2025年版開発協力白書 日本の国際協力

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ゴビ砂漠に森を
~モンゴル発の持続可能な新しい緑化手法とこどもたちの環境教育の取組~

植栽後3年間無潅水で100%生存する樹木(写真:特定非営利活動法人 新潟県対外科学技術交流協会)

植栽後3年間無潅水で100%生存する樹木(写真:特定非営利活動法人 新潟県対外科学技術交流協会)

検証サイトでのこどもたちの緑化研修(写真:特定非営利活動法人 新潟県対外科学技術交流協会)

検証サイトでのこどもたちの緑化研修(写真:特定非営利活動法人 新潟県対外科学技術交流協会)

モンゴルでは、気候変動や過放牧の影響によって砂漠化が進行しています。同国政府は諸外国の協力を得ながら植栽活動を行ってきましたが、年間降水量が100mm程度と非常に少ない南部の極乾燥地域では、植栽された樹木のほとんどが潅水(かんすい)(水やり)なしでは枯死し、既に現地では潅水管理が追いつかない状況が続いていました。

このような現状を打開すべく、2009年、ゴビ砂漠東部に位置するドルノゴビ県の知事は、日本へ留学した経験も踏まえ、緑化活動を行う日本の団体に声掛けを行いました。その中で、35年以上にわたって優れた技術を国内外に提供してきた特定非営利活動法人新潟県対外科学技術交流協会(以下、協会)が、同知事からの要望に応え、産学官共同の「新潟県モンゴル緑化推進技術協力実行委員会」を発足させました。協会は、これまでモンゴルのような砂漠地域における緑化に取り組んだ経験はありませんでしたが、活動開始後の3年間で現地における植物や土壌に関する基礎調査を行いました。その結果を踏まえ、砂漠の過酷な環境でも自生するノニレなどの野生の樹木に着目し、新たな植栽手法である「深穴式・無潅水植栽手法」を立案し、JICA・草の根技術協力事業を活用して、2013年からの予備試験に続き、2021年から同手法の検証試験を実施しました。

「深穴式・無潅水植栽手法」とは、深い穴を掘って土壌を粉砕した後、半分以上埋め戻し、植栽前に多めの潅水を行うことで、その後植栽された苗の根がこの深層の水分を求めてより深く伸びるよう誘導する手法です。最大の特徴は、植栽前の深層に多めの水を注ぎ、植栽後、表面からの潅水は一切行わない点です。実際に、この方式で植栽された苗は、植栽後3年間無潅水で1本も枯れませんでした。協会の目黒修治理事は、「今回確認されたこの事実は、これまでゴビ砂漠で行われてきた植栽方法を根底から覆す、砂漠緑化のイノベーションと言える。モンゴルでは初めての成果であり、世界でも稀(まれ)な取組。」と語ります。

本事業の技術的成果を整理し、協会は砂漠地域向けの「緑化マニュアル(案)」を作成し、ドルノゴビ県内の職員への配布や実務研修、市民への研修などを通じて、行政と協力しながら新緑化技術の普及と定着を図っています。これらの取組は県外の緑化関係者からも注目を集めており、モンゴル国内の各地から情報提供の依頼が寄せられているほか、試験サイトの視察者も増えています。

また、砂漠地域における緑化の実現には百年単位の長い年月を要することから、協会はこどもたちへの環境教育にも注力しています。遊牧文化が根強く残り、植栽の習慣が定着していないモンゴルのこどもたちに、砂漠の生態系に興味を持ってもらった上で、オーナーシップを持って緑化活動に携わってもらうべく、環境教育の一環として「学校の森づくり」に関する授業を実践してきました。具体的には、「深穴式・無潅水植栽」検証サイトの見学などに加え、こどもたちが森のイメージをデザインし、学校で深穴式植栽を行うなどの取組を実施しました。こどもたちからは、「学んだことを家族に教え、自宅で果物を植え始めた」との声があがっており、「学校の森」を自らの手で作り上げることで、緑化への関心が芽生えています。目黒理事は「『植物に関わる生徒たちの目が輝いている』と現地の教員から聞いている。こどもたちが緑化活動の目的や意義を大切に考え、将来的に緑化の普及に貢献してくれたら嬉しい。」と語ります。現在、協会は同様の事業を県内の全学校に広げるべく取り組んでいます。

さらに、本事業に従事した現地スタッフで構成されるNGO「Green Mother Land」が2024年に設立され、「深穴式・無潅水植栽手法」を普及すべく、現在も協会と共にモニタリング・啓発活動を続けています。

モンゴルは、2030年までに全土に10億本植樹するという野心的な目標を掲げています。日本は引き続き産学官で連携し、少しでも枯死木が減るような支援を継続していきます。

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