2024年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 02

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モンゴルで命をつなぐドローン技術
~日本とモンゴルの協力が生んだドローンによる輸血用血液の配送網の構築~

渋滞中のウランバートル市内上空を飛行するドローン(写真:株式会社エアロネクスト)

渋滞中のウランバートル市内上空を飛行するドローン(写真:株式会社エアロネクスト)

ドローンで届いた輸血用血液を確認するモンゴル日本病院の看護師(写真:株式会社エアロネクスト)

ドローンで届いた輸血用血液を確認するモンゴル日本病院の看護師(写真:株式会社エアロネクスト)

モンゴルの全人口のおよそ半数が集中する首都ウランバートルでは、社会インフラの整備が急激な人口増に追いついておらず、経済成長に伴い車輌数も急増しています。交通渋滞の慢性化は、医療現場にも大きな支障をもたらしており、救急車の緊急走行や輸血用血液の搬送が渋滞に巻き込まれることに加え、同国では血液の搬送時における看護師の救急車への同乗が義務付けられていることにより、看護師が本来の医療サービスに従事する時間が減少しています。

このような課題解決に取り組むのは、ドローンを活用した物流ビジネスを展開する株式会社エアロネクストです。新たな物流インフラ網として空路に注目し、日本国内では山間部の過疎地や自然災害などの有事において、ドローンを活用した配送サービスの提供に取り組んできた同社は、創業当初から海外展開を重要戦略の一つとしてきました。ビジネスの展開先を探す中でモンゴルとの出会いがあり、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業注1を活用し、高い即時性と配送品質が求められる輸血用血液を対象としたドローン配送等の物流インフラの構築に取り組んでいます。

エアロネクスト社の海外事業開発担当の川ノ上和文(かわのうえかずふみ)氏は、「モンゴルに注目した理由の一つは、親日国であるという点だ。日本は長年にわたりODAで病院、学校、空港などのインフラを整備し、農牧業や環境分野での協力も行ってきた。モンゴルの日本への信頼感は強い。」と語ります。

2023年6月からニーズ確認調査を開始し、モンゴルの厳しい寒さや強風を考慮した運航オペレーションやドローン機体の寒冷地対策等に試行錯誤を重ね、11月、ウランバートルにある国立輸血センター(以下、輸血センター)と、日本の支援により建設されたモンゴル国立医科大学付属モンゴル日本病院(以下、モンゴル日本病院)間の、往復計9.5kmの血液輸送を行う実証実験に成功しました。陸送が困難な場所でのドローン活用という日本での経験とは異なり、人口が密集し高い安全性が求められる都市部での成功は画期的でした。

川ノ上氏は、「実証実験には、モンゴルの民間航空庁、国家気象環境モニタリング庁、土地測量地図庁など行政当局の理解と協力が必須だったが、モンゴルでの実績を持たない弊社が、JICAの紹介で現地の関係機関と接点を作れたことは、事業を円滑に進める上で非常に役立った。」と、JICA事業を活用するメリットを話します。

2024年5月からビジネス化実証事業を開始し、同社はNEWCOM GroupやMSDDといったモンゴルのパートナー企業と共に、ビジネスモデルの構築やドローンの運航体制確立に取り組み、6月にモンゴルで初のドローンの商用飛行ライセンスを取得しました。8月には運用を開始し、輸血センターから市内の3つの病院に血液の定期配送を行っています。緊急事態にも対応しており、9月に稀少な血液型の患者がモンゴル日本病院に搬送された際には、緊急要請を受けて片道4.75kmの距離を約13分で届けました。

モンゴル日本病院長のアディルサイハン氏は、「渋滞で助からなかったかもしれない2名の命が日本の技術で救われた。ドローンによる物流システムの普及に今後も全力で協力したい。」と、本事業の意義と今後の意気込みを語ります。輸血センター長のエルデネバヤル氏は、「コロナ禍でドローンによる空輸の可能性にかけて自らドローン製作を試みたが、諦めた経験がある。川ノ上氏との出会いがあり、実際に人命救助ができたことに感謝している。」と、本事業への熱い思いを語ります。

川ノ上氏は、「医療従事者がドローンの必要性を実感し、その有効性を広く発信することは、事業推進の大きな力になっている。今後は、モンゴル科学技術大学と連携し、モンゴルの厳しい自然環境に適した新型ドローンの共同研究や人材育成にも力を入れていく。現地の人たちが自律的に運営できる体制作りを目指したい。」と展望を語ります。今後、現地のニーズに沿った社会インフラの整備をさらに推進し、モンゴルだけでなく、交通渋滞に悩む他の周辺国の社会課題解決に貢献することが期待されます。


注1 用語解説を参照。

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