2025年版開発協力白書 日本の国際協力

第Ⅴ部 効果的・戦略的な開発協力の推進

コソボの水理気象研究所の職員に対して大気中の粒子状物質分析に係るトレーニングを行うJICA専門家

コソボの水理気象研究所の職員に対して大気中の粒子状物質分析に係るトレーニングを行うJICA専門家

1 共創を実現するための多様なパートナーとの連帯

開発協力大綱では、明確な解決策が見つかっていない様々な開発課題に対して、民間企業や公的金融機関など様々な主体が互いの強みを持ち寄り、対話・協働することにより、新たな社会的価値を共に創り出す「共創」を基本方針に掲げています。

そうした中、民間資金動員の促進、国内外の課題解決力を有する主体との連携強化および柔軟で効率的な独立行政法人国際協力機構(JICA)財務の実現の3点を主たる目的として、2025年4月にJICA法の一部を改正する法律が施行されました。

(1)民間企業との連携

近年、開発途上国の経済成長において、民間企業の投資活動の果たす役割はますます重要になっています。民間企業が行う様々なビジネスは、雇用創出や人材育成、技術力の向上など、開発途上国の経済社会開発に大きく寄与しています。日本政府は、こうした民間企業との連携を通じ、効果的・戦略的な開発協力を推進しています。

2023年以降にはオファー型協力(第Ⅴ部2(2)を参照)が開始され、開発途上国、日本の関係省庁、関係機関など、様々なステークホルダーの対話と共創が促進され、民間企業との連携の推進を図っています。昨今の国際情勢や外交課題の変化を踏まえ、2025年8月にはオファー型協力の戦略文書を改定し、戦略分野として「防災」を追記し「気候変動への対応・GX・防災」とするとともに、新たな分野として「保健」を選定しました。日本の知見や技術などをいかした協力の拡大を通じ、開発途上国の課題解決を図ると同時に、日本の課題解決や経済成長にもつなげていきます。

■中小企業・SDGsビジネス支援事業
ギニアでカカオの苗木生産・販売一貫モデルに係るニーズ確認調査を実施(写真:株式会社立花商店/中小企業・SDGsビジネス支援事業)

ギニアでカカオの苗木生産・販売一貫モデルに係るニーズ確認調査を実施(写真:株式会社立花商店/中小企業・SDGsビジネス支援事業)

日本企業が有する優れた製品・技術・サービスには、開発途上国の課題解決に貢献できるものが多くあります。中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)用語解説は、中小企業を始めとする日本企業の海外展開を支援することで、日本企業の海外ビジネスを通じ、開発途上国が抱える多様な課題の解決に寄与してきています。日本企業は、JICAの信頼とネットワークの下で、海外展開のための現地調査について、開発途上国のビジネスに精通したコンサルタントによる伴走支援を受けることができます(事業の概要、企業の技術活用のメリットなどについては、JICAホームページ注1を参照)。2025年度は、開発途上国31か国における合計62件の事業を支援対象に選定しました(図表Ⅴ-1、「匠の技術、世界へ 2」および「匠の技術、世界へ 3」も参照)。

■海外投融資

海外投融資用語解説は、開発効果の高い事業を開発途上国で行う企業に対し、民間金融機関から十分な資金が得られない場合に、JICAが必要な資金の供与等(融資、債務の保証、債券の取得、出資)を行うものです。2011年度から2024年度末時点の累積承諾額は約1兆4,004億円となっており、多くの日本企業も参画しています(事業の仕組み、対象分野・条件などについては、JICAホームページ注2を参照)。最近の好事例としては、2025年8月にアフリカの大手ベンチャー・キャピタル・ファンドとの間で出資契約が調印されました。この出資を通じて、開発効果の高い事業を展開するスタートアップに資本を供給し、アフリカの人々のエンパワーメントや気候変動を含む持続可能な経済活動を促すことで、アフリカ地域の経済振興と社会課題解決を図ることが期待されます。また、2025年3月には、ベトナムの金融機関との間で融資契約が調印されました。本邦金融機関などと協調で融資を行うことにより、同国の農業セクターにおける金融アクセス改善を図り、同国における農業生産拡大、農民所得の向上に寄与することが期待されます。

2025年8月に開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)では、「革新的な課題解決策の共創」をテーマに、経済、社会および平和と安定の三つの分野を柱に議論が行われ、分野横断的な重要事項の一つとして、民間セクター主導の持続的な成長に焦点が当てられました。同会議において、石破総理大臣(当時)は、民間資金動員の一環として、JICAの海外投融資を触媒とした官民総額15億ドル規模のインパクト投資を動員していく旨表明しました。

なお、2025年4月に改正されたJICA法では、新たな金融手法として、途上国企業等による債券発行を支援し、初期段階で債券を取得することにより投資家を誘引する債券取得、JICAが事業リスクを一部引き受けることで地場銀行などによる地場中小企業等への融資を促す信用保証、および持続可能性の向上に資する事業計画の達成水準に応じて金利を適用する成果連動型海外投融資を導入しました。

■協力準備調査(海外投融資)

近年、官民協働による開発途上国のインフラ整備および民間事業を通じた経済社会開発の動きが活発化しています。JICAは、海外投融資での支援を念頭に、民間資金を活用した事業の形成を図るため、協力準備調査(海外投融資)を実施しています。開発途上国における事業参画を検討している民間企業から事業提案を広く公募し、事業計画策定のためのフィージビリティ調査を支援しています(事業の仕組み、対象分野・国などについては、JICAホームページ注3を参照)。2010年から2024年までの採択案件数は92件に上っており、2024年はアジア地域において3件の事業が採択されています。

■事業・運営権対応型無償資金協力

日本政府は、日本企業が施設整備からその後の施設運営・維持管理にまで一貫して関与し、事業・運営権の取得を目指すという先行投資の性格を帯びた無償資金協力を行っています。事業・運営権対応型無償資金協力は、日本企業が開発途上国における官民連携(PPP:Public-Private Partnership)によるインフラ事業における事業権・運営権の取得を促進することを通じて、日本の技術・ノウハウを当該国の経済社会開発に役立てることを目的としています。2024年2月、チュニジアにおいて、日本企業の技術を活用する形で、下水を産業用水として再利用することを可能にする高度下水処理場を整備する無償資金協力に関する交換公文の署名が行われました。

■公的金融機関との連携

日本の開発協力は、多様なアクターとのパートナーシップの下で推進されています。開発協力の実施に当たっては、JICAとその他の公的資金(OOF)を扱う機関(株式会社国際協力銀行(JBIC)用語解説、株式会社日本貿易保険(NEXI)、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)等)との間の連携を強化するとともに、政府が民間セクターを含む多様な力を動員・結集するための触媒としての役割を果たすことが重要です。

図表Ⅴ-1 JICAによる海外展開支援メニュー

用語解説

中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)
JICAが実施する民間連携事業の一つで、開発途上国の課題解決に貢献する日本企業のビジネスの海外展開を支援するもの。「ニーズ確認調査」と「ビジネス化実証事業」の二つを支援対象として、年1回、日本企業からの申請を受け付けている。
海外投融資
JICAにより実施される有償資金協力の一つで、開発途上国で事業実施を担う民間セクターの法人などに対して、資金の供与等を行う協力の形態。開発途上国における民間事業は、様々なリスクを伴い、高い収益が見込めないことも多く、金融機関から十分な資金が得られないことがあるため、海外投融資を通じて、リスクがありながらも雇用創出や経済活性化の潜在性を有する民間事業に資金の供与等を行うことにより、開発途上地域の経済社会開発の促進に貢献している。対象分野は、(1)インフラ・成長加速、(2)SDGs(貧困削減、気候変動対策を含む)。
国際協力銀行(JBIC)
日本政府が全株式を保有する政策金融機関。一般の金融機関が行う金融業務を補完することを旨としつつ、(1)日本にとって重要な資源の海外における開発および取得の促進、(2)日本の産業の国際競争力の維持および向上、(3)地球温暖化の防止などの地球環境の保全を目的とする海外における事業の促進、(4)国際金融秩序の混乱の防止またはその被害への対処、の四つの分野について業務を行い、日本および国際経済社会への健全な発展に寄与することを目的としている。

  1. 注1 : 中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)について https://www.jica.go.jp/priv_partner/activities/sme/index.html
  2. 注2 : 海外投融資 https://www.jica.go.jp/activities/schemes/finance_co/loan/index.html
  3. 注3 : 協力準備調査(海外投融資) https://www.jica.go.jp/priv_partner/activities/psiffs/index.html
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