(2)諸外国・国際機関との連携
■G7・G20における連携
G7カナナスキス・サミットで発言する石破総理大臣(当時)(写真:内閣広報室)
G20ヨハネスブルグ・サミットで発言する高市総理大臣(写真:内閣広報室)
G7においては、カナダ議長国の下、2025年6月、G7カナナスキス・サミットが開催されました。日本からは石破総理大臣(当時)が出席し、「強く、主権を有するウクライナ」のセッションでは、石破総理大臣(当時)から、ウクライナの産業振興を含む官民一体の復旧・復興支援を一層推進していく旨述べました。「エネルギー安全保障」のセッションでは、石破総理大臣(当時)から、日本が率先して提唱してきた質の高いインフラ投資の重要性を指摘した上で、大規模なインフラ支援に加えて、農村用の電力支援や飲み水の確保など、途上国の人々の生活水準の向上を図るという草の根の視点も必要である旨述べました。また、民間資金動員の重要性を指摘した上で、2025年4月に改正されたJICA法により、JICAの金融手法を拡充し、途上国企業への保証や債券取得などを可能にした旨紹介したほか、開発途上国の債務持続可能性の確保のため、G20「共通枠組」の実施改善や、債務透明性向上の取組が必要であることを強調しました。さらに、日本が主催するTICAD 9も見据え、途上国の成長を後押しするため、日本は責任を果たしていく旨述べました。
10月、米国・ワシントンDCにおいて開催されたG7開発大臣会合には宮路外務副大臣(当時)が出席し、6月のサミットの成果を受け、「経済的繁栄のためのパートナーシップ構築」をテーマに議論が行われました。セッション1「開発協力におけるG7の優先事項」では、日本から、G7が連携して課題解決を主導する必要性が高まっており、多様なアクターと連携した上で「共創」のアプローチが重要であること、また、全ての開発協力提供者が、国際ルールやスタンダードを遵守した透明で公正な開発金融を行うべく、引き続きG7で取り組む必要性を強調しました。さらに、開発資金ニーズへの対応として、国内資金動員、ドナーベースの拡大、民間資金動員が重要であることを主張しました。セッション2「経済的変革と相互成長の機会」では、宮路外務副大臣(当時)から、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に沿った質の高いインフラ投資促進が重要である点を強調し、日本が進めるナカラ回廊とグローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)の下で進むロビト回廊開発の相乗効果への期待を述べるとともに、重要鉱物のサプライチェーンの強靭(じん)化・多角化については、責任ある鉱物開発の観点から、新たな供給源の開拓のみならず持続可能な資源プロジェクトの推進および人材育成が不可欠である旨を強調しました(サプライチェーンの強靭化・多角化については第Ⅲ部1(1)、質の高いインフラについては第Ⅲ部1(3)を参照)。
G20では、7月に南アフリカにおいて、G20開発大臣会合が開催されました。日本からは松本外務大臣政務官(当時)が出席し、分断と対立が深まる時代だからこそ、G20は共通点と一致点を見いだし、持続可能な開発に向けた解決策を共創しつつ、全てのメンバーが責任を共有すべきと述べ、開発資金ニーズについて、ドナーベースの拡大、不正資金対策を含む途上国内の資金動員、および民間資金動員の重要性を強調し、法改正を通じてJICAの金融手法等を拡充したことを含む日本の具体的取組を紹介しました。その上で、全ての開発協力提供者が、国際ルールやスタンダードを遵守した透明で公正な開発金融を行うよう、引き続きG20として取り組んでいくことを求めました。また、日本が主導した「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に沿った質の高いインフラ投資促進の重要性を強調するとともに、日本が70年以上実施してきた「人への投資」を始め長期的視野に立った、日本らしいきめ細やかな支援が、東南アジアなどの新興国を被援助国から開発協力のパートナーへと変容させることにつながったことを紹介した上で、こうした援助国・被援助国の関係を越えたパートナーシップを、アフリカを始め世界に広げていきたい旨表明しました。
11月のG20ヨハネスブルグ・サミットには、高市総理大臣が出席し、セッション1の「誰一人取り残さない包括的で持続可能な経済成長」では、国際社会が複合的な危機に直面する中、全てのG20メンバーが責任を共有した形で、課題解決やグローバル・ガバナンスの構築を進める必要がある旨を強調しました。また、国際経済および貿易について、世界貿易機関(WTO)改革を含め、ルールに基づく自由で公正な国際経済秩序を発展させ、世界経済の成長や「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現につなげることが重要である旨、さらに、債務問題を含む国際開発金融については、国際開発金融機関(MDBs)の一層の効率的・効果的な支援、日本がG20で主導してきた質の高いインフラ投資の推進、G20「共有枠組」での債務再編の実施改善などの取組について述べました。セッション2の「強靱な世界-G20の貢献」では、日本は課題先進国としての知見や経験をいかし、災害、感染症、気候変動といった地球規模課題の解決に向け、各国の要望に基づいた取組を有言実行で実施してきたことを述べた上で、「仙台防災枠組」を通じた防災分野での国際協力、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けたUHCナレッジ・ハブでの人材育成やハイレベル・フォーラムの開催を含む日本の具体的取組を紹介しました。セッション3の「万人にとっての公平で公正な未来」では、強靭で信頼できる重要鉱物サプライチェーンの構築や、持続可能な資源プロジェクトと資源国における高付加価値化の推進に向け、各国が連携して取り組む必要性を述べるとともに、安全、安心で信頼できるAIエコシステムの実現に向け取り組んでいく旨を述べました(債務問題への取組については第Ⅲ部1(4)を参照)。
■主要ドナー国等との連携
国連の試算によると、開発のための資金需要は年々肥大しており、その額は年間4兆ドルを超えるとされています。この額は、新型コロナ感染拡大前の2.5兆ドルと比べても大きく増大しています。国連では、開発途上国の開発資金確保のための具体的方策や課題を議論するための首脳級会合が開催されてきましたが、2025年6月30日から7月3日にかけて、スペインのセビリアで第4回国連開発資金国際会議(FfD4)が開催され、日本から松本外務大臣政務官(当時)が出席しました。政務官は、同会議において、世界がかつてない複合的危機に直面している今、国際社会の結束と迅速な行動が不可欠であり、「人間の安全保障」の理念の下、各国の自助努力とそれを支える連帯、国内資金動員および民間資金動員の強化、透明で公正な開発金融の促進が重要であると発言しました。FfD4では、昨今の国際援助を取り巻く環境の変化を踏まえ、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)の見直しに向けたプロセスについても公表され、議論が行われています。
また、日本は主要ドナーとの間で対話を実施し、お互いの優先課題・政策について意見交換を行っています。2025年3月に日本は英国との間で日英開発政策対話を、また、5月にEUとの間で日EU開発政策対話を実施し、双方の実施している開発政策や開発分野の国際的潮流について幅広く議論を行いました。
さらに、G20開発大臣会合に際し、松本外務大臣政務官(当時)は、ラマホパ南アフリカ計画・監視・評価大臣、ダーリントンのチャップマン女男爵・英外務・英連邦・開発省閣外大臣、アラバリ=ラドヴァン独経済協力・開発大臣、サライ・カナダ閣外大臣(国際開発担当)と会談を行い、開発分野におけるG20の協力関係強化などについて意見交換を行いました。
伝統的に開発協力を担ってきたDACのメンバーに加え、近年、中国、インド、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、ブラジル、南アフリカなどの新興国も開発途上国に対して支援を行い、開発課題の解決に大きな影響力を持つようになっています。日本は、新興国を含む諸国とも連携し、これらの新興国から開発途上国に対する援助が効果的に促進されるよう、新興国への支援も行っています。2025年3月の日・ブラジル首脳会談に際し、JICAとブラジル国際協力庁(ABC)との間で2025年に開発協力に関する戦略会議を開催することを発表しました。JICAと米州開発銀行(IDB)の間では、民間資金の動員を通じて開発課題に対処するための「中南米・カリブ地域民間セクター開発信託基金(TADAC)」も設立されています。さらに、2025年7月、日本はパレスチナとマレーシアとともに、「パレスチナ開発のためのアジア協力促進会合」(CEAPAD注4)の第4回閣僚級会合をマレーシアで開催し、パレスチナの人々の国造りの努力に対する支援を行うための東アジア諸国とパレスチナの今後の協力の指針として「CEAPAD IVクアラルンプール行動計画」を採択しました(CEAPAD IVについては第Ⅳ部7を参照。)
開発協力を効果的・効率的に進めていくための取組として、ドナー国のみならず、開発途上国、国際機関、民間セクター、市民社会、地方公共団体等の様々な開発主体が一同に会して話し合う「効果的な開発協力に関するグローバル・パートナーシップ(GPEDC)」があります。日本は、2024年1月からGPEDCの運営委員を務め、開発協力において、オーナーシップの尊重、成果重視、幅広いパートナーシップ、援助の透明性・相互説明責任といったGPEDCの4原則が実践されるよう、引き続き各国と連携しています。
■国際機関との連携
日本は、様々な開発および人道上の課題や地球規模の課題に対応するため、国際機関との連携を進めています。岩屋外務大臣(当時)は、5月に訪日したラザリーニ国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長、8月に訪日したマクドノー国連訓練調査研究所(UNITAR)総代表と会談しました。また、2025年8月に開催されたTICAD 9に出席するために訪日したディオップ国際金融公社(IFC)長官を始めとする世界銀行グループ代表団、徐浩良(シウ・ハオリャン)国連開発計画(UNDP)総裁代行兼副総裁、ポープ国際移住機関(IOM)事務局長、ラッセル国連児童基金(UNICEF)事務局長、ロスバッハ国連人間居住計画(UN-Habitat)事務局長、ニシュタールGaviワクチンアライアンス事務局長、サンズ世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)事務局長およびマケイン世界食糧計画(WFP)事務局長とそれぞれ会談を行いました。
また、国際機関との連携による支援を円滑に進めるため、国連機関を始めとする主要な国際機関との対話も実施しています。2025年は、1月に国連人道問題調整事務所(OCHA)との間で第2回日・OCHA政策協議、2月に国際移住機関(IOM)との間で第3回日・IOM政策協議、3月にWFPとの間で第17回日・WFP政策協議、4月に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との間で日・UNHCR政策協議、5月にUNDPとの間で第14回日・UNDP戦略対話を、6月にはUNICEFとの間で第36回日・UNICEF政策協議を開催しました。
■国際開発金融機関との連携
国際開発金融機関(MDBs)注5は、開発途上国の貧困削減や持続的な経済・社会的発展を支援する国際機関の総称です。パンデミックや気候変動などの国境を越える課題により貧困が深刻化し、不平等が拡大する中、世界銀行を始めとするMDBsにおいて、地球規模課題への対応強化に向けたMDBsの改革や、開発資金ニーズの増加に対応するための既存資本の活用(CAFレビュー)用語解説、民間資金動員の促進といった取組が進められています。
MDBsの機能強化に向けた改革の重要性については、2023年の日本議長国下のG7広島サミットに続き、2024年6月のG7プーリア・サミット、11月のG20リオデジャネイロ・サミットにおいても取り上げられ、MDBsの改革を進めることに対する支持が各国首脳からも表明されています。G20リオデジャネイロ首脳宣言では、「より良く、より大きく、より効果的なMDBsに向けたG20ロードマップ」が承認され、MDBsの持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた進捗が加速化し、地球規模課題への対応能力が高まることが期待されます。
用語解説
- CAFレビュー
- 国際開発金融機関(MDBs)の自己資本の十分性に関する枠組み(Capital Adequacy Framework)の独立レビュー。MDBsの既存資本を最大限活用するための方策を検討するG20の取組。2023年7月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、CAFレビューに関する進捗などを整理したロードマップが策定され、定期的に報告書が提出されている。2025年7月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、今後10年にわたり融資能力を拡大するための新たな手段を活用する際の助けとなるCAFの可能性が一層認識された。
- 注4 : Conference on the Cooperation among East Asian countries for Palestinian Developmentの略称。
- 注5 : 用語解説を参照。
