(1) 91年10月、初の複数政党制下での大統領選挙が行われ、チルバ複数政党民主主義運動(MMD)党首がカウンダ大統領に圧勝し、また、議会選挙でもMMDがカウンダ前大統領率いるUNIP(統一国民独立党)に勝利した。政権交替はスムーズに行われ、アフリカにおける民主化の成功例として評価された。
チルバ政権は、構造調整による経済再建への積極的な取組みを見せたが、一方で、MMD内部の不統一・汚職も露見した。特に、現職閣僚を含む麻薬・汚職問題に対して、93年12月援助国会合において、援助国側より強い懸念がザンビア政府に示された。こうした中、カウンダ前大統領の大統領選挙出馬阻止を狙った憲法改正(96年5月)が強行採され野党の反発を呼び、国内の緊張が高まった。同年11月、主要野党不参加のままで大統領及び国民議会選挙が実施され、チルバ大統領が再選され、MMDも圧倒的多数を確保した。97年10月、軍内部によるクーデター未遂事件が発生し、また、同年12月カウンダ前大統領が、このクーデター未遂事件に関与した疑いで、身柄拘束が行われた。このような政府の強硬姿勢に反発している野党や援助国の理解と協力が得られるかが課題となっていたが、その後、カウンダ前大統領の釈放等政府の歩み寄りの姿勢とともに関係は改善された。
(2) 外交面で、チルバ政権は、自国の経済建設を最優先とする実利的な外交路線を展開し、特に、南アフリカとは、同国の民主化以前から経済関係を強化し始めていた。また、アンゴラ和平プロセスにおける仲介役としての役割や、モザンビーク、ルワンダ等へのPKOの派遣、最近ではコンゴー民主共和国の和平合意へのイニシアティブを発揮する等の紛争解決のために積極的に努力している。
(3) 経済面では、輸出収入の約80%を銅に依存しているが、近年、銅価格の下落及び銅生産の低下により経済が低迷し、多額の対外債務が累積している。
チルバ政権は、構造調整計画を実施し、各種規制緩和、為替の自由化、公営企業の民営化・効率化等に取り組んできた。しかし、構造調整による経済自由化の成果が雇用・生産の増大に結びついておらず、98年の経済成長率も、メイズ生産、銅生産の落ち込み等により、-2.0%に下落した。GNPの2倍以上にも及ぶ対外債務の削減、ザンビア銅公社(ZCCM)の民営化、インフラ整備等、経済発展のための課題が存在するが、行政の非効率、予算不足がネックとなり進展が遅いのが現状である。
(4) 我が国は、ザンビアから銅・コバルト等を輸入し(98年輸入額1億1,579万ドル)同国に自動車等を輸出している(同輸出額3,275万ドル)。
(参考1) 主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 8,122 | 8,978 | 9,215 | 9,443 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | 3,391 | 3,605 | 3,363 | 3,536 |
一人当たり(ドル) | 420 | 400 | 360 | 370 | |
経常収支(百万ドル) | -594 | - | - | - | |
財政収支(十億クワチャ) | -9.8 | -203.2 | 29.3 | - | |
消費者物価指数(90年=100) | 100.0 | 2,674.1 | 3,324.3 | 4,171.8 | |
DSR(%) | 15.1 | 186.0 | 22.3 | 19.9 | |
対外債務残高(百万ドル) | 7,265 | 6,859 | 7,182 | 6,758 | |
為替レート(年平均、164ドル=クワチャ) | 30.29 | 857.23 | 1,203.71 | 1,333.81 | |
分類(DAC/国連) | 後発開発途上国/LDC | ||||
面積(千平方キロメートル) | 743.4 |
(参考2) 主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 54 | 43(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
76 | 113(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | 84.6(93年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
122 | 189(97年) | ||
下位20%の所得又は消費割合(%) | 5.6(91年) | 4.2(96年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
150(80-90年平均) | 650(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 27 | 22(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
1(80-90年平均) | 26(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | 80 | 75(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 60(88-90年平均) | 53(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 48 | 48(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
323 | 314(95年) |
中等教育 | 37 | 38(96年) |
(1) 我が国は、ザンビアが、1)アフリカ統一機構(OAU)等の有力メンバー国の一つであり、南部アフリカ地域において指導的立場にある国であること、2)世銀・IMFの支援の下、金融関連規制の自由化、公営企業の民営化、各種価格統制の廃止等の構造調整を積極的に推進していること、3)銅、コバルト等鉱物資源の供給国として我が国にとって重要であり、また、我が国と良好な関係にあること等から、援助を実施している。しかし、今後の援助実施については、チルバ政権の行政能力のほか、野党に対する対応ぶり等同国の良い統治に対する取り組みを注視していく必要がある。
なお、96年6月、我が国は96年憲法改正案採択の過程で、政府が野党側との対話を行わなかった等の理由により、米、独等の援助国とともに、国際収支支援型の援助を見合わせる等の措置をとった。
(2) 我が国援助の重点分野として、農業・食糧増産、水供給、保健医療、教育等の基礎生活分野における人道援助と、地域開発、インフラ整備、構造調整支援等の経済再建へ向けての援助とすることを確認し、現在、これらの分野における無償資金協力及び技術協力を中心に援助を実施している。
(3) 98年度までの我が国の援助累計実績についてみると、有償資金協力は965.43億円で域内第3位、無償資金協力は741.80億円で域内第2位(以上交換公文ベース)、技術協力は298.15億円で域内第3位(JICA経費実績ベース)と積極的に協力を実施している。
(4) 有償資金協力については、ザンビアの経済・債務状況の悪化もあり、84年度以降債務繰延べを除き円借款の供与は行っていないが、同国の民主化・経済改革努力への支援の観点をも踏まえ、世銀との協調融資により、92年度には97億円の商品借款を供与した。
無償資金協力については、農業分野、水供給分野等の基礎生活分野、運輸・通信等の基礎インフラ整備等に対して協力を実施している。特に道路分野では、国内の道路整備のみならず、広域協力としてジンバブエとの国境を流れるザンベジ川にかかる橋梁の建設に対する協力を実施している。
また、同国の構造調整努力を支援するため、98年度までに合計185億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与した。
技術協力については、農業、保健・医療等の分野でプロジェクト方式技術協力、研修員受入、専門家派遣、青年海外協力隊派遣、開発調査の各事業を実施している。
(1) 我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
65.02(61) 34.28(44) 27.44(-) 35.72(-) 22.97(-) |
22.33(21) 27.76(35) 20.83(-) 15.86(-) 13.12(-) |
87.35(82) 62.04(79) 48.27(-) 51.58(-) 36.09(-) |
23.83 49.62 - - - |
18.96(18) 16.45(21) -5.99(-) -8.08(-) -2.49(-) |
106.32(100) 78.49(100) 42.28(100) 43.50(100) 33.59(100) |
累計 | 550.12(50) | 234.62(21) | 784.73(72) | 426.04 | 308.74(28) | 1,093.50(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
日本 78.5 ドイツ 79.7 英国 93.7 |
英国 76.5 英国 60.7 米国 48.0 |
ドイツ 71.0 日本 42.3 日本 43.5 |
オランダ 42.0 スウェーデン 31.1 ノールウェー 37.2 |
ノールウェー 35.1 ノールウェー 30.6 オランダ 24.3 |
78.5 42.3 43.5 |
439.5 354.1 367.0 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
IMF 1,254.2 IDA 178.0 IDA 165.6 |
IDA 206.8 CEC 37.1 CEC 28.7 |
CEC 76.9 AfDF 14.8 IMF 13.8 |
AfDF 15.8 UNICEF 8.4 UNDP 11.5 |
WFP 15.1 UNDP 6.7 AfDF 9.3 |
26.7 14.8 22.5 |
1,595.5 259.8 251.3 |
(3) 年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 | 495.49億円
(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照) |
418.10億円
(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照) |
131.09億円
研修員受入 295人 |
91 | 170.83億円
債務繰延べ (75.11) |
69.72億円
カフェ川道路橋架替計画(国債1/3期) (7.39) |
19.93億円
研修員受入 50人 |
92 | 97.46億円
民営化・産業改革計画支援のための商品借款 (97.46) |
43.48億円
カフェ川道路橋架替計画国債(2/3期) (9.12) |
21.54億円
研修員受入 48人 |
93 | なし | 62.51億円
カフェ川道路橋架替計画(国債3/3期) (2.90) |
22.08億円
研修員受入 55人 |
94 | 136.46億円
債務繰延べ (66.32) |
35.88億円
ルサカ市電話網改修計画(2/2期-2) (5.55) |
26.97億円
研修員受入 72人 |
95 | なし | 34.54億円
大学教育病院小児科改善計画 (8.04) |
22.37億円
研修員受入 69人 |
96 | なし | 33.83億円
食糧増産援助 (8.00) |
20.52億円
研修員受入 73人 |
97 | 65.19億円
債務繰延べ (65.19) |
23.18億円
ルサカ市道路網整備計画(国債2/2期) (9.67) |
18.08億円
研修員受入 87人 |
98 | なし | 20.56億円
チルンド橋建設計画(詳細設計) (0.36) |
15.56億円
研修員受入 100人 |
98年度までの累計 | 965.43億円 | 741.80億円 | 298.16億円
研修員受入 849人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.72年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/905-17.htm)
(参考1) 98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
ザンビア大学医学部 ザンビア大学獣医学部 職業訓練拡充 感染症 ザンビア大学獣医学部技術協力(II) 感染症対策 プライマリーヘルスケア(PHC) |
80.2~89.2 85.1~92.7 87.10~94.9 89.4~95.3 92.7~97.7 95.4~00.3 97.3~02.3 |
(参考2) 98年度実施開発調査案件
案件名 |
ルサカ市未計画居住区住環境改善計画調査(第1年次) ルサカ市未計画居住区環境改善計画事前調査(S/W協議)(都市環境・生活関連インフラ) ルサカ市都市環境改善計画予備調査 ルサカ市未計画居住区環境改善計画事前調査(S/W協議)(社会配慮) |
(参考3) 98年度実施草の根無償資金協力案件
案件名 |
カナカンタパ新小学校建設計画 ルサカ地区救急システム整備計画1 ナンゴマ・コミュニティ開発計画 ルアングア中等学校修復計画3 ザンビア農業大学給水設備修復計画 カフェ地区病院建設支援計画 ブワフワノ託児所支援計画 ユース・アライブ・ザンビア修復計画 カレンジェ小学校支援計画 ナカンサングウェ畜産保健計画 ザンビア人女性開発支援計画 ザンビア民主化・ガヴァナンス支援計画 |