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第39回駐日外交団の地方視察ツアー(秋田県鹿角市)
赤茶色広がる晩秋風情に一層掻き立つ縄文情緒。大地わたる冷涼な秋風に想う古代の息吹。タイムトラベルさながら遥々、4000年来の光景を今に残す秋田県北東部の鹿角の地へ到来した駐日外交団一行。颯爽と降り立つ大使方々から放たれる威厳たる眩さに、新たな黄金の物語が紡がれる予感がひしひしと。
本地方視察ツアーは令和3年11月18日から19日、外務省と秋田県鹿角市の共催で、駐日外交団を対象とした地方視察ツアーを実施し、駐日外交団12か国より14名の大使等が参加しました。同ツアーでは、今夏に世界文化遺産登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成要素の一つである縄文遺跡を訪問し、また同地方への理解を深めてもらうため、鹿角市内の伝統文化・伝統工芸を体験するとともに、鉱山史跡やスポーツ競技施設への視察が行われました。
1 祭り展示館(道の駅かづのあんとらあ)
外交団一行は、秋田県特産の比内地鶏を使用したわっぱ飯御膳を昼食にいただいた後、10台の絢爛豪華な花輪ばやし屋台を視察しました。ここでは、「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録されている花輪ばやしについての千年以上の歴史や特色などについて説明を受けました。また、迫力あるお囃子が目の前で実演され、毎年8月に開催されるお祭りを是非見に来たいと言う外交団もいました。
2 みそ付たんぽ作り体験(道の駅かづのあんとらあ)
秋田名物のきりたんぽ。鹿角市がその発祥地とされています。今回、外交団は、おにぎり状のご飯を串に刺し、きりたんぽ状に形作る工程から作業を開始し、みそを塗って炭火であぶるところまでじっくり体験しました。香ばしくできあがったみそ付たんぽの初めての味に皆さん大満足でした。
3 花輪スキー場ジャンプ台
花輪スキー場にはゲレンデコースの他に4基のジャンプ台があり、これまで国体など数々の全国大会が開催されてきています。今回は元スキージャンプ選手の所長によるご案内のもと、外交団は一番高いジャンプ台(HS86メートル)の頂上へスロープカーに乗って上がり、雄大な自然が広がる鹿角の眺めを堪能しました。頂上からふもとに戻る際には、多数の外交団が自らの希望で、ジャンプ台の斜面に沿って設置された階段状のスロープを徒歩で下りました。ダイナミックな印象深い体験になったようでした。
4 史跡尾去沢鉱山
開山1300年の歴史を持ち、主に金と銅が産出された尾去沢鉱山。外交団は鉱山の特徴や歴史についての解説を受けながら坑道を約1キロメートル歩きました。縦30メートルの坑道の上に15段の坑道が重なっているという鉱山の大規模さに圧倒されながら、坑道内の神社の存在や、鉱山内でワインが熟成されている様子なども見学し、興味が尽きない視察先になりました。
5 鹿角市長主催歓迎夕食レセプション
夜には関鹿角市長主催歓迎夕食レセプションが行われ、外交団は、市長を始め市議会議長や市職員、観光・経済団体関係者との交流を深めました。鹿角名物けいらんやかづの牛など市特産食材をふんだんに使用した料理と地酒に、外交団は大いに舌鼓を打たれたようです。会場には市のイメージキャラクターのたんぽ小町ちゃんの登場や市の四季折々の風景紹介プレゼン、高校生スキー部の競技映像紹介があり、とても充実した時間を過ごしました。
6 発荷峠展望台
秋田県と青森県にまたがる、みちのく屈指の景勝地・十和田湖を上から一望できる展望台です。11月半ばは紅葉を終えてしまう時期でしたが、今回の外交団一行の訪問を待っていてくれていたかのように紅葉が一部残り、十和田湖の群青色の湖面とのコントラストを楽しませてくれる素晴らしい景観を満喫しました。
7 道の駅おおゆ
2018年4月に隈研吾氏の設計により新たに誕生した道の駅です。秋田県産の木を基調とした温かみある明るい広々空間にて、外交団はお米や果物、蜂蜜、地酒など鹿角の新鮮な特産品を手に取り眺めながら、満足いく買い物を行いました。
8 大湯環状列石・大湯ストーンサークル館
大湯環状列石は二つの巨大な環状列石を特徴とする約4000年前の縄文時代後期の遺跡です。1931年に発見され、1956年7月に国の特別史跡指定を受け、今年7月に「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成要素の一つとして、ユネスコ世界文化遺産に登録されました。外交団は直径約52メートルの万座と、直径約44メートルの野中堂の二つの環状列石の周囲を歩いて回りながら、その構成や祭祀遺跡とされる根拠などについて解説を聞きました。大小の石が環状に配置された不思議な配置に加え、二つの環状列石のそれぞれの中心の石と日時計状組石が一直線に並ぶ配置となっていることなど謎多きことへも興味津々でした。続いて訪れた大湯ストーンサークル館では、実際に発掘された数多くの土器や土偶を見ることができ、1万年以上続いた縄文時代の文化へ理解を深めました。
9 鹿角紫根染・茜染
外交団は1300年前から鹿角に伝わる伝統の草木染である鹿角紫根染・茜染について説明を受け、丹精に染め上げられた着物などの深く鮮やかな色合いの美しさを見て感嘆の声を上げていました。続いて、鹿角紫根染・茜染研究会の皆様の丁寧なサポートをいただきながら外交団お一人お一人が自らの手で茜染ハンカチ作り体験を行いました。途中、お茶体験を挟みつつ、茜染の模様付け、下染め、花輪絞りという2時間の工程をじっくり体験し、最後に絞りを解いたときには大きな歓声が湧きました。世界に一つのオリジナル茜染ハンカチの完成に大満足でした。外交団から最後に、鹿角紫根染・茜染研究会の皆様に対して、「この伝統がこれまで守り伝えられ、そして後世へ伝えようと取り組まれていることに素晴らしさを感じ、今後も続けていってほしい」という激励の言葉が伝えられました。
鹿角でまた再会できることを願う、色鮮やかな旅の締め括りとなりました。
プログラム・訪問先
- 11月18日(木曜日)
- 祭り展示館(道の駅かづのあんとらあ)
- みそ付たんぽ作り体験(道の駅かづのあんとらあ)
- 花輪スキー場ジャンプ台
- 史跡尾去沢鉱山
- 鹿角市長主催歓迎夕食レセプション
- 11月19日(金曜日)
- 発荷峠展望台
- 道の駅おおゆ
- 大湯環状列石・大湯ストーンサークル館
- 茜・紫根染体験(コモッセ)