ODAとは? ODA予算・実績

国別援助実績
1991年~1998年の実績
[27]タンザニア


1.概説


 (1) 東アフリカのタンガニーカとその沖合いに位置する島国ザンジバルからなる連合共和国である。92年5月に革命党の一党支配から複数政党制へ移行し、95年10月の大統領・国会議員選挙の結果、与党革命党が議席の80%を獲得し、同年11月ムカパ大統領、スマイエ首相等からなる新政権が発足した。内政は安定的に推移しているが、ザンジバルにおいて、95年の大統領選挙の結果を巡る与野党間の対立が見られる。

 (2) 外交面では、非同盟主義及び反植民地主義という二大原則を掲げつつ、アフリカ統一機構(OAU)、国連等の国際場裡で積極的に活動し、また、日本等の西側諸国、東アジア諸国との関係強化に努めている。東アフリカ諸国との関係では、ケニア、ウガンダとの間で地域協力の強化に努め、96年に東アフリカ協力(EAC)を発足させるとともに、南部アフリカ開発共同体(SADC)のメンバーとして、南部アフリカ諸国での地域協力にも参画する等、重要な役割を担っている。

 (3) 経済面では、GDPの約50%、労働人口の9割を農業部門が占めている。86年以降世銀・IMFの支援を得て、投資・流通制度改革、公営企業改革、公務員の削減等の構造調整政策を実施しており、今後経済の更なる自由化、公社・公団の民営化等により製造業等の成長が期待される。93年度からは3年間の開発計画(マクロ経済、セクター別)及び予算配分計画の概要を示すRPFB(Rolling Planand Forward Budget)を導入し、毎年度当初に見直しを行い、新たな3ヶ年計画を策定している。現在は、年平均6%のGDP成長率、国営企業の民営化の継続等を内容としたRPFB(96/97~98/99年)を定めている。現在の課題として、多額の対外債務残高の返済、構造調整に伴う失業者及び貧困層への対策等が挙げられる。

 (4) 我が国との関係は従来より良好であり、貿易関係については、我が国はタンザニアからコーヒー等を輸入し(98年輸入額6,735万ドル)、同国に自動車、タイヤ等を輸出している(同輸出額7,752万ドル)。98年12月にはムカパ大統領が来日した。


(参考1) 主要経済指標等

90年 95年 96年 97年
人口(千人) 24,518 29,646 30,494 31,316
名目GNP 総額(百万ドル) 2,779 3,703 5,174 6,632
一人当たり(ドル) 120 120 170 210
経常収支(百万ドル) -558.9 -646.3 -510.9 -567.3
財政収支(百万タンザニア・シリング) -15,340 -79,916 33,927 -5,077
消費者物価指数(90年=100) 100.0 329.6 394.5
DSR(%) 32.9 17.9 18.9 13.0
対外債務残高(百万ドル) 6,447 7,447 7,412 7.177
為替レート(年平均、1米ドル=タンザニア・シリング) 195.06 574.73 579.98 612.12
分類(DAC/国連) 後発開発途上国/LDC
面積(千平方キロメートル) 883.6

(参考2) 主要社会開発指標

90年 最新年 90年 最新年
出生時の平均余命(年) 54 51(97年) 乳児死亡率
(1000人当たり人数)
102 85(97年)
所得が1ドル/日以下の人口割合(%)   5歳未満児死亡率(1000人当たり人数) 170 136(97年)
下位20%の所得又は消費割合(%) 2.4(91年) 6.8(93年) 妊産婦死亡率
(10万人当たり人数)
340(80-90年平均) 530(90-97年平均)
成人非識字率(%) 9 32(95年) 避妊法普及率
(15-49歳女性/%)
1(80-90年平均) 18(90-98年平均)
初等教育純就学率(%) 47 48(96年) 安全な水を享受しうる人口割合(%) 56(88-90年平均) 49(96年)
女子生徒比率(%) 初等教育 50 49(96年) 森林面積
(1000平方キロメートル)
336 325(95年)
中等教育 43 44(96年)


2.我が国政府開発援助の実績とあり方


 (1) 我が国は、タンザニアが、1)東・南部アフリカ諸国において指導的な役割を担い、積極的に活動していること、2)86年以降、金融部門改革、公社・公団改革等の構造調整・市場指向型経済政策を着実に推進していること、3)92年5月複数政党制を導入し、95年10月大統領・国会議員選挙を実施する等、民主化努力を推進していること、4)我が国との関係が極めて良好であること、5)具体的な開発目標を掲げ、経済社会開発のための主体性(オーナーシップ)を行っているタンザニアの開発政策は、DAC新開発戦略の趣旨に合致し、同国において新開発戦略の実施を重点的に支援しうる状況にあること、6)一人当たりGNPが210ドルと極めて低い水準にあり、援助需要が大きいこと等から、我が国援助の重点国の一つとして位置付けている。
 我が国は、タンザニアにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び97年2~3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等における政策対話を踏まえ、以下の分野を重点分野として援助を実施している。

(イ)農業・零細企業の振興のための支援
 タンザニア経済において圧倒的な地位を占めている農業・零細産業を振興するため、食糧増産のための肥料等の供与、灌漑施設の整備、農業技術の普及、零細企業振興のための適正技術の開発・普及等の協力を実施する。
(ロ)基礎教育支援
 基礎教育就学率が低下傾向にあるため、教育環境の整備、理数科教師の派遣等による教育の質の向上により就学率の回復努力を支援する。
(ハ)人口・エイズ及び子供の健康問題への対応並びにその一環としての基礎的保健医療サービス向上
 社会全体に深刻な影響を与えている人口・エイズ問題や子供の健康問題等への対応として、基礎的保健医療分野での各種協力を実施する。
(ニ)都市部等における基礎インフラ整備等による生活環境改善
 全国的に基礎インフラが不足しており、特に近年都市部においては、急速な人口増加に伴い、基礎インフラの不足等による生活環境の悪化が見られる。インフラの整備は、生活環境改善のみならず産業基盤整備という観点からも重要な課題であり、運輸、通信、電力、上水道の整備等への協力を実施する。
(ホ)森林保全
 森林喪失が急速に進んでいるタンザニアにおいて、持続可能な経済開発を達成するために、森林保全に関し協力を実施する。

 (2) 98年度までの我が国の援助累計実績は、有償資金協力は403.01億円でアフリカ域内第7位、無償資金協力は1,017.23億円で域内第1位(以上交換公文ベース)、技術協力は408.55億円で域内第2位(JICA経費実績ベース)と積極的に協力を行っている。また、98年の我が国の援助支出純額は8,337ドルでアフリカ域内第2位である。

 (3) 有償資金協力については、同国の経済状況の悪化に伴い、債務繰延べを除き、82年度以降円借款の供与は行っていない。
 無償資金協力については、保健・医療分野等の基礎生活分野を中心に、通信・放送分野、道路整備、電力供給等の基礎インフラ整備に対して協力を行っている。また、同国の構造調整努力を支援するため、98年度までに合計165億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与した。
 技術協力については、農業、工業、保健・医療等の分野で各形態により実施している。特に、キリマンジャロ州において水稲栽培等の農業開発、村落林業、中小工業開発の分野で継続的にプロジェクト方式技術協力を実施してきた。開発調査についても、農業、水供給分野等幅広く実施している。


3.政府開発援助実績


(1) 我が国のODA実績

(支出純額、単位:百万ドル)
暦年 贈与 政府貸付 合計
無償資金協力 技術協力 支出総額 支出純額
94
95
96
97
98
79.61(-)
90.21(-)
80.29(-)
36.83(-)
81.05(-)
27.06(-)
35.65(-)
29.20(-)
29.05(-)
21.81(-)
106.67(-)
125.87(-)
109.49(-)
65.88(-)
102.86(-)
0.54
0.99


-1.91(-)
-1.56(-)
-3.82(-)
-10.51(-)
-19.49(-)
104.76(100)
124.30(100)
105.68(100)
55.37(100)
83.37(100)
累計 816.25(66) 309.95(25) 1,126.20(91)  177.45 106.41(9) 1,232.60(100)

(注)(  )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。


(2) DAC諸国・国際機関のODA実績

DAC諸国、ODA NET
(支出純額、単位:百万ドル)
暦年 1位 2位 3位 4位 5位 うち日本 合計
95
96
97
日本 124.3
日本 105.7
フランス 79.6
オランダ 77.4
デンマーク 91.2
英国 67.6
ドイツ 67.2
オランダ 74.9
デンマーク 64.0
デンマーク 59.6
英国 67.3
ドイツ 59.3
ノールウェー 52.2
スウェーデン 65.2
日本 55.4
124.3
105.7
55.4
586.7
605.4
569.1

国際機関、ODA NET
(支出純額、単位:百万ドル)
暦年 1位 2位 3位 4位 5位 その他 合計
95
96
97
IDA 147.8
IDA 120.5
IDA 169.0
CEC 63.8
AfDF 54.4
CEC 63.9
AfDF 23.1
CEC 44.3
IMF 53.5
WFP 21.9
IMF 15.5
AfDF 47.8
UNDP 18.2
UNICEF 10.8
UNDP 14.9
16.1
45.6
43.2
291.0
291.2
392.2

(3) 年度別・形態別実績

(単位:億円)
年度 有償資金協力 無償資金協力 技術協力
90年度までの累計 383.34億円

(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照)

500.53億円

(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照)

200.4億円

研修員受入 955人
専門家派遣 292人
調査団派遣 924人
協力隊派遣 620人
機材供与 2,828.42万円
プロジェクト技協 8件
開発調査 28件

91 なし 63.70億円

首都圏道路網整備計画(1/4期) (8.96)
マラリア抑制計画(4/5期) (3.04)
ノンプロジェクト援助 (35.00)
食糧援助 (2.00)
食糧増産援助 (5.50)
債務救済 (4.70)
債務救済 (4.46)
草の根無償(1件) (0.05)

18.31億円

研修員受入 69人
専門家派遣 12人
調査団派遣 53人
協力隊派遣 36人
機材供与 335.7百万円
プロジェクト技協 3件
開発調査 2件

92 3.60億円

債務繰延べ (0.56)
債務繰延べ (3.04)

68.91億円

首都圏道路網整備計画(2/4期) (9.87)
ダルエスサラーム送配電網整備計画 (7.92)
養改善計画 (3.00)
ノンプロジェクト援助 (25.00)
食糧援助 (3.00)
食糧増産援助 (6.50)
食糧援助 (2.00)
災害緊急援助(洪水災害)(JICAより緊急援助物資) (0.13)
債務救済 (6.08)
債務救済 (5.32)
草の根無償(2件) (0.10)

22.67億円

研修員受入 75人
専門家派遣 35人
調査団派遣 103人
協力隊派遣 32人
機材供与 344.5百万円
プロジェクト技協 4件
開発調査 3件

93 16.07億円

債務繰延べ (8.31)
債務繰延べ (7.76)

58.23億円

首都圏道路網整備計画(3/4期) (13.33)
道路補修機材整備計画 (3.65)
ダルエスサラーム電話網改修計画 (9.79)
マラリア抑制計画(5/5期) (6.74)
食糧援助 (2.00)
食糧援助 (3.00)
食糧増産援助 (7.50)
債務救済 (6.04)
債務救済 (5.98)
草の根無償(5件) (0.20)

25.66億円

研修員受入 139人
専門家派遣 32人
調査団派遣 93人
協力隊派遣 41人
機材供与 253.1百万円
プロジェクト技協 1件
開発調査 5件

94 なし 50.56億円

中核病院医療機器整備計画 (7.94)
ザンジバルテレビ局復旧計画 (4.48)
首都圏道路網整備計画(4/4期-1) (0.89)
債務救済 (4.45)
債務救済 (2.97)
ノンプロジェクト援助 (15.00)
食糧援助 (4.00)
食糧増産援助 (8.50)
災害緊急援助(難民及び国内被災民救済) (1.80)
草の根無償(7件) (0.53)

26.19億円

研修員受入 165人
専門家派遣 43人
調査団派遣 82人
協力隊派遣 37人
機材供与 215.4百万円
プロジェクト技協 3件
開発調査 4件

95 なし 49.94億円

道路補修機材整備計画 (3.53)
キリマンジャロ州配電網整備計画 (4.37)
首都圏道路網整備計画(国債2/2期) (7.97)
ノンプロジェクト援助 (15.00)
債務救済 (3.02)
食糧援助 (5.00)
食糧増産援助 (9.50)
民主化支援 (0.50)
草の根無償(13件) (1.05)

27.79億円

研修員受入 190人
専門家派遣 39人
調査団派遣 90人
協力隊派遣 31人
機材供与 216.6百万円
プロジェクト技協 3件
開発調査 4件

96 なし 48.67億円

食糧増産援助 (9.50)
食糧援助 (5.00)
債務救済 (1.96)
ポリオ撲滅計画(1/2期) (4.05)
幹線道路橋梁改良計画 (6.25)
ダレサラム電力供給拡充計画(国債D/D) (0.45)
ダレサラム市電話網改修計画 (12.84)
カゲラ州難民居住区周辺地域給水・医療改善計画(1/2期) (7.84)
草の根無償(11件) (0.78)

31.20億円

研修員受入 174人
専門家派遣 36人
調査団派遣 120人
協力隊派遣 39人
機材供与 254.9百万円
プロジェクト技協 3件
開発調査 6件

97 なし 75.71億円

ダレサラム電力供給拡充計画(国債1/2期) (12.01)
幹線道路橋梁改良計画(国債1/2期) (4.10)
ダレサラム道路改善計画(1/2期) (10.89)
カゲラ州難民居住区周辺地域給水・医療改善計画(2/2期) (3.04)
ポリオ撲滅計画(2/2期) (2.29)
第二次ダレサラム電力供給拡充計画(詳細設計) (0.40)
ノンプロジェクト無償 (15.00)
債務救済 (6.56)
債務救済 (6.66)
ザンジバルテレビ局・テレビ番組供与 (0.50)
草の根無償(9件) (0.76)
食糧援助 (5.00)
食糧増産援助 (8.50)

34.77億円

研修員受入 208人
専門家派遣 29人
調査団派遣 98人
協力隊派遣 24人
機材供与 382.4百万円
プロジェクト技協 3件
開発調査 4件

98 なし 100.97億円

ダレサラム電力供給拡充計画(国債2/2) (7.84)
ダレサラム道路改善計画(2/2・1期) (10.68)
ノンプロジェクト無償 (15.00)
幹線道路橋梁改良計画(国債2/2) (8.05)
緊急無償テロ災害 (0.06)
債務救援 (7.94)
債務救援 (23.95)
債務救援 (5.52)
食糧援助 (5.00)
食糧増産援助 (8.00)
草の根無償(12件) (0.69)
第二次ダレサラム電力供給拡充計画(国債1/2) (8.26)

21.92億円

研修員受入 293人
専門家派遣 28人
調査団派遣 43人
協力隊派遣 24人
機材供与 271.7百万円
プロジェクト技協 3件
開発調査 2件

98年度までの累計 403.01億円 1,017.23億円 408.55億円

研修員受入 2,268人
専門家派遣 546人
調査団派遣 1,606人
協力隊派遣 884人
機材供与 5,102.3百万円
プロジェクト技協 11件
開発調査 33件

(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降
     の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
   2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
   3.66年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
     (http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/905-27.htm)

 (参考1) 98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件

案件名 協力期間
ダルエスサラーム大学医学部
結核対策
キリマンジャロ州農業開発
キリマンジャロ農業開発
キリマンジャロ州中小工業開発
キリマンジャロ州農業開発(II)
キリマンジャロ州中小工業開発(II)
キリマンジャロ村落林業計画
キリマンジャロ村落林業計画(II)
母子保健
キリマンジャロ農業技術者訓練センター
71.12~74.12
74.4~80.3
74.12~78.3
78.9~86.3
78.9~88.3
86.3~93.3
88.3~93.3
91.1~93.1
93.1~00.1
94.12~99.11
94.7~99.6

 (参考2) 98年度実施開発調査案件

案件名
地下水開発計画調査(第3年次)
ローアモシ農業農村総合開発計画調査(第3年次)

 (参考3) 98年度実施草の根無償資金協力案件

案件名
SDACHSリプロダクティブ・ヘルス・サービス計画
ムワンドヤ病院改修計画
カンガ・セカンダリー・スクール改修計画
パヒ中学校建設計画
バガモヨ県水供給計画
ゲダグル村水供給計画
セムキワ・セカンダリー・スクール建設計画
マカンバコ水供給計画
デイケア・センター改修計画
ローア・モシ灌漑プロジェクト道路網整備計画
キランガレ中学校改修計画
オリモ小学校改修計画

(地図画像)プロジェクト所在図



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