去に必要な施設や機材を整備,関連組織の能力向上を図る。


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