2025年版開発協力白書 日本の国際協力

匠の技術、世界へ 4

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日本の宇宙技術を用いたODAが拓(ひら)く、パラグアイの未来
~衛星データを活用して防災分野と農牧分野の能力を強化~

現地調査実習にて作物の生育状況と衛星データの解析結果との比較を行っている様子(写真:J-spacesystems)

現地調査実習にて作物の生育状況と衛星データの解析結果との比較を行っている様子(写真:J-spacesystems)

現地調査実習前に解析した衛星データを確認する様子(写真:J-spacesystems)

現地調査実習前に解析した衛星データを確認する様子(写真:J-spacesystems)

南米の内陸国パラグアイでは、農牧業を主要産業としていますが、焼き畑を原因とする森林火災や気候変動などの影響による洪水被害が深刻化しています。

こうした背景の下、パラグアイ政府からの協力要請を受け、JICAは2023年から開始された中南米地域で初めての宇宙機関向け技術協力プロジェクトである「社会経済開発に向けた宇宙計画管理プロジェクト」を実施しました。本プロジェクトの目的は、パラグアイ宇宙機関(AEP)注1の能力強化と、衛星データを利用した防災能力強化および農産品の生産性向上など社会経済開発に貢献することです。宇宙技術の専門性を有する一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構(J-spacesystems)が中核となり、株式会社パスコと一般財団法人日本宇宙フォーラムからの技術的な助言を得て、パラグアイ側と共に取組を進めました。J-spacesystemsの中村晋作(しんさく)氏は、「当時、AEPは衛星データの一定の分析能力は保持していたものの、洪水などの災害発生後に衛星データを入手しても、解析結果の利活用が進められないことが課題であった。利活用のためには衛星データに加えて、観測地で得られる現地情報も必要になり、実地調査のノウハウを職員に丁寧に指導する必要があった。」と説明します。

また、衛星データの解析結果の利活用が進まないもう一つの課題として関係省庁間の連携不足があったことを踏まえ、本プロジェクトの活動として、パラグアイにとって特に重要な防災と農牧分野について、AEPと関連省庁がワーキンググループを立ち上げ、各分野における課題の整理、同課題を踏まえたアプリケーション開発や衛星データ利活用のマニュアル作りを行いました。

防災分野における実験的な取組として、例えば、河川の氾濫による浸水被害が多発している地域で、衛星データを使用した洪水被害シミュレーションを行い、災害リスクを分析してハザードマップを作成するなどの災害対策を行いました。パラグアイ防災庁からは「同対策を他地域にも波及させたい。」との要望があり、現在、避難計画の策定と併せてワーキンググループで協議が進んでいます。

そのほか、農牧分野でも、パラグアイにおける重要な輸出作物である大豆の生産効率化や、旱魃(かんばつ)や洪水などの自然災害リスクへの対策が求められる一方、過度な大豆依存を避けるため、農産品の多様化が必要なほか、農家の約9割を占める小規模農家への技術支援も課題となっていました。このような状況の中、衛星データや気象データを活用する研修を実施し、大豆の生育段階をリモートで把握することで、最適な施肥・灌漑(かんがい)時期の判断や、収量予測の精度の向上、作付面積の把握などに向けた基盤が整い、今後の持続可能な農業の発展に道筋を付けました。また、農産品の多様化の観点からは、トマト栽培など他の作物にも応用が進むほか、収量や品質の改善を目指し、小規模農家に対する衛星データの解析結果に基づく栽培指導が計画されています。

本プロジェクトでは、パラグアイ産の小型人工衛星の開発や、宇宙関連分野の人材育成にも注力しました。日本企業とパラグアイの官民の関係者間での交流が生まれたことで、両国の宇宙産業の発展に向けた連携がさらに深まっており、中村氏は、「日本で得た技術や知識をいかして、衛星データを多分野で応用できる人材が増えることが重要。これによって国民の生活が豊かになり、様々な課題解決にもつながる。」と若手技術者の活躍に期待を寄せ、「パラグアイには、中南米における小型衛星開発と運用の拠点になってもらいたい。」と希望を込めて語ります。

本プロジェクトの成果も踏まえ、2024年5月には、日本の様々な協力形態を組み合わせながら、両国の産官学を挙げて宇宙分野における協力を推進すべく、パラグアイを訪問した岸田総理大臣(当時)から「日・パラグアイ宇宙協力プログラム」の立ち上げが発表され、同プログラムを推進するためJICA・JAXA・AEP間で、宇宙開発への協力に係る覚書が署名されました。今後も、日本の宇宙技術を活用した課題解決策を、他国との国際ネットワークを広げながら、産官学で「共創」していくことが期待されます。


注1 Agencia Espacial del Paraguayの略称。

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