グローカル外交ネット

第7回アフリカ開発会議(TICAD7)サイドイベントを通じて

令和元年10月1日

外務省大臣官房地方連携推進室

(写真1)パシフィコ横浜 パシフィコ横浜

 8月28日から30日にかけて横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)。
 アフリカ諸国の首脳等政府関係者や国際機関代表,NGO代表等のべ一万人以上の参加があり,会場となったパシフィコ横浜では随所で握手が交わされ談義花咲く活気に満ち溢れた雰囲気でした。TICAD7開催期間中,同会場において公式サイドイベントとして様々な団体主催のもとセミナーやシンポジウム,イベントが数多く開かれました。その中で今回は2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,オリパラ)のホストタウン関連イベントに焦点を当て,当日の模様を紹介します。

1 ホストタウンで繋がる日本とアフリカ

(写真2)ホストタウンで繋がる日本とアフリカの様子 ホストタウンで繋がる日本とアフリカ

 本サイドイベントは,オリパラ担当大臣出席の下,6自治体(八幡平市・長井市・南相馬市・笠間市・前橋市・三島村)首長及びホストタウン相手国関係者(ジブチ大使・ジブチ国土交通大臣・リンドウプロジェクトに取り組むルワンダ人関係者)が登壇したシンポジウムで,主に各首長から各アフリカ諸国とホストタウン登録に至った経緯や取組について紹介がされました。ホストタウン登録へ至る経緯は実に様々でしたが,ホストタウンのつながりをオリパラに限った一過性のものとせず,末永く交流を深めていきたいという思いは6首長共通であり,未来へのビジョンも含めながら熱を帯びて話が展開されました。総じてホストタウンの取組が市民にとっても,まちづくりにとっても非常に意義深く,発展の可能性が大いに秘めていることが感じられる内容でした。ここからは各自治体の特色など印象深い事柄をピックアップしてお伝えします。

【八幡平市×ルワンダ】リンドウが繋いだホストタウン

 今回の登壇者の中では唯一アフリカの産業支援による結びつきからホストタウン登録に至った事例でした。遡ること2014年,市特産のリンドウをルワンダで栽培することに挑戦し,現地へ市職員や生産者を派遣するなどし,3年がかりで成就させ,現在ではオランダの花市場に出荷できるまでの成功に至りました。この取組における結びつきを背景にしたホストタウン登録であり,これまでに自転車・陸上競技・ビーチバレー選手団の事前合宿を受け入れるなどを行ってきており,今後も交流を深める予定です。

【長井市×タンザニア】長井市民が繋いだホストタウン

 約40年前にタンザニアヘ青年海外協力隊としてタンザニアへ赴任した長井市民の青年が,現地のタンザニア人と結婚し,その後長井市で夫婦で暮らし始め,またご長男が長井市職員として現在勤務しているといったストーリー性を背景とした希有なホストタウン登録。中学生を含む市民団がタンザニアに訪問して交流したり,市主催のフルマラソンにタンザニアから選手に参加してもらうなど相互交流を深めています。特に将来両国の架け橋となり得る若い世代の交流に力を入れています。

【南相馬市×ジブチ】東日本大震災時の支援が縁の復興ありがとうホストタウン

 東日本大震災時に市へお見舞いに駐日ジブチ大使が訪問され浄財を寄せられたことへの恩返しの意を込めたホストタウン登録。市からジブチへ空手指導者を派遣したり,ジブチの子どもたちを相馬野馬追に招待するなど交流を深めています。同市長はジブチというすばらしい友人ができたことがレガシーになると確信しているとのことでした。

【笠間市×エチオピア】エチオピア人陶芸家の市民が繋いだホストタウン

 約10年前に,市在住のエチオピア人陶芸家を通じて駐日エチオピア大使との交流が生まれました。そのご縁から派生してエチオピアに消防車を寄付したり,同大使にハーフマラソンに参加してもらったり様々に交流を重ねてきており,その延長線でのホストタウン登録が成就しました。陸上競技を通じて特に中学生交流に力を入れ,また今後は市民の健康増進につながる交流の方法が模索されています。

【前橋市×南スーダン】恩返しと平和再認識のためのホストタウン

 かつて空襲で市街地を消失した同市を世界の国々が応援してくれたことに対する恩返しの気持ちと,今なお紛争等で情勢不安定な南スーダンの選手との交流から同市民に平和の尊さを再認識してもらいたいとの考えからホストタウンに登録。南スーダン選手団を市民みんなで応援する気持ちを創発し南スーダン選手受入費用の一部を支弁するためにふるさと納税を活用しています。

【三島村×ギニア】ジャンベが繋いだホストタウン

 約25年前にギニア人が同村にジャンベという西アフリカ発祥の楽器を教えに来てくれたことがギニアと繋がるきっかけ。ジャンベフェスティバルやワークショップを毎年開催するなどジャンベを通じた交流が同村で重ねられてきています。また約10年前には同村がギニアに診療所を建てるといった支援も行われました。ホストタウンとしてのスポーツ選手との交流を含め,老若男女幅広く交流が永続することを目指しています。

2 子どもたちとアフリカ ホストタウンを通じた交流

(写真3)子どもたちとアフリカ ホストタウンを通じた交流の様子 子どもたちとアフリカ ホストタウンを通じた交流

 本サイドイベントでは,アフリカ諸国のホストタウンとなっている自治体の子どもたちがパフォーマンスを交えつつ交流について発表し,温かいメッセージが相手国関係者に向けて発せられました。中には大人顔負けのフレーズも飛び出し大いに聴衆を湧かせていました。オリパラを契機としたホストタウン交流での経験が若い世代の糧となり,次代へ向けて素晴らしき国際社会が築かれていくことを期待し,今回発表された子どもたちの純粋かつ壮大な気付きを本稿の余韻とする意味合いも込め,子どもたちの言葉で締め括らせていただきます。

 「言葉は通じないが心,気持ちを通わせることできると実感。」(八幡平市の子どもたちより)
 「相手を尊重し理解する姿勢は壁を超える。」(二戸市の子どもたちより)

グローカル外交ネットへ戻る