(1) 国事全般にわたり国王自らの親政により決定されるという権力構造を基礎としている。一方で一定の民主化措置の導入も進めており、96年9月の2院制導入等を内容とする憲法改正の国民投票を踏まえて、97年11月及び12月には両院の選挙を実施し、その結果、98年3月に野党・中道・無所属による連立政府(首相は社会主義政党出身)が成立し現在に至っている。
(2) こうした中、ハッサン2世国王が99年7月に逝去、皇太子がモハメッド6世として即位した。同国の政治・社会情勢は、故ハッサン2世国王の38年間に亘る親政下において、比較的安定的に推移してきた。新国王は前国王の国家発展事業の継承を表明している。
(3) 外交面では非同盟及びアラブ諸国との連帯を標榜しつつ、現実的かつ穏健な外交政策を追求するとともに、西側諸国とも良好な関係を維持している。
中東和平問題については、パレスチナを支援する一方、イスラエルともパイプを有し、同問題の平和的解決のため尽力している。94年には第一回中東・北アフリカ経済サミットを主催。また、湾岸諸国とは王室を通じた緊密な関係にあり、特に、故ハッサン2世国王はアラブ世界において歴然とした影響力を有してきた。西サハラの領有権問題については、国連監視下の住民投票の実施が特定部族の有権者認定を巡り当初の予定より延期されてきているが、現在、2000年7月実施を目指し準備が進められている。
(4) 経済面では、従来より旱魃等の気象条件による農業生産の不安定性、世界の埋蔵量の約75%を占めるリン鉱石、石油の国際市場価格変動等の影響で、外的要因により経済変動が大きいという脆弱性を抱え、恒常的な貿易収支赤字状態にある。また、若年層の高失業率、貧富の格差、地方と都市部の格差等の社会問題を抱えている。これまで世銀・IMFの支援を得て、徴税能力の強化、税制改革、公共投資の増加、予算編成能力の強化、一般歳出の合理化、関税合理化、柔軟な為替レートの設定、対外債務管理能力の強化等を内容とする包括的な構造調整を行っている。
現在、2010年までにEUとの自由貿易圏の樹立を目指し努力を行っており、国内的には本年より新5カ年計画をスタートさせ、強固かつ持続的な成長の確保と社会階層間及び地域間の格差を是正し安定した社会を作り上げるべく積極的に取り組んでいる。
(5) 我が国との関係は従来より良好であり、要人往来も比較的活発である。貿易関係については、我が国はモロッコから魚介類等を輸入し(98年輸入額2億6,239万ドル)、同国に自動車、映像機器、精密機械等を輸出している(同輸出額1億3,642万ドル)。
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 25,091 | 26,562 | 27,020 | 27,310 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | 23,788 | 29,545 | 34,936 | 34,380 |
一人当たり(ドル) | 950 | 1,110 | 1,290 | 1,260 | |
経常収支(百万ドル) | -196 | -1,521 | -627 | - | |
財政収支(百万ディルハム) | -4,760 | -12,365 | - | - | |
消費者物価指数 | 100.0 | 126.3 | 127.9 | 130.4 | |
DSR(%) | 21.5 | 33.4 | 26.9 | 26.6 | |
対外債務残高(百万ドル) | 24,458 | 22,669 | 21,667 | 19,321 | |
為替レート(年平均、1米ドル=ディルハム) | 8.242 | 8.540 | 8.716 | 9.527 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千平方キロメートル) | 446.3 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 62 | 66(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
75 | 51(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | <2(90-91年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
112 | 67(97年) | ||
下位20%の所得又は消費割合(%) | 6.6(90-91年) | 6.6(90-91年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
300(80-90年平均) | 370(90-97年) | |
成人非識字率(%) | 50 | 56(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
36(80-90年平均) | 50(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | 55 | 74(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 61(88-90年平均) | 57(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 40 | 42(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
90 | 38(95年) |
中等教育 | 41 | - |
(1) 我が国は、モロッコが、1)穏健かつ現実的な外交政策をとり、中東和平問題の解決に尽力していること、2)83年以降積極的に構造調整に取り組んでいること、3)民主化努力を着実に推進していること等に鑑み、有償資金協力、無償資金協力及び技術協力の各形態により積極的に援助を実施している。また、96年3月の円借款政府調査団の際に、同国を年次供与国とする方針を伝達した。
98年4月には経済協力政策協議を実施し、1)主要産業の一つである農業及び水産業の開発・振興の支援、2)限られた水資源の効率的利用のために、農業用水、飲料用水確保のための水資源開発のための支援、3)持続的経済成長を支える基礎インフラ整備分野への支援、4)都市・地方間の格差是正のための地方開発分野への支援、5)発展のための持続可能性確保のための環境分野での支援の5分野を重点とすることを確認した。なお、技術協力においてはこれらに加えて資源開発を中心とした鉱工業分野も重点対象としている。今後とも、同国の民主化、経済改革努力及び同国の最重要課題の1つである社会格差是正努力を支援するため、各形態による積極的な援助実施を検討していく方針である。
(2) 有償資金協力については、93年の債務返済の開始を受け新規円借款の供与を再開して以降、毎年円借款を供与している。無償資金協力については、86年度に一般無償資金協力対象国に移行して以降、保健・医療、水供給分野等の基礎生活分野、農業分野、水産分野を中心に援助を実施している。技術協力については、無償資金協力との連携によるプロジェクト方式技術協力を積極的に実施しているほか、農林水産、鉱工業、運輸・交通等の分野を中心に各形態で積極的に協力を実施している。
(1)我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
27.29(46) 4.75(19) 13.81(30) 13.53(-) 10.91(28) |
12.77(21) 15.96(64) 14.52(31) 17.13(-) 11.74(30) |
40.06(67) 20.72(83) 28.32(61) 30.66(-) 22.65(58) |
37.42 24.10 34.19 7.50 27.99 |
19.55(33) 4.23(17) 18.11(39) -6.96(-) 16.71(42) |
59.61(100) 24.95(100) 46.43(100) 23.70(100) 39.37(100) |
累計 | 152.95(25) | 153.06(25) | 306.00(50) | 427.08 | 301.82(50) | 607.86(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2)DAC諸国・国際機関のODA実績
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
25.0 46.4 23.7 |
347.4 391.4 215.2 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
7.6 1.5 2.0 |
129.1 233.8 221.4 |
(3)年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 |
420.29億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
93.04億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
77.08億円
研修員受入 221人 |
91 |
20.35億円 債務繰延べ (20.35) |
18.09億円
道路保守建設機械訓練所建設計画(1/2期) (8.97) |
10.20億円
研修員受入 23人 |
92 |
25.19億円 債務繰延べ (25.19) |
11.79億円
道路保守建設機械訓練所建設計画(2/2期) (6.89) |
10.56億円
研修員受入 27人 |
93 |
133.19億円 国家農業信用計画 (133.19) |
24.31億円
医療機材整備計画 (9.03) |
10.75億円
研修員受入 31人 |
94 | 138.40億円
上水道セクター整備計画 (60.99) |
11.97億円
地方飲料水供給計画 (2.91) |
11.85億円
研修員受入 37人 |
95 |
168.78億円
ケニトラ発電所リパワリング計画 (33.30) |
13.21億円
ウェルガ川流域農業開発計(1/2期) (4.56) |
13.16億円
研修員受入 42人 |
96 | なし | 15.85億円
ウェルガ川流域農業開発計画(2/2期-1) (3.30) |
14.47億円
研修員受入 45人 |
97 | 185.68億円
上水道セクター整備計画(2) (90.00) |
16.01億円
ウェルガ川流域農村開発計画(国債2/2) (3.85) |
13.81億円
研修員受入 56人 |
98 | 130.73億円
対モロッコ円借款 (130.73) |
8.86億円
スイラケディマ漁村開発計画(1/2期) (5.49) |
11.32億円
研修員受入 54人 |
98年度までの累計 | 1,222.61億円 | 213.13億円 | 187.61億円
研修員受入 536人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96 年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.75年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 (http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/904-20.htm)
(参考1)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
漁業訓練 道路保守建設機械訓練センター 水産専門技術訓練センター計画 高等海事学院 鉱物資源探査技術向上 |
87.1 ~93.9 92.4 ~97.4 94.6 ~01.6 96.4 ~01.3 98.4 ~02.3 |
(参考2)98年度実施開発調査案件
案件名 |
零細漁村振興計画調査(第3年次) |
(参考3)98年度実施草の根無償資金協力案件
案件名 |
女性起業家支援計画 アルバー・タウリルト村飲料水供給計画 マラケッシュ地方飲料水供給計画 ティゲドゥイン村落道路・橋梁整備計画 職業訓練センター建設計画 イブン・アルバイタール肢体不自由児施設センター改善計画 セフロー市家庭用ゴミ収集作業改善計画 アイン・シュガグ村飲料水供給計画 モロッコ・オバルズ医療相談センター医療器材整備計画 ラバト・フェズ地区啓豪活動車輌購入計画 タフタッシュト村小学校整備計画 モハメディア市家庭用ゴミ処理能力改善計画 地方村落道路整備計画 ウラッド・タイマ市管理型ゴミ処分場建設計画 歯検診・治療巡回車両調達計画 ラバト孤児院整備計画 アクレシュ小学校整備計画 アイト・ミルク村飲料水供給計画 ユースフィア孤児収容施設建設計画 |