2024年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 03

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エジプト最大都市圏を走る地下鉄の建設支援を通じた交通インフラの拡充
~日本の優れた技術をいかした交通網の整備~

建設現場で日本企業関係者と現地の技術者が協議する様子(写真:三菱商事株式会社)

建設現場で日本企業関係者と現地の技術者が協議する様子(写真:三菱商事株式会社)

NATと協議する日本企業関係者(写真:株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル)

NATと協議する日本企業関係者(写真:株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル)

エジプト政府は、人口増加に伴う交通渋滞の緩和を目的に交通手段の拡充に取り組んできており、1987年にはアフリカ大陸で最初に地下鉄を開通させました。一方で、これまで3号線までが開通する中、2010年からの10年だけで人口が2,000万人増加するなど、いまだ急速な人口増加が続いており、とりわけ大カイロ首都圏には全人口の約2割が集中し、交通渋滞が深刻化しています。その中で、カイロ地下鉄4号線は、エジプト政府が策定した運輸交通都市整備に係る国家計画の中で、大カイロ首都圏の交通手段の拡充に向けた特に緊急性の高い事業と位置付けられており、日本は、2012年から有償資金協力を通じて、同4号線が結ぶカイロの中心部とギザのピラミッド地区間(約19km)の整備を支援しています。

本事業は、エジプトで初めて本邦技術活用条件(STEP)注1が適用された円借款事業であり、日本の優れた鉄道製品・技術を活用した鉄道車両や信号システムが納入される予定です。この区間が開業すれば、ギザ地区のピラミッドや、日本が建設や文化財修復・運営支援等を行い2024年10月に試験公開が始まった大エジプト博物館(GEM)等の主要観光地まで、カイロ中心部からわずか20分ほどで移動できるようになり、エジプトの観光業の発展に大きく資することが期待されます。

本事業の施工監理業務に携わる株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバルの軌道交通事業部副事業部長の錦織敦(にしこおりあつし)氏は、日本によるインフラ整備の強みとして、「4号線の工事にあたっては、ナイル川の下にトンネルを通す必要がある上、複数のトンネルを横並びではなく上下に連なる形で建設する必要があり、技術的にも難しい作業となる。エジプトの技術者にとっては初めての工法となるが、本事業には日本や欧州等の鉄道事業の経験豊富なエキスパートが多く参加するため、一緒に仕事をすることで、技術を吸収する良い機会になると考えている。」と、技術移転の側面を挙げます。

一方で、実施機関であるエジプト運輸省トンネル公団(NAT)が設定する雇用契約上の資格要件が厳しく、現地人材の確保という困難に直面した錦織氏は、「経験豊富なエジプト人技術者は、より給与の高い近隣国に出ていく傾向があるという背景を踏まえ、資格要件を緩和することで国内の人材育成にもつながることを伝え、NATと緊密なコミュニケーションと粘り強い交渉を繰り返すことで、一定の理解を得られつつある。」とNATと信頼関係を構築することによって問題を克服しつつあると述べます。

また、錦織氏は「観光地近くの宿舎に滞在しているが、GEMの試験公開などもあり近隣のホテルは盛況だ。4号線開通により交通混雑が緩和されアクセスが良くなれば、観光業はさらに活性化するのではないか。」と話します。「エジプトへの外国企業の進出も盛んになっており、最近ではオロナミンCのエジプトでの製造販売も始まった。交通網が整備されることで日本からの投資につながり、ひいてはエジプト人の雇用創出にも寄与することを期待している。」と4号線の開通によりもたらされる経済効果について語ります。

エジプト政府は、4号線のほか、カイロから東方45kmに新行政首都の開発を進めており、2022年には一部の政府関係職員が新行政首都で業務を開始するなど、大規模な都市開発が進められています。日本は、今後も、エジプト政府から寄せられる日本の優れた技術やノウハウへの期待に応えつつ、交通インフラ拡充等を通じて同国の経済発展に貢献していきます。


注1 第Ⅴ部2(2)を参照

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