(1) 政治面では、97年6月に祖国党、民主左派党、民主主義トルコ党(正道党より分裂)によるユルマズ連立内閣が成立したが、同首相の国営銀行の民営化に当っての不正介入疑惑を機に、98年11月内閣不信任案が可決され、99年1月エジェビット民主左派党党首率いる連立政権が成立した。99年4月には総選挙が行われ、民主左派党が躍進を遂げている。内政上の課題としては、政教分離主義の擁護、インフレ対策をはじめとする経済構造改革、クルド労働者党(PKK)テロ問題等が挙げられる。特に、PKKテロ問題に関しては、99年2月オジャランPKK党首が逮捕された。
(2) 外交面では、OECD及びNATOの加盟国として欧米寄りの穏健かつ現実的な路線を基調とする一方、旧ソ連邦のNIS諸国(特にトルコ系諸国)の独立後は同諸国との関係を重視している。また、地域協力促進のため、黒海経済協力(BSEC)及び経済協力機構(ECO)を主導する等、近隣の東欧及び中近東諸国とも善隣友好関係を志向し、外交の多角化に努めている。
87年4月には欧州共同体(EC現在は欧州連合(EU))加盟申請を行っているが、97年12月のルクセンブルグ欧州理事会において、EU加盟候補国から除外される等、正式加盟実現は厳しい状況にある。但し、トルコ・EU関税同盟を締結(96年1月発効)する等EUとの経済関係は強化されている。
(3) 経済面では、財政赤字構造の解消のため、IMFとの協力のもと、公共企業体の合理化・民営化の推進、税制改革及び農業補助金の見直し、社会保障制度改革等を進めるべく努力している。経済上の課題として、高インフレ率(98年54.3%)や財政赤字等構造的問題は依然として解消されていない。
(4) 我が国は1925年に中近東地域における最初の大使館をトルコに開設して以来、今日に至るまで良好な外交関係を維持しており、両国間における要人の往来も活発である。最近では90年10月には海部総理(当時)、96年5月に池田外務大臣(当時)が、また、99年8月には高村外務大臣が同国を訪問し、92年12月にはデミレル首相(現大統領)、95年2月にチルレル首相(当時)が来日した。
貿易関係については、我が国はトルコから鉄鋼、繊維製品、野菜、葉たばこ、粗鉱物等を輸入し(98年輸入額1億4,260万ドル)、また、同国には機械機器類、自動車、化学品、金属製品等を輸出している(同輸出額16億6,580万ドル)。
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 56,277 | 61,058 | 62,697 | 63,745 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | 91,742 | 169,452 | 177,530 | 199,307 |
一人当たり(ドル) | 1,630 | 2,780 | 2,830 | 3,130 | |
経常収支(百万ドル) | -2,625 | -2,338 | -2,437 | -2,750 | |
財政収支(90年・95年:十億トルコ・リラ 95年・97年:一兆トルコ・リラ) |
-11,781 | -314,943 | -1,233 | - | |
消費者物価指数 | 100.0 | 1,715 | 2,903 | - | |
DSR(%) | 29.4 | 27.7 | 21.9 | 18.4 | |
対外債務残高(百万ドル) | 49,424 | 73,779 | 81,822 | 91,205 | |
為替レート(年平均、164ドル=トルコ・リラ) | 2,609 | 45,845 | 81,405 | 151,865 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千平方キロメートル) | 769.6 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 65 | 69(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
69 | 40(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | - | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
80 | 50(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | - | - | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
150(80-90年平均) | 180(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 19 | 18(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
77(80-90年平均) | - | |
初等教育純就学率(%) | 99 | 96(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 78(88-90年平均) | - | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 47 | 47(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
202 | 89(95年) |
中等教育 | 39 | 39(96年) |
(1) 我が国は、トルコが、1)穏健かつ現実的な外交路線を基調とし、欧米先進諸国との協調並びに隣接する東欧諸国、NIS諸国及び中近東諸国との善隣協力関係を志向し、地域の安定化に貢献していること、2)大きな人口を有し、また、市場経済・対外開放政策の推進を通じて、経済的潜在性が高いこと、3)アジア、中近東及びヨーロッパの結節点に位置し、その地理的重要性が高いこと、4)従来より我が国と良好な二国間関係を有していることから、対中近東地域援助の重点国の一つとして積極的に協力を行っている。
なお、同国は一人当たりGNPが比較的高い水準にあることから、有償資金協力及び技術協力を中心に援助を実施している。98年9月には経済協力政策協議を実施し、今後の我が国の援助のあり方についてトルコ側との政策対話の結果、環境(都市環境の改善、海洋汚染対策)、経済社会開発促進のための人材育成、地域間格差是正のための農漁業等主要産業の振興及び保健・医療等基礎生活分野の改善、南南協力を重点的に支援していくことが確認された。
今後とも、同国の政治的・経済的安定を支援するため、有償資金協力及び技術協力を中心に積極的な援助実施を検討していく方針である。
(2) 98年度までの我が国の援助累計実績についてみると、有償資金協力は3,546.68億円(交換公文ベース)、技術協力は269.42億円(JICA経費実績ベース)で、それぞれ中近東域内第2位と、積極的に協力を行っている。
(3) 有償資金協力については、運輸、エネルギー、水供給分野をはじめとするインフラ整備を中心に実施している。
無償資金協力については、同国の所得水準が比較的高いことから一般無償資金協力は実施していないが、文化無償資金協力をほぼ毎年度実施している。
技術協力については、保健・医療、運輸・交通、鉱工業等の広範囲の分野で、プロジェクト方式技術協力、研修員受入、専門家派遣、開発調査等を実施している。また、96年度より中央アジア・コーカサス地域を対象とした第三国研修を実施している。
(4) 99年8月17日、M7.4規模の大地震がトルコ北西部を襲い、1万四千人以上にのぼる死者を出したほか、震源地が同国最大の工業地帯であったためにその経済的被害は甚大なものとなった。わが国は、直ちに国際緊急援助隊レスキューチームと医療チームを派遣するとともに、総額約100万ドルの緊急物資、緊急無償援助を実施したほか、耐震調査専門家、阪神・淡路大震災の経験を生かすべく、ライフライン復旧専門家を派遣した。さらに地震発生の10日後には、予想以上の被害の大きさに対応して、総額約200万ドルに及ぶ緊急物資、緊急無償援助の実施を決定した。
このように、我が国は救命、物資、資金、技術とあらゆる手段をもって全面的に支援を行っているが、今後のトルコの復旧・復興努力に対して、必要な協力を行っていく方針である。
(1)我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
0.47(-) -(-) -(-) 8.82(-) 0.01(-) |
19.53(-) 23.00(68) 29.80(-) 23.09(-) 17.05(-) |
20.00(-) 23.00(68) 29.80(-) 23.91(-) 17.06(-) |
42.01 67.56 30.51 17.94 17.33 |
-10.91(-) 10.67(32) -27.10(-) -45.60(-) -47.42(-) |
9.10(100) 33.67(100) 2.70(100) -21.69(100) -30.36(100) |
累計 | 4.51(0) | 230.16(16) | 234.68(16) | 1,720.25 | 1,199.31(84) | 1,433.99(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2)DAC諸国・国際機関のODA実績
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
33.7 2.7 -21.7 |
173.7 50.6 -593 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
-20.4 -3.3 -4.6 |
-10.1 14.4 66.4 |
(3)年度別・形態別実績
年度 | |||
90年度までの累計 |
1,932.46億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
3.06億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
103.35億円
研修員受入 1,163人 |
91 |
666.39億円
ゴールデンホーン橋補修拡幅事 |
1.15億円
災害緊急援助(地震被害) (50万ドル=0.65) |
16.55億円
研修員受入 95人 |
92 | なし | 0.49億円 大統領府交響楽団に対する視聴覚機材 (0.49) |
19.25億円
研修員受入 90人 |
93 |
524.73億円 イスタンブル給水計画 (524.73) |
0.48億円 文化省に対する遺跡保存・修復機材 (0.48) |
16.21億円
研修員受入 86人 |
94 | なし | なし | 20.49億円
研修員受入 112人 |
95 | なし | 0.49億円 柔道連盟に対する柔道器材 (0.49) |
25.49億円
研修員受入 104人 |
96 |
423.10億円 イスタンブル給水計画(2) (423.10) |
0.50億円 大国民議会国立宮殿局機材供与 (0.50) |
27.59億円
研修員受入 125人 |
97 | なし | 0.50億円 ガジ大学コミュニケーション学部視聴覚機材供与 (0.50) |
21.94億円
研修員受入 128人 |
98 | なし | 0.40億円 土日基金文化センター視聴覚及びLL機材 (0.40) |
18.55億円
研修員受入 124人 |
98年度までの累計 | 3,546.68億円 | 7.07億円 | 269.42億円
研修員受入 2,027人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.71年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/904-17.htm)
(参考1)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件案件名協力期間
案件名 | 協力期間 |
イスタンブール水産職業高等学校 ツヅラ職業技術訓練高校 人口教育促進 生物製剤品質管理 地震防災研究センター (フォローアップ) 人口教育促進(II) 港湾水理研究センター 鉱山保安技術向上 黒海水域増養殖開発 感染症対策 |
73.6~79.6 87.10~92.9 88.11~93.11 93.1~95.12 93.4~98.3 98.4~00.3 93.11~98.11 95.1~99.12 95.11~00.10 97.4~02.4 97.10~02.9 |
(参考2)98年度実施開発調査案件
案件名 |
東部黒海地域開発計画調査 アダナ・メルシン地域廃棄物管理計画調査 幹線道路維持管理計画調査(第3年次) 東部黒海地域開発計画事前調査(S/W協議)(地域開発計画) 東部黒海地域開発計画事前調査(S/W協議)(自然条件/環境計画) 東部黒海地域開発計画事前調査(S/W協議)(インフラ整備計画) |