2024年版開発協力白書 日本の国際協力

第Ⅴ部 効果的・戦略的な開発協力の推進

東ティモールにおいて、薬品保管庫でJICA海外協力隊員が現地職員と共に実験を行う様子(写真:JICA)

東ティモールにおいて、薬品保管庫でJICA海外協力隊員が現地職員と共に実験を行う様子(写真:JICA)

1 共創を実現するための多様なパートナーとの連帯

開発協力大綱では、明確な解決策が見つかっていない様々な開発課題に対して、民間企業や公的金融機関など様々な主体が互いの強みを持ち寄り、対話・協働することにより、新たな社会的価値を共に創り出す「共創」を基本方針に掲げています。

(1)民間企業との連携

近年、開発途上国の経済成長において、民間企業の投資活動の果たす役割はますます重要になっています。民間企業が行う様々なビジネスは、雇用創出や人材育成、技術力の向上など、開発途上国の経済社会開発に大きく寄与しています。日本政府は、こうした民間企業との連携を通じ、効果的・戦略的な開発協力を推進しています。

2012年以降は、民間企業と連携したJICA海外協力隊の派遣も行われています(JICA海外協力隊の連携派遣については第Ⅴ部2(2)を参照)。派遣された隊員は、隊員活動を通して、自身の業務経験を開発途上国の発展にいかすとともに、その国特有の商習慣や市場ニーズを把握し、帰国後の企業活動へ還元することが期待されています。

■中小企業・SDGsビジネス支援事業
メキシコで人工漁礁「シェルナース」を沈設し、生態系機能向上効果に関する実証実験を実施(写真:海洋建設株式会社/中小企業・SDGsビジネス支援事業)

メキシコで人工漁礁「シェルナース」を沈設し、生態系機能向上効果に関する実証実験を実施(写真:海洋建設株式会社/中小企業・SDGsビジネス支援事業)

日本企業の持つ優れた製品・技術・ノウハウは、開発途上国の課題の解決に貢献する可能性を持っています。中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)解説は、日本企業の製品・技術・ノウハウと開発途上国の開発ニーズとのマッチングを調査し、中小企業を始めとする日本企業による海外ビジネスづくりを支援するものです。このような形の官民連携を通じて、日本企業のビジネスが、開発途上国の経済社会開発に寄与することになります(事業の概要、活用のメリットなどについては、JICAホームページ注1を参照)。2024年度は、21の開発途上国における合計57件のビジネスを支援対象に選定しました(図表Ⅴ-1、「国際協力の現場から」、「匠の技術、世界へ 1」および「匠の技術、世界へ 3」も参照)。

図表Ⅴ-1 ODAを活用した官民連携支援スキーム
■海外投融資

海外投融資解説は、開発効果の高い事業を開発途上国で行う企業に対し、民間金融機関から十分な資金が得られない場合に、JICAが必要な資金を出資・融資するものです。2011年度から2023年度末時点の累積承諾額は約9,855億円となっており、多くの日本企業も参画しています(事業の仕組み、対象分野・条件などについては、JICAホームページ注2を参照)。最近の好事例としては、2024年に調印されたウクライナ・モルドバの輸出指向型産業支援事業やブラジルの農業セクター支援事業があります。前者は、2024年2月の日・ウクライナ経済復興推進会議に合わせて調印されたものであり、ウクライナとモルドバにおいて輸出指向型ICT企業等への出資を通じ、両国の外貨取得や雇用創出などを促進するものです。また、本事業は、両国の復興、経済社会の発展に寄与することが期待されます。加えて、ファンドの投資先に占める女性経営者・起業家の割合を30%以上と設定しており、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを推進する事業としても期待されています。後者は、ブラジル最大の信用組合が展開する融資事業への支援を通じ、ブラジルの農業セクターおよび中小零細事業者の金融アクセスを改善し、農業生産拡大や農民の所得の向上を目的とするものです。

2023年5月、G7広島サミットに際し開催したグローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)に関するサイドイベントにおいて、岸田総理大臣(当時)が官民のインフラ投資を通じてパートナー国の持続可能な開発に貢献することを表明したことを踏まえ、気候変動対策推進ファシリティ(ACCESS)、食料安全保障対応ファシリティ(SAFE)、金融包摂促進ファシリティ(FAFI)の3つの融資枠を創設しました。最近では、ACCESS適用案件として、ナイジェリアの気候変動対策支援事業(2023年11月調印)やFAFI適用案件として、インドの地方金融アクセス改善事業(2023年12月調印)が調印されています。

■協力準備調査(海外投融資)

近年、官民協働による開発途上国のインフラ整備および民間事業を通じた経済社会開発の動きが活発化しています。JICAは、海外投融資での支援を念頭に、民間資金を活用した事業の形成を図るため、協力準備調査(海外投融資)を実施しています。開発途上国における事業参画を検討している民間企業から事業提案を広く公募し、事業計画策定のためのフィージビリティ調査を支援しています(事業の仕組み、対象分野・国などについては、JICAホームページ注3を参照)。2010年から2024年までの採択案件数は91件に上っており、2024年はアジア地域において3件の事業が採択されています。

■事業・運営権対応型無償資金協力

日本政府は、日本企業が施設整備からその後の運営・維持管理にまで関与することを目指す公共事業に無償資金協力を行っています。事業・運営権対応型無償資金協力は、日本企業が開発途上国における官民連携(PPP:Public-Private Partnership)によるインフラ事業における事業権・運営権の獲得を促進することを通じて、日本の技術・ノウハウを当該国の経済社会開発に役立てることを目的としています。2024年2月、チュニジアにおいて、日本企業の技術を活用する形で、下水を産業用水として再利用することを可能にする高度下水処理場を整備する無償資金協力に関する交換公文の署名が行われました。

■公的金融機関との連携

日本の開発協力は、多様なアクターとのパートナーシップの下で推進されています。開発協力の実施にあたっては、JICAとその他の公的資金(OOF)を扱う機関(株式会社国際協力銀行(JBIC)解説、株式会社日本貿易保険(NEXI)、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)等)との間の連携を強化するとともに、政府が民間セクターを含む多様な力を動員・結集するための触媒としての役割を果たすことが重要です。

用語解説

中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)
JICAが実施する民間連携事業の一つで、開発途上国の課題解決に貢献する日本企業のビジネスの海外進出を支援するもの。「ニーズ確認調査」と「ビジネス化実証事業」の2つの支援メニューがある。年1回、日本企業からの申請を受け付けている。
海外投融資
JICAにより実施される有償資金協力の一つで、開発途上国で事業実施を担う民間セクターの法人などに対して、必要な資金を出資・融資する協力の形態。開発途上国における民間事業は、様々なリスクを伴い、高い収益が見込めないことも多く、金融機関から十分な資金が得られないことがあるため、海外投融資を通じて、リスクがありながらも雇用創出や経済活性化の潜在性を有する民間事業に出資・融資することにより、開発途上地域の経済社会開発の促進に貢献している。対象分野は、(1)インフラ・成長加速、(2)SDGs(貧困削減、気候変動対策を含む)。
国際協力銀行(JBIC)
日本政府が全株式を保有する政策金融機関。一般の金融機関が行う金融業務を補完することを旨としつつ、(1)日本にとって重要な資源の海外における開発および取得の促進、(2)日本の産業の国際競争力の維持および向上、(3)地球温暖化の防止などの地球環境の保全を目的とする海外における事業の促進、(4)国際金融秩序の混乱の防止またはその被害への対処、の4つの分野について業務を行い、日本および国際経済社会への健全な発展に寄与することを目的としている。

  1. 注1 : 中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)について https://www.jica.go.jp/priv_partner/activities/sme/index.html
  2. 注2 : 海外投融資 https://www.jica.go.jp/activities/schemes/finance_co/loan/index.html
  3. 注3 : 協力準備調査(海外投融資) https://www.jica.go.jp/priv_partner/activities/psiffs/index.html
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