(1) 91年12月、ソ連の解体ととも実質的な独立国家となった。ニヤゾフ大統領は、94年1月、国民投票で99.99%の支持を得て任期を2002年まで延長している。議会や政府は共産勢力が占めており、保守的な体制が根強く残っている。経済改革は「漸進主義」で進められているが、統制経済的色彩が濃く、市場経済化の動きは緩慢である。
トルクメニスタンは、「積極的中立」と呼ぶ外交方針を掲げ、軍事同盟への加入は拒みつつ、地域の政治・安全保障に対し積極的に主導権を握ろうとしている。95年12月の国連総会では、同国の「永世中立国」としての地位が認められた。中央アジア地域にあってCIS統合への動きに対しては冷淡である一方、ロシアとの関係を重視し、緊密な政治・経済関係を維持している。トルコ、イランなどのイスラム諸国とは接近を図っており、特に100万人以上のトルクメン人が居住するイランとの関係は密接で、ニヤゾフ大統領が度々イランを訪問しているほか、96年5月には両国を結ぶ鉄道も開通し、中央アジアとペルシャ湾を結ぶ最短輸送路として注目されている。また同国は国際機関や先進国による経済支援にも期待しており、IMF、世銀に加盟している。
(2) 産業の中心は、天然ガスや石油などの燃料及び鉱物資源の生産である。天然ガスは世界第4位の埋蔵量を有すると言われ、重要な外貨獲得源であるが、輸出は旧ソ連諸国、とくにウクライナを主要相手国としており、支払い遅滞の問題を抱えている。96年には天然ガスの増産によりGDP成長率がプラスに転じたが、97年には天然ガスの輸出不振により大きな打撃を受けた。一方、97年12月にトルクメニスタンからイランへの輸出パイプラインが開通したが、アフガニスタン経由パキスタンへのパイプライン計画は98年8月事実上頓挫し、今後の輸出状況が注目される。農業部門では、大規模な灌漑による綿花生産が中心であるが、生産は低迷を続けている。
(3) 我が国とは、官民の経済代表団による「日本トルクメニスタン経済合同会議」が設置され、94年10月の第1回以降、98年6月の第4回まで開催されているが、経済交流は未だ低い発展段階にある。
(4) 我が国との関係では、96年9月にサパロフ副首相が訪日している。
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | - | 4,508 | 4,598 | 4,568 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 4,125 | 4,319 | 2,987 |
一人当たり(ドル) | - | 920 | 940 | 640 | |
経常収支(百万ドル) | - | - | - | - | |
財政収支(百万ドル) | - | - | - | - | |
消費者物価指数 | - | - | - | - | |
DSR(%) | - | - | 11.4 | 34.7 | |
対外債務残高(百万ドル) | - | 402 | 751 | 1,771 | |
為替レート(1米ドル=マナト) | - | - | - | - | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千平方キロメートル) | 469.6 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | - | 65(97年) |
乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 40(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | 4.9(35年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 50(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | - | 6.7(93年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 44(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | 2x(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
- | - | |
初等教育純就学率(%) | - | - | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | - | 60(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | - | - | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
- | 38(95年) |
中等教育 | - | - |
(1) トルクメニスタンはソ連崩壊後の新たな国際情勢において地政学的に重要な位置を占めており、市場経済化への方向性はODA大綱の観点から望ましいため、同国の人材不足や経済インフラの老朽化などの問題などに効率的に対処し、経済的困難の克服に協力するため、我が国は同国に対する支援を行っている。
(2) 我が国の対トルクメニスタン援助は、同国が93年1月にDAC途上国リストに掲載される以前の91年から研修員受入れや専門家派遣などを開始しており、また、NIS諸国に対する総額2億ドルの緊急人道支援の一部として、医薬品、ワクチンなどを中心に、93年以降337万ドルの人道支援物資を供与している。
また、95年10月には、経済協力に関する政策協議を実施した。我が国のトルクメニスタンに対する援助は、市場経済、環境、各種行政分野の研修員受入れを中心に実施している。無償資金協力では、97年5月に初の一般無償プロジェクトである「医療機材整備計画」が実施された。有償資金協力については、97年9月、初の円借款供与となる「鉄道輸送近代化計画」に関する交換公文署名が行われた。
(1) 我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸与 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
-(-) -(-) -(-) 0.24(31) 4.02(92) |
0.21(100) 0.52(100) 0.71(100) 0.55( 71) 0.34( 8) |
0.21(100) 0.52(100) 0.71(100) 0.78(100) 4.36(100) |
- - - - - |
-(-) -(-) -(-) -(-) -(-) |
0.21(100) 0.52(100) 0.71(100) 0.78(100) 4.36(100) |
累計 | 4.26(64) | 2.42(36) | 6.67(100) | - | -(-) | 6.67(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績(支出純額、単位:百万ドル)
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
米国 16.0 米国 12.0 日本 0.8 |
日本 0.5 日本 0.7 英国 0.6 |
ドイツ 0.3 英国 0.3 ドイツ 0.5 |
英国 0.3 フランス 0.3 フランス 0.2 |
スウェーデン 19.0 ドイツ 15.0 フィンランド 18.0 |
0.5 0.7 0.8 |
17.1 13.6 2.2 |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
CEC 6.7 CEC 5.9 CEC 3.8 |
UNICEF 1.0 UNICEF 1.4 UNDP 1.4 |
UNFPA 0.3 UNDP 1.2 EBRD 1.3 |
UNTA 0.1 UNFPA 0.1 UNICEF 1.1 |
UNDP 9.1 UNTA 0.1 UNFPA 0.8 |
0.1 0.2 0.3 |
8.2 8.9 8.6 |
(3) 年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
93 | なし | なし |
0.61億円
研修員受入 21人 |
94 | なし | なし |
0.18億円
研修員受入 15人 |
95 | なし | なし |
0.24億円
研修員受入 20人 |
96 | なし |
5.55億円
医療機材整備計画 (5.55) |
0.87億円
研修員受入 24人 |
97 |
45.05億円
鉄道輸送近代化計画(45.05) |
なし |
0.14億円
研修員受入 12人 |
98 | なし | なし |
0.40億円
研修員受入 30人 |
98年度までの累計 | 45.05億円 | 5.55億円 |
2.49億円
研修員受入 122人 |
(注) | 1. | 「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。 (ただし、96年度の実績については、96年度に閣議決定を行い、97年5月末日までにE/N署名を行ったもの。) |
2. | 「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。 |