談話

平成26年11月19日

1 本19日(現地時間18日),ニューヨークで開催中の国連総会第3委員会において,我が国及びEUが共同提出した北朝鮮人権状況決議が,過去最多の62か国の共同提案国を得て,投票に付され,賛成111票で採択されたことを高く評価します(反対19票,採択は10年連続10回目)。

2 本年の決議は,これまで国連総会第3委員会において採択された北朝鮮人権状況決議よりも強い内容となっています。同決議は,国連人権理事会で設置された「北朝鮮における人権に関する調査委員会(COI)」が本年2月に発表した報告書及び,本年3月に同理事会にて賛成多数で採択された北朝鮮人権状況決議の内容を踏まえたものとなっています。具体的には,北朝鮮の組織的かつ広範で深刻な人権侵害を非難するとともに,「人道に対する罪」に言及し,更に,安保理に対し,北朝鮮の人権状況の国際刑事裁判所(ICC)への付託の検討を含む適切な行動をとるよう促しています。

3 今回の投票では,本決議案の投票前に,決議案の修正提案が出されるなどの,例年にない動きも見られました。しかしながら,それでもなお,これまでの国連総会第3委員会での最多賛成票(2011年,112票)とほぼ並ぶ,賛成票を得て採択されたことは,拉致問題をはじめとする,北朝鮮の人権侵害についての国際社会の強い懸念の表れです。我が国は,拉致問題の早期解決を含めた北朝鮮の人権状況の改善を強く期待するとともに,国際社会とも協力して,北朝鮮に対し具体的な行動をとるよう引き続き強く求めていく考えです。

(参考)

1 投票結果
 賛成111票,反対19票,棄権55票で採択。共同提案国は,我が国,EU諸国,米,加,豪,NZ,韓国,ミクロネシア,トルコなど62カ国。国連総会第3委員会メンバーは国連全加盟国(193か国)。

2 本決議は,今後12月中下旬の国連総会本会議で改めて採決に付される予定。

3 北朝鮮における人権に関する調査委員会(COI)

(1)概要
 拉致問題を含む北朝鮮の人権状況全般に係る人権侵害を調査するため,2013年3月の人権理事会における決議で設置が決定。マイケル・カービー氏(委員長,元豪州連邦最高裁判所判事),マルズキ・ダルスマン氏(北朝鮮人権状況特別報告者,元インドネシア検事総長)及びソーニャ・ビセルコ氏(セルビア・ヘルシンキ人権委員会(NGO)代表)の3名で構成。活動期間は1年。報告書を作成し,2014年3月の第25回人権理事会に提出した。
 同調査委員会は,2013年8月27日から9月1日まで,調査のため訪日。日本滞在中は,総理及び外務大臣を表敬した他,公聴会による北朝鮮の人権状況についてのヒアリングを実施。また,我が国関係省庁からも,拉致問題を中心として,合同で同委員会に説明を行った。

(2)最終報告書
 本年2月17日公表(3月17日提出)。北朝鮮における深刻な人権侵害を,拉致問題を含む複数の分野に亘り,包括的に詳述。人権侵害を,「人道に対する罪」に該当すると断定し,北朝鮮に具体的な取組を勧告するとともに,国際社会や国連にもさらなる行動を求めている。拉致問題についても,その事実を記載するとともに,拉致及び拉致被害者の置かれた状況は,現在も進行中している人道に対する罪と断定し,北朝鮮に対し,拉致被害者に関する情報提供と被害者本人及びその子を帰国させるよう勧告。

4 国連人権理事会で採択された北朝鮮人権状況決議(Resolution on the situation of human rights in the DPRK)

 我が国とEUは,毎年3月の国連人権理事会に北朝鮮人権状況特別報告者のマンデートを延長する決議を共同で提出してきた。しかし,度重なる国際社会の懸念表明にもかかわらず,北朝鮮の人権状況に改善が見られないことを踏まえ,昨年2013年3月の第22回人権理事会においては,新たに調査委員会を設置する文言を含む決議を提出し,コンセンサス採択された(ただし,ベネズエラは,事後にコンセンサスから離脱)。
 本年は,COIが人権理事会に提出した報告書の内容を踏まえ,安保理における対応の慫慂や現地ベースのフォローアップ拠点設置等を含む決議を提出し,これが,賛成票30票,反対票6票(キューバ,ベネズエラ,ロシア,中国,パキスタン,ベトナム),棄権11票の賛成多数で採択された。同決議の採択自体は,7年連続7回目。人権理事会理事国(47か国)のみ投票。


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