2025年版開発協力白書 日本の国際協力

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ドローンとAIを活用した予防型マラリア対策
~ガーナの感染症対策の現場を変える日本の最先端技術~

ボウフラの繁殖リスクが高い水たまりに駆除剤を散布(写真:SORA Technology株式会社)

ボウフラの繁殖リスクが高い水たまりに駆除剤を散布(写真:SORA Technology株式会社)

シエラレオネでドローンを活用して実地調査を実施(写真:SORA Technology株式会社)

シエラレオネでドローンを活用して実地調査を実施(写真:SORA Technology株式会社)

マラリアによる罹(り)患・死亡者の約9割はアフリカ大陸に集中しており、西アフリカのガーナにおいても、年間約500万人以上が罹患し、約1万人以上が死亡すると推定され、深刻な事態になっています。ガーナ政府は、マラリアを媒介する蚊の幼虫(ボウフラ)が成虫になる前に駆除を行う対策(Larval Source Management:LSM)として、ボウフラが生息する水たまりに、専用の駆除剤の散布を実施しています。しかし、人海戦術による繁殖リスクの高い水たまりのマッピング調査と手作業での散布には限界があり、駆除剤の過剰使用もコスト面から問題があり、効率性と費用対効果の改善が求められていました。

このLSMに先端的なデジタル技術を組み合わせることで同問題の解決に取り組むのが、日本のスタートアップ企業であるSORA Technology株式会社です。同社は、ドローンと人工知能(AI)を組み合わせた独自のセンシング技術「SORA Malaria Control」を開発し、広範囲にわたってボウフラの繁殖水域を効率的に監視・解析するシステムを構築しました。同社取締役の梅田昌季(まさき)氏は、「ドローンで取得した地形データを基に、水たまりの位置や大きさなどの特徴を判定するAIと、ボウフラの繁殖リスクが高い水たまりを推定するAIで解析して、駆除剤の散布が必要な水たまりをマップ化し、モバイルアプリを通じて現場の散布作業者に共有することで、的確かつ効率的な散布が可能となり、必要最小限のコストでLSMを実施できた。」と、デジタル技術の導入に手応えを感じています。

同社は、2023年からJICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用し、「SORA Malaria Control」を使用したマラリア対策に係る調査をガーナで実施しました。同システムを運用していくに当たっては、「現地化」がキーワードだと梅田氏は語ります。ガーナのインターネット速度や規制に沿う形でAIのスペックを調整したほか、AIによる解析の精度を上げるための現地データの収集に際し、ガーナ大学と連携し、大学生がインターンとして実地調査を行う仕組みを導入しました。梅田氏は、「現地の若者にとってマラリアは身近な問題であり、自分事として課題意識を持って参加してくれたことが『現地化』を促進した。また、ドローンを見たことのない住民に対して、学生が現地語で丁寧に説明することで、現地コミュニティーの理解・安心の醸成に寄与した。」と語ります。インターンシップ後には、SORA Technologyの社員として働く若者もおり、「ガーナのマラリア対策が少しでも早く進展するように、LSMを運用していく若い世代には、この技術を現地に適用させてほしい。」と、若手人材に期待を寄せています。

日本のODAによってガーナに建設された野口記念医学研究所およびガーナ大学における測定では、同社の取組を通じて、従来の調査方法に比べて3.6倍以上の水たまりが検出され、駆除剤の使用量および人的コストを半減させたことが実証されています。SORA Technologyは、この成果の報告会をガーナ政府のみならず、CSR活動に取り組む現地の民間企業も巻き込む形で実施し、同技術を活用したボウフラ駆除の実施範囲の拡大に取り組んでいます。さらに、同社はガーナでの成功体験を踏まえ、「SORA Malaria Control」をアフリカの近隣諸国に展開するのみならず、デング熱など他の蚊媒介感染症や農業分野における害虫駆除で応用する可能性についても検討を始めています。

グローバル化や気候変動により感染症が国境を越えて拡大するリスクが高まる中、同取組は、ガーナのみならず、日本を含む国際社会全体に裨(ひ)益するものです。この点について、梅田氏は、「感染症は、今や日本にとっても身近な課題であり、将来的には開発途上国で開発した技術を先進国に逆輸入する構想もある。私たちが先陣を切って、日本企業のグローバル市場への進出や国内でのイノベーション創出を促進していきたい。」と意欲を見せています。宙(SORA)を飛びながらガーナの感染症との闘いを支える同企業の技術は、日本のスタートアップ企業の最先端の知見・ノウハウを活用した新たな公衆衛生の解決策として、サブサハラ・アフリカ諸国にとどまらず、広くグローバルヘルスの推進に寄与することが期待されます。

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