外務大臣談話

平成29年3月24日

1 本24日(現地時間24日),スイスのジュネーブで開催された人権理事会において,我が国及びEUが共同提出した北朝鮮人権状況決議が無投票採択されたことを高く評価します。

2 本年の決議は,2014年2月に公表された「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会」の最終報告書の内容を反映させた昨年の人権理事会決議を基に,北朝鮮の組織的かつ広範で深刻な人権侵害を最も強い表現で非難し,北朝鮮に対し,拉致問題を含む全ての人権侵害を終わらせるための措置を早急にとることを要求しています。また,この決議は,北朝鮮による核・ミサイル開発への資源投入が人権・人道状況に与える影響への深刻な懸念を表明した昨年の国連総会決議を認識するとともに,北朝鮮の事態の国際刑事裁判所(ICC)への付託の検討や人権侵害に最も責任を有するとみられる者を効果的に対象とするための制裁の更なる検討等を通じて,国連安全保障理事会が適切な行動をとることを促す,昨年の国連総会決議を歓迎しています。

3 さらに,北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に重点的に取り組む専門家グループの勧告を実施するため,ソウルにある現地事務所を含む国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の機能を強化することとしています。

4 本年の決議が,無投票採択されたことは,拉致問題を始めとする北朝鮮の人権侵害についての国際社会の強い懸念の表れです。我が国は北朝鮮に対し,この決議に示された国際社会の声を真摯に受け止め,拉致問題の早期解決や国際社会との協力に向けた具体的な行動をとるよう,引き続き強く求めていく考えです。

(参考)

(1)採択結果

投票要求は行われず,無投票で採択された。人権理事国であるベネズエラ,キューバ,ボリビア,中国がコンセンサス採択からの離脱を表明した。

(2)人権理事会における北朝鮮人権状況決議(於:ジュネーブ)

 我が国とEUは,毎年3月の国連人権理事会に,北朝鮮の人権状況の改善を求めるとともに,国連北朝鮮人権状況特別報告者のマンデートを延長する決議を共同で提出してきており,今回で10年連続10回採択。

 昨年3月の人権理事会においては,北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に重点的に取り組む独立した専門家によるグループの設置等を含む決議案を提出し,無投票採択された(キューバ,ベネズエラ,中国,ロシア,エクアドルが決議から離脱)。
 人権理事会は47か国の人権理事国から構成され,任期3年。連続して2期まで理事国を務めることが可能。地域別の選挙で,毎年約3分の1の国が改選される。現在,我が国は人権理事国。

(3)北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に取り組む専門家グループ

 北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に取り組む専門家は,2016年3月の人権理事会で採択された北朝鮮人権状況決議に基づき,指名された。トマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権状況特別報告者のほか,ソーニャ・ビセルコ氏(セルビア・ヘルシンキ委員会代表,元北朝鮮における人権に関する国連調査委員会委員)及びサラ・ホサイン氏(バングラデシュ最高裁判所法廷弁護士)により構成。活動期間は2016年9月からの半年間。
 同グループは,本年3月の人権理事会において,安保理による北朝鮮の事態の国際刑事裁判所(ICC)への付託の検討等を含む,北朝鮮における人権侵害に係る説明責任を追及するための方策を包括的に記載した報告書を提出した。

(4)国連総会における北朝鮮人権状況決議(於ニューヨーク)

 我が国とEUは,国連総会(第3委員会)に,北朝鮮の人権状況の改善等を求める決議を共同で提出してきており,昨年12月で12年連続12回目の採択。
 昨年12月の国連総会本会議では,北朝鮮が反論ステートメントを実施したものの,投票要求を行わず,コンセンサス採択された。北朝鮮のほか,ロシア,シリア,キューバ,イラン,中国,ベネズエラがコンセンサスを離脱した。国連全加盟国(193か国)が投票権を有する。


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