(1)シンガポールは、65年にマレイシアより分離・独立して以来、リー・クァンユー首相の下、極めて安定した政権が維持されてきた。90年11月に首相に就任したゴー・チョクトン首相は、向こう25年間を展望した政権構想「NEXTLAP」の中で、社会的弱者にも配慮した社会福祉(医療、教育、住宅)に重点を置く諸政策を打ち出している。97年1月に実施された総選挙等を見ても、与党PAP(人民行動党)への支持は大きい。
外交面では、東南アジア地域における安全保障の維持及び世界市場へのアクセス確保を重視し、その中でASEAN諸国との友好協力関係を外交の基軸としている。また、アジア・太平洋地域における米国の軍事的プレゼンス及び政治的コミットメントの維持を重視するとともに、ASEAN、APEC等の地域協力にも積極的な立場をとっている。また、国連の平和維持活動等にも積極的に参加している。
(2)シンガポールは、外資導入を軸とする工業化を積極的に推進している。97年には、アジア通貨・経済危機の影響が懸念されたものの8.0%の経済成長率を記録したが、98年は0.3%に落ち込んでいる。97年の総貿易額は対前年比5.7%増(約2,574億ドル)、但し、98年は対前年比18%減(約2,113億ドル)。シンガポールは、86年以降の高成長により労働力不足、高賃金化が顕著となってきたことから、近年では高付加価値産業の導入及び多国籍企業の地域統合本部の誘致を積極的に進めることにより産業の高度化に取り組んでいる。この一環としてマレイシアのジョホール州とインドネシアのリアウ州及びシンガポールの3点を結ぶ経済圏拡大構想(「成長の三角地帯」と呼ばれる)を提唱し推進している。この構想は、労働集約型産業などをシンガポール周辺の両地域に誘導するとともに、シンガポールには地域統括の高次産業機能を集積するというものである。
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 2,722 | 2,987 | 3,044 | 3,104 | |
名目GNP |
総額(百万ドル) | 33,512 | 79,831 | 92,987 | 101,834 |
一人当たり(ドル) | 12,310 | 26,730 | 30,550 | 32,810 | |
経常収支(百万ドル) | 3,119 | 14,361 | 14,723 | 14,803 | |
財政収支(百万シンガポールドル) | 6,495 | 15,870 | 18,868 | 13,612 | |
消費者物価指数(90年=100) | 100,0 | 118.0 | 120.8 | - | |
DSR(%) | - | - | - | - | |
対外債務残高(百万ドル) | - | - | - | - | |
為替レート(年平均、164ドル=シンガポールドル) | 1.8125 | 1.4174 | 1.4100 | 1.4848 | |
分類(DAC/国連) | 移行国/- | ||||
面積(千平方キロメートル) | 0.6 |
(参考2)主要社会開発指標
- |
90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 74 | 77(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
8 | 4(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
9 | 6(97年) | ||
下位20%の所得又は消費割合(%) | - | - | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
10(80-90年平均) | 10(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | 9(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
74(80-90年平均) | - | |
初等教育純就学率 (%) |
100 | - | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 100(88-90年平均) | 100(96年) | |
女子生徒比率 (%) |
初等教育 | 47 | 48(96年) | 森林面積 (1000平方キロメートル) |
0 | 0(95年) |
中等教育 | 50 | - |
(3)我が国との関係は、両国要人の往来も活発化しており総じて良好な状態にある。我が国はシンガポールにとり重要な貿易パートナーであり、アジア経済危機の影響で減少したものの、98年の我が国との輸出入総額は約242.1億ドル(97年321.7億ドル)で、同国にとり米国、マレイシアに次ぐ第3位の貿易相手国となっている。なお、シンガポールの対日貿易収支は恒常的に赤字で拡大傾向にあったが、98年は100.7億ドル(97年143.8億ドル)を記録した。
(1) シンガポールは、既に相当の経済発展を遂げていることから、我が国はかなり高度な技術分野を中心に技術協力を進めてきた。98年度には2.37億円(JICA実績ベース)の技術協力支援を行っている。
(2) 93年5月には日本・シンガポール首脳会談で「日本・シンガポール・パートナーシップ・プログラム(JSPP)」の策定につき基本合意し、94年4月より実施している。これはシンガポールの援助供与国としての役割を漸進的に強化することにより、日本とシンガポール両国の人材、技術力、資金を有効に組み合わせ、これにより他の途上国の経済発展を効果的に支援するための共同の技術協力の枠組みを設定したものである。
本件プログラムの下では、94年度から両国が費用折半により、シンガポールにおいて第三国からの参加者を対象とした研修事業を実施することとされ、現在までの実績は、(イ)第三国研修では、96年度は11コース、97年度は10コース、98年度は6コース(上級経営診断、港湾管理、交番システム、メカトロニクス、高度情報管理技術、環境管理)、(ロ)第三国専門家は、94年度に電気制御(インドネシアへ派遣)、機械加工技術(インドネシアへ派遣)の2名の実績がある。
(3) このようなJSPPにおける実績を踏まえ、97年1月の日・シンガポール首脳会談において、21世紀に向けたイコール・パートナーシップに基づく新たな協力関係の構築につき基本合意がなされた。これを受け、イコール・パートナーシップに基づき共同で技術協力を実施することを目的とする「21世紀のための日本・シンガポール・パートナーシップ・プログラム(JSPP21)」に係る枠組文書が97年5月に署名された。
JSPP21の主な内容は、(イ)シンガポールにおける共同研修事業の実施、(ロ)その他の協力事業として、1)途上国での共同セミナーの開催、2)途上国での共同技術協力プロジェクトへの専門家の派遣、3)補完型研修等の実施可能性を検討すること、(ハ)援助実施機関の間の人的交流の促進、(ニ)年次計画策定のための計画委員会の設置である。98年度においては、シンガポールでの共同研修事業として「航空情報サービス」「観光従事者の訓練」「生産性向上」、開発途上国での初の共同セミナーとして「貿易振興・投資促進」をテーマとするセミナー、警察分野における南アフリカへの共同専門家派遣、補完型研修として「警察行政セミナー」等を実施している。
(4) なお、96年1月にシンガポールがDAC援助受取国リストパートIからリストパートIIに移行したことに伴い、技術協力に限って実施してきたODAによる協力を逓減させてきており、98年度をもって終了した。
(1) 我が国のODA実績
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
-(-) -(-) -(-) -(-) -(-) |
13.56(100) 13.53(100) 8.54(100) 3.08(100) 2.27(100) |
13.56(100) 13.53(100) 8.54(100) 3.08(100) 2.27(100) |
- - - - - |
-(-) -(-) -(-) -(-) -(-) |
13.56(100) 13.53(100) 8.54(100) 3.08(100) 2.27(100) |
累計 | 24.63(-) | 239.88(-) | 264.52(-) | 77.27 | -10.76(-) | 253.75(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET | (支出純額、単位:百万ドル) |
国際機関、ODA NET | (97年、支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
CEC 1.9 CEC 0.3 CEC 0.8 |
UNTA 0.6 UNHCR 0.2 UNTA 0.3 |
UNHCR 0.3 UNTA 0.2 UNHCR 0.1 |
- - - |
- - - |
0.0 0.0 0.0 |
2.8 0.7 1.2 |
(3) 年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 |
127.40億円
(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照) |
31.17億円
(内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照) |
169.16億円
研修員受入 3,239人 |
91 | なし | なし |
8.14億円
研修員受入 232人 |
92 | なし | なし |
11.49億円
研修員受入 242人 |
93 | なし | なし |
7.43億円
研修員受入 232人 |
94 | なし | なし |
5.22億円
研修員受入 189人 |
95 | なし | なし |
3.90億円
研修員受入 181人 |
96 | なし | なし |
3.02億円
研修員受入 173人 |
97 | なし | なし |
2.89億円
研修員受入 159人 |
98 | なし | なし |
2.37億円
研修員受入 116人 |
98年度までの累計 | 127.40億円 | 31.17億円 |
213.62億円
研修員受入 4,763人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.70年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/j_90sbefore/901-05.htm)
(参考1) 98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
原型生産訓練センター |
66.10~72.10 |
(参考2) 98年度実施開発調査案件
案件名 |
マラッカ・シンガポール海峡水路再調査(第3次)*注 |
*注 インドネシア、シンガポール、マレイシアの3か国において実施