(1) 76年以降複数政党制を採用しており、81年に就任したディウフ大統領は、政策決定に野党・労組を取り込む等コンセンサス重視の政策をとっている。98年6月の国会議員選挙において、与党社会党は勝利を収めたが、2000年2月の大統領選挙をにらみ、与野党を問わず候補者間の確執が顕在化している。
内政上の重要問題となっている南部カザマンス地方の分離独立問題を巡っては、98年8月より政府軍とカザマンス民主勢力運動(MFDC)との間で武力衝突が発生しており、今後の動向を注視していく必要がある。
(2) 外交面では、旧宗主国フランスとの協調を基軸とし、先進諸国寄りの穏健な非同盟主義を基本とするほか、アラブ諸国及びイスラム諸国とも緊密な関係を有している。また、ルワンダ内戦等に際し、軍隊を派遣する等紛争解決や人道援助活動でも国際社会と歩調を合わせつつ積極的な貢献を行っている。
(3) 経済面では、落花生等農業が中心であるが、一次産品価格の低迷等により、財政赤字、国際収支赤字、対外債務問題が恒常化している。79年より世銀・IMFの支援を受けて構造調整に取組んでいるが、構造調整政策に対する国内の不満や、農業生産の低迷等の困難に直面している。94年1月の通貨(CFAフラン)切り下げ以降、政府は緊縮財政をとり、民営化等に努力した結果、観光業、漁業等を中心に経済は上向き、98年の経済成長率は5.7%、同年のインフレ率は2.0%となっている。政府は、民間主導による経済発展等を課題とする第9次経済社会開発計画(1996-2001年)を定め、民営化推進のための投資環境整備、貧困対策としての基礎教育及び医療・保健等の社会的側面への一層の配慮を目指している。
(4) 我が国との関係は従来から良好である。要人往来も活発で、我が国からは84年皇太子・同妃両殿下(当時)がセネガルを訪問し、セネガルからはディウフ大統領が88年6月(国賓)及び90年11月(即位の礼)に訪日した。貿易関係については、我が国はセネガルから水産物、燐製品等を輸入し(98年輸入額693万ドル)、同国に貨物・乗用自動車、合成繊維等を輸出している(同輸出額2,751万ドル)。
(参考1) 主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 7,428 | 8,468 | 8,534 | 8,790 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | 5,260 | 5,070 | 4,856 | 4,777 |
一人当たり(ドル) | 710 | 600 | 570 | 540 | |
経常収支(百万ドル) | -191.6 | -57.5 | - | - | |
財政収支(百万CFAフラン) | - | - | - | - | |
消費者物価指数 | - | - | - | - | |
DSR(%) | 20.0 | 16.7 | 16.7 | 15.3 | |
対外債務残高(百万ドル) | 3,732 | 3,841 | 3,664 | 3,671 | |
為替レート(年平均、1米ドル=CFAフラン) | 272.26 | 499.15 | 511.55 | 583.67 | |
分類(DAC/国連) | 低所得国/- | ||||
面積(千平方キロメートル) | 192.5 |
(参考2) 主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 48 | 51(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
84 | 70(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | 54.0(91-92年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
185 | 110(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | 3.5(91年) | 3.1(91年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
600(80-90年平均) | 510(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 62 | 67(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
5(80-90年平均) | 13(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | 48 | 58(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合 (%) | 54(88-90年平均) | 50(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 42 | 45(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
75 | 74(95年) |
中等教育 | 34 | - |
(1) 我が国は、セネガルが、1)西アフリカの中心国の一つとして政治的に大きな発言力を有しており、仏語圏アフリカ諸国の中で中心的な役割を果たしていること、2)76年以来複数政党制を採用し、アフリカ有数の民主主義国家として政情が比較的安定していること、3)79年より世銀・IMFの支援の下、構造調整・経済再建に積極的に取り組んでいること、4)人口増加率の高さ、砂漠化等多くの開発課題を抱えており、援助需要が大きいこと、5)我が国との関係も緊密で我が国の対西アフリカ外交の中心国の一つであること、6)具体的な開発目標を掲げ、経済社会開発のための主体性(オーナーシップ)を行っているセネガルの開発政策は、DAC新開発戦略の趣旨にも合致し、セネガルにおいて新開発戦略の実施を重点的に支援しうる状況にあること等から、我が国援助の重点国の一つとして位置付けている。
我が国は、セネガルにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び95年3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等におけるセネガル側との政策対話を踏まえ、次の分野を重点分野として援助を実施していく方針である。
(イ)基礎的生活基盤の改善
(a)生活用水
セネガルでは安全な水へのアクセスが不足しているので、衛生状況の改善、女性の水汲み労働の軽減のため、地下水開発等による生活用水の確保を支援する。
(b)教育
基礎教育の遅れが深刻なセネガルにおいて、ハード・ソフト両面から基礎教育の充実に向けて協力を実施する。
(c)基礎的保健・医療
セネガルの人口増加率は非常に高い水準であり、人口の増加等により、特に農村部において医療サービスの整備が遅れているため、プライマリー・ヘルス・ケア、公衆衛生等の基礎的保健・医療体制の整備を支援する。なお、エイズ感染者の増加が懸念されており、この分野での積極的な協力を実施する。
(ロ)環境(砂漠化防止)
砂漠化の進行、土壌の劣化が深刻な問題となっていることから、苗木供給、植林運動について協力を行う。
(ハ)農水産業
国土の砂漠化、旱魃等の厳しい条件の下、輸出用換金作物のモノカルチャー型の農業生産を行っており、穀物の対外依存度が非常に高くなっている。従って、食糧作物の生産性向上のための食糧増産援助、灌漑施設整備等の協力を実施する。また、水産品が最大の輸出品目となっており、食糧供給面においても重要であることから、零細漁業の振興等を支援する。
(2) 無償資金協力については、農業分野、水産分野、水供給分野、保健・医療分野、教育分野等の基礎生活分野を中心に幅広く協力を行っている。
研修員受入、青年海外協力隊派遣等の技術協力については、農林水産業、保健・医療等の分野を中心に、開発調査については、社会経済基盤等の分野を中心に実施している。また、深刻な同国の砂漠化を防ぐため、専門家派遣、青年海外協力隊派遣、研修員受入を連携させた「緑の推進協力プロジェクト」の第2フェーズを93年1月より6年間実施した。
有償資金協力については、現在は同国が債務削減措置適用国であるため、新規円借款の供与については慎重に検討せざるを得ない状況にある。また、我が国は、同国の構造調整努力を支援するため、98年度までに合計121億円の円借款及び合計130億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与した。99年3月には、同国の構造改善努力推進及び債務問題を含む経済困難緩和に寄与することを目的として、4億円の環境・社会開発セクター・プログラム無償資金協力を実施した。
(1)我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
61.70(80) 58.14(80) 51.54(-) 18.25(-) 25.67(-) |
14.35(19) 9.38(13) 7.12(-) 7.88(-) 8.50(-) |
76.05(99) 67.52(93) 58.66(-) 26.13(-) 34.17(-) |
0.82 7.92 0.69 0.72 0.19 |
0.82(1) 5.24(7) -0.67(-) -0.74(-) -0.58(-) |
76.87(100) 72.76(100) 57.99(100) 25.39(100) 33.59(100) |
累計 | 494.32(71) | 117.91(17) | 612.21(88) | 92.82 | 82.58(12) | 694.81(100) |
(注) ( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2)DAC諸国・国際機関のODA実績
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
フランス 228.1 フランス 177.6 フランス 142.2 |
日本 72.8 日本 58.0 ドイツ 34.2 |
米国 22.0 米国 43.0 米国 30.0 |
ドイツ 17.0 ドイツ 35.8 日本 25.4 |
オランダ 15.0 カナダ 16.0 カナダ 15.5 |
72.8 58.0 25.4 |
399.4 392.0 292.0 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
IDA 101.0 IDA 102.9 IDA 52.9 |
CEC 75.2 CEC 42.1 CEC 45.0 |
IMF 42.4 AfDF 12.5 AfDF 4.7 |
UNDP 6.9 IFAD 6.0 UNDP 4.3 |
WFP 5.9 UNICEF 5.0 UNICEF 3.9 |
27.1 9.2 14.0 |
258.5 177.8 124.6 |
(3) 年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 | 148.11億円
(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照) |
347.89億円
(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照) |
77.37億円
研修員受入 168人 |
91 | 2.14億円
債務繰延べ (2.14) |
51.07億円
苗木育成場整備計画 (3.35) |
7.26億円
研修員受入 21人 |
92 | なし | 45.52億円
小学校教室建設計画(2/2期) (7.80) |
10.71億円
研修員受入 24人 |
93 | なし | 56.64億円
デビ地区灌漑改修計画(1/2期) (8.79) |
9.95億円
研修員受入 24人 |
94 | なし | 29.57億円
小学校教室建設計画(1/3期) (9.97) |
9.79億円
研修員受入 42人 |
95 | 7.63億円
債務繰延 (4.66) |
60.25億円
地方給水施設整備計画(2/2期-2) (11.18) |
7.30億円
研修員受入 52人 |
95 | なし |
苗木育成場整備計画(1/2期) (5.74) |
7.30億円
研修員受入 52人 |
96 | なし | 31.22億円
小学校教室建設計画(2/2期-2) (14.22) |
7.33億円
研修員受入 51人 |
97 | 0.68億円
債務繰延 (0.68) |
51.55億円
小学校教室建設計画(国債3/3期) (4.83) |
10.47億円
研修員受入 54人 |
98 | なし | 31.08億円
ティエス地方病院整備計画(1/2期) (7.88) |
9.51億円
研修員受入 48人 |
98年度までの累計 | 158.56億円 | 704.8億円 | 149.70億円
研修員受入 484人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度の実績については、96年度に閣議決定を行い、97年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.76年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/905-24.htm)
(参考1)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
日・セ職業訓練センター | 84.2~93.3 |
(参考2)98年度実施開発調査案件
案件名 |
太陽光利用地方電化計画(予備調査)(太陽光発電計画)(地方電化計画) ダカール首都圏社会基盤情報管理計画事前調査(S/W協議)(都市計画) ダカール首都圏社会基盤情報管理計画事前調査(GIS設計) 太陽光利用地方電化計画予備調査(農村社会調査) 太陽光利用地方電化計画(プロジェクト形成基礎調査)(太陽光発電計画) 太陽光利用地方電化計画(プロジェクト形成基礎調査)(地方電化計画) |
(参考3)98年度実施草の根無償資金協力案件
案件名 |
ハンセン病患者自立支援計画 北部アグロフォレストリー農村活性化計画 タンバクンダ人口・家族計画保健センター建設計画 ミシラ村保健・教育施設整備計画 ティエス6カ村生活用水供給計画 ンドファンヌ市環境衛生改善計画 日本・セネガル車椅子輸送支援計画 |