グローカル外交ネット

令和幕開けからコロナ禍へと時代の転換点に立ち会いし研修員が綴るストーリー

令和4年4月1日

外交実務研修員 井上 雅博
(奈良市から派遣)

1 はじめに

 「奈良市政120周年を迎え、奈良市初の外務省派遣者として参りました。」こう挨拶しながら地方連携推進室をはじめ、関係部署へ挨拶に回らせていただいたことが遥か昔のことのように。そう感じるほどに密度濃くあった地方連携推進室での日々。3年間の研修を終える今、数多の貴重な体験と幾多の印象深き事象が幾重にも打ち寄せる波のように思い起こされます。
 地方連携推進室は外務省の比較的新しい部署で2006年8月に設置されました。「地方」と冠する通り、業務は日本全国を対象とし、更に外務省として言うまでもなく世界各国・地域も対象です。外務省は地方自治体・団体等を重要なパートナーであると位置づけ、その国際的取組を支援すべく地方との連携を推進しています。私の実感として、地方連携推進室は、日本の地方から世界へ、世界から日本の地方へと双方向のベクトルのつなぎ目に立ち、様々な形で連携の機会を創出し、また連携促進の潤滑油的役割を果たすなどし、常に外務省として取り組むべき地方連携の意義やあるべき姿を思考しながら、留まることなく重要な役割を脈々と、なおかつ壮大に担い続けてきています。その先にはオールジャパンでの総合的外交力の強化につなげることが目指されています。地方連携推進室はそうした姿勢を明確に体現して取り組んでいることから、地方自治体側からの相談や連絡も多くあり、コロナ禍以前であれば、毎日のように自治体幹部等の来訪を受け、自治体の国際的取組の説明が行われたり、アドバイスを求められたりしていました。その一方で室員が地方へ出張して意見を交わす機会も多くあり、嵐のような日々であった記憶が残ります。コロナ禍となり、そうした人の動きがパタリと止みましたが、地方連携業務の広範な領域に変わりはなく、少ない室員人数で全力で取り組む体制にも変わりはありません。地方連携推進室初日から感じたことですが、職員皆様が様々な案件を同時並行で凄まじきスピードで進められる姿には圧倒され、更には、職員皆様がまるで人生を二周も三周もされたかのように豊富な経験に裏打ちされた着実なる予見をもって瞬時に最適解を導き出される光景が幾度となく見られました。その度にしびれるように感銘を受け、そうした感覚をも伴った学びが自身の肌感覚に残ったことも外交実務研修員として研修を受けさせていただいたことの価値深さであると思っています。

2 地方連携推進室で携わった業務について

(写真1)野外で集合写真 駐日外交団鹿児島県視察ツアー (桜島視察)
(写真3)室内での様子 駐日外交団秋田県鹿角市視察ツアー(茜染体験)

 私は1年目に総務班に所属し、主にホストタウンに関する業務に携わりました。東京2020大会が1年後に迫る中、内閣官房オリパラ事務局と連携し、大会へ出場する世界の国・地域と日本の自治体との間でホストタウン提携を行う際に、提携が円滑に進むように、在外公館へ側面支援を依頼するなどといった調整業務に明け暮れていました。在外公館が果たす役割の大きさに触れられたことはもちろん、世界の国・地域に在外公館を有する外務省が、太陽が沈まない職場と言われる所以を実感しました。ホストタウン業務から派生した業務も多く、中でも中東・アフリカ地域駐在大使が外務省内講堂に一堂に会する大使会議を傍聴したり、横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)でのホストタウンイベントに出席したことが印象深く、外交の場の雰囲気を味わえたことも自身の世界観が大きく広がる契機となりました。(当日の模様をこちらで紹介しています
 2年目と3年目は事業班に所属しました。まさに地方の魅力を世界へPRし地方と世界をつなぐ機会を創出する様々な事業に携わりました。何よりも大きかったのが、駐日外交団の地方視察ツアーに二度携わったことです。一度目は、鹿児島県と共催し実施したツアー(当日の模様をこちらで紹介しています)。コロナ禍前のことです。二度目は秋田県鹿角市と共催し実施したツアーです(当日の模様をこちらで紹介しています)。こちらはコロナ禍にありましたが、全国的に感染状況が落ち着いた間隙を捉え、対策をとって実施したものです。こうした地方の魅力を世界へPRする際に、大きなキーとなるのが駐日外交団の存在です。大使をはじめとする駐日外交団が有する発信力には大きなインパクトが包含され、地方の魅力が本国へ伝えられることで、地方産品の海外展開や将来の地方へのインバウンド促進が飛躍的を図られる可能性を秘めています。実際にそれぞれのツアーにおける各訪問先での歓迎は熱烈で、地方に相当なる大きなインパクトがもたらされたことは如実に感じ取れました。本物を見抜く駐日外交団に地方の魅力が評価されることは地方の自信につながり、海外への魅力発信の強化に弾みが付けられる大きな契機となることが身をもって感じられた次第です。
 また携わった事業の大きなものとして、外務省の飯倉公館で開催する外務大臣と自治体首長との共催レセプションです。こちらは共催自治体が誇る観光や食や伝統工芸や伝統芸能などを駐日外交団を中心とする参加者へPRする形です。駐日外交団の地方視察ツアーは、実際に地方へ訪問するという形のため参加人数は限られますが、本レセプションは大多数の参加者に対して一夜にして一気にPRが行えます。コロナ禍前に、宮城県、奈良県、岩手県と3回のレセプション開催に部分的に携わることができました。まさに地方と世界がつながる場が創出されている状況を具に見て感動を覚えました。しかしながらコロナ禍となって以降、開催を目指してきたものの、2年連続で開催を見送る形となり今に至っています。コロナ禍が明けた暁には本レセプションが開催されることを願っています。
 この飯倉公館でのレセプションにおいて、外務大臣の挨拶文の準備に二度携わらせていただきました。外務大臣が地方の情景が目に浮かぶような挨拶文を読まれつつ「Is it poetic?」とアドリブで外交団の笑いを誘われた時の光景は今でも目に焼き付いています。その後は、2021年版外交青書のコラム執筆、そして毎月発行のグローカル通信の編集長を研修3年目にして担わせていただきました。

3 おわりに

(写真3)グローカル通信紙面 グローカル通信紙面

 ここまで綴ってきた外交実務研修員による体験記ですが、この記事も毎月発行のグローカル通信記事の1つのトピックスです。地方自治体の皆様及び在外公館の皆様をはじめとする皆様のご協力により毎月の紙面が彩られてきました。この1年間の掲載記事においては、特にコロナ禍でも積極的に国際的取組を推進する様子を伝える記事が多くありました。そうした記事を参考にして、地方でまた新たな国際的取組が推進されるなど巻き起こっていれば編集長冥利に尽きます。グローカル通信に全くとどまらず、多忙極める地方連携推進室の室員の皆様にはいつもいつも丁寧にご指導ご教示をいただけたことで3年にわたって貴重な経験をさせていただいたことをこの場をお借りして御礼申し上げたいと思います。
 最後の最後ですが、実はここでご紹介してきた地方連携推進室の役割をほんの一部です。地方の魅力が無限大に存在することと同じくして、地方連携推進室の役割も無限大に思われます。
 地方連携推進室が地方と世界とともに永遠ならんことを願っております!ありがとうございました。

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