(3)日本のNGOとの連携
日本のNGOは、開発途上国・地域において様々な分野で現地住民に直接裨(ひ)益する開発協力活動を実施しています。また、地震・台風などの自然災害や紛争等の現場では、迅速かつ効果的な緊急人道支援活動を展開しています。NGOは、開発途上国それぞれの地域に密着し、現地住民のニーズにきめ細かく対応することが可能であり、政府や国際機関による支援では手の届きにくい草の根レベルでの支援を実施しています。日本政府は、こうした「顔の見える開発協力」を行う日本のNGOを開発協力の戦略的パートナーと位置付け、NGOが行う開発協力事業に対する資金協力、NGOの能力向上に資する支援、NGOとの対話の3点を柱に連携を進めています(外務省ホームページの国際協力とNGO注9を参照)。
■NGOが行う事業に対する資金協力
日本政府は、日本のNGOが開発途上国・地域において、開発協力事業および緊急人道支援事業を円滑かつ効果的に実施できるように、様々な協力を行っています。
(日本NGO連携無償資金協力)
日本政府は、日本NGO連携無償資金協力として、日本のNGOが開発途上国で実施する経済社会開発事業に対して資金を提供しています。事業は、保健・医療・衛生、農村開発、障害者支援、教育、防災、地雷・不発弾処理等、幅広い分野を対象にしています。この枠組みを通じて、2023年度は日本の62のNGOが、39か国・1地域において、109件、総額約70億円の事業を実施しました(「案件紹介10」および「案件紹介13」を参照)。
(ジャパン・プラットフォーム(JPF))
グアテマラで日本での支援を受けて収穫した唐辛子を販売する先住民族の女性(日本NGO連携無償資金協力)(写真:公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン)
モルドバでウクライナからの避難民と受入れ地域住民のこどもたちが交流する場を提供し、相互理解を深める活動を行う日本のNGO職員(JPFを通じた日本の緊急人道支援)(写真:特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR Japan))
ジャパン・プラットフォーム(JPF)解説は、日本のNGO、経済界および政府が協力し、NGOの緊急人道支援活動を支援・調整する組織です。2024年12月時点で47のNGOが加盟しています。2023年度には、アフガニスタン、イエメン、イラク・シリア、ウクライナ、エチオピア、ガザ地区、トルコ、パキスタン、南スーダン、ミャンマー、モザンビークなどにおいて、20の災害や紛争被害に対する緊急人道支援のプログラムで145件の事業を実施しました(「案件紹介」を参照)。
(NGO事業補助金)
日本政府は、日本のNGOへの補助金交付事業を実施しています。対象となる事業は、開発協力事業の案件発掘・形成および事業実施後の評価を実施する「プロジェクト調査事業」、国内外において国際協力活動の拡大や深化に資する研修会や講習会などを実施する「国内における国際協力関連事業」ならびに「海外における国際協力関連事業」の3つです。2023年度には、4つの日本のNGOに対して、NGO事業補助金を交付し、プロジェクト形成調査、オンラインを含む国内外でのセミナーやワークショップなどの事業を実施しました。
(JICA・草の根技術協力事業)
ザンビアの小規模農家に対して養蜂技術を伝える丸森町の養蜂家(JICA・草の根技術協力事業)(写真:丸森町・耕野(こうや)振興会)
草の根技術協力事業は、国際協力の意思のある日本のNGO/市民社会組織(CSO)、その他民間の団体、地方公共団体または大学が、開発途上国の住民を対象として、その地域の経済および社会の開発または復興に協力することを目的として行う国際協力活動です。団体が有する技術、知見、経験をいかして提案する活動を、JICAが提案団体に業務委託してJICAと団体の協力関係の下に実施する共同事業です(制度の詳細や応募の手続等は、JICAホームページ注10を参照)。草の根技術協力事業は約80か国を対象に、毎年200件程度を実施しています。
■NGOに対する活動環境整備支援
国際協力において、日本のNGOの組織体制や事業実施能力をさらに強化し、人材育成を図ることを目的として、外務省は以下の取組を行っています。
(NGO相談員制度)
外務省の委嘱を受けた全国各地の経験豊富なNGO団体が「NGO相談員」となり、市民やNGO関係者から寄せられるNGOの国際協力活動、NGOの設立、組織の管理・運営、開発教育の進め方などに関する質問や相談に答える事業です。2023年度は外務省の委嘱を受けた15団体が、5,600件以上の質問・相談に応対し、約70件の出張サービス注11を行いました。
案件紹介13
マダガスカル一般公募
アチモンジャン郡における5歳未満児の栄養改善支援事業
日本NGO連携無償資金協力(2023年3月~2024年3月)
乳幼児の栄養改善を目指して
マダガスカルでは栄養不足の状況にある5歳未満児の割合が高く、その背景には、貧困、保護者の知識不足、不衛生な生活環境などがあります。日常的な栄養不足は、身体的・認知的な成長に大きなダメージが生じ、生涯にわたる健康と経済的影響が懸念されます。
特定非営利活動法人AMDA社会開発機構は、慢性的な栄養不足によるこどもの発育障害が深刻なアナラマンガ県アチモンジャン郡で、2022年からこどもたちの栄養状態の改善に取り組んでいます。本事業では、こどもの栄養改善につなげるべく、保護者を対象とした研修や研修講師となる700人以上のトレーナーの育成を行うとともに、地域の住民を対象とした栄養、保健、水と衛生などこどもの栄養改善につながる知識や、生計向上に関する研修を1年間で1万回以上実施しました。また、家庭菜園に必要な用具と種子を1,000世帯に提供し、衛生的なトイレを400基以上設置したほか、栄養の重要性を伝えるラジオ・プログラムを400回以上放送するなど、多面的な取組を実施しました。
こうした取組により、保護者がこどもの栄養を意識して生活するようになるとともに、家庭菜園により家計にも好影響があったとの声が聞かれています。あるトレーナーは、「生後3か月で食べ物を与えていた母親たちは、生後6か月まで母乳だけを与えるようになった。自分たちで除虫剤や堆肥を作ったり、家計管理をしたりすることで、節約もできるようになった。」と話します。こどもたちが健やかに成長できるよう、これからも地域住民の取組を支えていきます。
トレーナーによる住民への研修の様子(写真:特定非営利活動法人AMDA社会開発機構)
家庭菜園用農具を受け取った少年(写真:特定非営利活動法人AMDA社会開発機構)
(NGOインターン・プログラム/NGOスタディ・プログラム)
外務省は、人材育成を通じた組織強化を目的として、NGOインターン・プログラムおよびNGOスタディ・プログラムを実施しています。NGOインターン・プログラムは、将来的に日本の国際協力NGOで活躍しうる若手人材の育成を目的としており、2023年度は、計7人がインターンとしてNGOに受け入れられました。
NGOスタディ・プログラムは、日本の国際協力NGOに所属する中堅職員が国内外で研修を受け、研修成果を所属団体や他のNGOに広く共有し、日本のNGO全体の能力強化に貢献することを目的としており、2023年度は9人が研修を受けました。
(NGO研究会)
NGOが自らの事業実施能力や専門性の向上を図るために行う研究活動を外務省が支援しています。各研究会では、NGOが直面する共通の課題をテーマとして、調査・研究、セミナー、ワークショップ、シンポジウムなどを行い、具体的な改善策を報告・提言することによって、組織や能力の強化を図ります。2023年度は、「G7広島サミットでの議論を踏まえ、G7・C7での国際協力に係る課題を分析し、その中での日本の国際協力NGOとしてのあるべき姿を考える」と「NGOの基盤強化(NGO自らが行う強化策、政府・企業等の強化施策等)の過去の実績と新しい時代に求められる手法と施策」の2つのテーマに関する研究会を実施しました。この活動の報告書や成果物は外務省のホームページ注12に掲載されています。
■NGOとの対話(NGO・外務省定期協議会およびNGO-JICA協議会)
NGO・外務省定期協議会解説は、2023年度は「全体会議」が8月に、小委員会の「連携推進委員会」が7月、12月および2024年3月に、「ODA政策協議会」が2023年7月、11月および2024年3月に開催され、活発な意見交換が行われました(NGO・外務省定期協議会の詳細および議事録などについては外務省ホームページ注13を参照)。
また、JICAは、NGOとJICAの対話と連携を目的とするNGO-JICA協議会を実施しています。2023年度は2回実施され、1回目は93名、2回目は73名が参加しました(NGO-JICA協議会の詳細および議事録などについてはJICAホームページ注14を参照)。
用語解説
- ジャパン・プラットフォーム(JPF)
- 大規模災害時や紛争により大量の難民・避難民等が発生したときなどに日本のNGOによる迅速で効果的な緊急人道支援活動を支援・調整することを目的として、2000年にNGO、経済界、政府の連携によって設立された緊急人道支援組織。JPFは、日本政府から供与されたODA資金や企業・市民からの寄付金を活用して、大規模な災害が起きたときや、紛争により大量の難民・避難民等が発生したときなどに、生活物資の配布や生活再建などの緊急人道支援を実施する。
- NGO・外務省定期協議会
- NGOと外務省との連携強化や対話の促進を目的とし、ODAに関する情報共有やNGOとの連携の改善策などに関して定期的に意見交換する場として1996年に発足。全体会議、ODA政策協議会と連携推進委員会の2つの小委員会で構成。
- 注9 : 国際協力とNGO https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo.html
- 注10 : 草の根技術協力事業 https://www.jica.go.jp/partner/kusanone/index.html
- 注11 : 地方自治体や協力機関と協力し、国際協力関係のイベントなどにおいて相談業務や講演を行うサービス。
- 注12 : NGO研究会報告書 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/houkokusho/kenkyukai.html
- 注13 : NGO・外務省定期協議会 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/taiwa/kyougikai.html
- 注14 : NGOとの定期会合 https://www.jica.go.jp/partner/ngo_meeting/index.html
