外務大臣談話

平成30年12月14日

1 本14日(現地時間13日),世界貿易機関(WTO)紛争解決手続に基づいて,我が国及びEUがブラジルに対して申立てを行っていた紛争案件「ブラジル-税制恩典措置」に関し,WTO上級委員会は,ブラジルの自動車政策及び情報通信分野の税制恩典措置はWTO協定に非整合的であり,是正を勧告するとの報告書を発出しました。

2 我が国は,上級委員会が我が国の主張を認める判断を示したことを評価するとともに,本件措置のような内外差別的で市場歪曲的な税制恩典措置がWTO協定上認められないことを上級委員会が改めて確認したことは,我が国が重視する自由で公正な多角的貿易体制を強化する上で意義深いものと考えます。

3 今回の報告書を受け,ブラジルがWTO協定に整合しないと認定された措置を誠実かつ速やかに是正することを求めます。

[参考]本件の経緯と概要

(1)近年,ブラジルは,一定の要件を満たす自動車メーカー等に対して,ブラジル国内生産・投資,国産部品の比率等に応じた減税を認める措置を導入,維持。また,情報通信分野においても自動車分野同様の措置を実施するとともに,輸出企業に対しても一定の輸出実績等を条件に連邦税の猶予,免除措置を導入,維持している。

(2)2015年7月,我が国はブラジルに対してWTO協定に基づく協議を要請。同年9月,我が国は,WTOにパネル設置要請を行い,同月パネルが設置された。

(3)2017年8月,パネル報告書が公表された。同報告書は,我が国の主張を認め,ブラジルによる税制恩典措置がWTO協定に非整合的であるとして,措置の是正を求めた。

(4)2017年9月,ブラジルは,上級委員会に申立てを行った。同月,我が国及びEUも一部の論点につきその他上訴を行った。

(5)今般発出された上級委員会報告書は,ブラジルの自動車政策及び情報通信分野における税制恩典措置について,内国民待遇義務(GATT第3条2,同第3条4,TRIMs協定第2条1)等に違反するとし,これらの措置の一部について,禁止される国産品優先補助金(補助金協定第3条1(b))に該当すると判断した。一方,輸出企業に対する税制恩典措置については,禁止される輸出補助金(補助金協定第3条1(a))に該当するとしたパネルの判断を覆した。

(6)WTO紛争解決制度においては,紛争当事国はパネル報告書について上級委員会に申立てをすることができる(いわゆる二審制)。上級委員会報告書はWTO紛争解決了解の規定により,加盟国への送付の後30日以内に開催されるWTO紛争解決機関(DSB)の会合において採択され,紛争当事国は,これを無条件で受諾することとなる(上級委員会報告書に関する更なる申立てはできない)。


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