2024年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 01一般公募

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コーヒー栽培の技術普及と栄養指導を両輪にラオスの農村で豊かな暮らしの実現をサポート
~日本、国際機関、民間企業連携による取組~

栄養改善事業の対象地域の女性たちと田才氏(最前列左から2人目)(写真:WFP Lao PDR)

栄養改善事業の対象地域の女性たちと田才氏(最前列左から2人目)(写真:WFP Lao PDR)

コーヒーの苗木を植樹する対象地域の村人と宮﨑氏(後列左から3人目)(写真:株式会社 坂ノ途中)

コーヒーの苗木を植樹する対象地域の村人と宮﨑氏(後列左から3人目)(写真:株式会社 坂ノ途中)

ラオスは近年、着実な経済発展を遂げているものの、所得はいまだ低い水準にあります。特に地方では、貨幣経済が浸透していない農村地域もあり、収入の低さが課題となっています。また、そうした収入の低さや開発の遅れを背景に、乳幼児やその母親、妊産婦などが低栄養状態に置かれています。

こうした状況の改善を目指して、国連世界食糧計画(WFP)は、日本政府の支援を受け、2016年からラオスのコーヒーの生産地域の森林保全と生産者の収入向上に取り組んでいる株式会社坂ノ途中と連携し、ラオス北部の8つの農村約300世帯を対象に、「コーヒー・ジャパン・プロジェクト」を開始しました。

WFPは政府機関との調整や事業全体の監理を行いつつ、主に栄養改善事業を担当しています。地域の女性たちを対象に、バランスの取れた食生活に関する研修や調理教室などの開催を通じて、栄養に関する理解を深めています。また、日常的に肉類を摂取できず、特にタンパク質が不足していることから、現金を支給し家畜などを購入してもらい、育てながら食料とする取組も行っています。WFPラオス事務所で本事業を担当する田才諒哉(たさいりょうや)氏は、かつてアフリカでJICA海外協力隊として活動した経験を踏まえ、「対象地域では、妊産婦は肉を食べてはならないなど、少数民族の伝統的な慣習がある。彼らの価値観を尊重しつつ、栄養の必要性を伝える工夫をしている。例えば、先行例となるような『モデル家庭』が生まれ、それを見た他の住民が自主的に栄養改善しようと思えるような状況を作っていきたい。」と、現場の声と実情に重きを置いた試行錯誤について語ります。事業の成果は見え始めており、「実際に鶏や魚を育て始めた農家さんが多くいる。実際の食卓に卵などが並んでいるのを見ると、変化を実感できる。」と、手応えを口にします。

コーヒー栽培の支援を行うのは、(株)坂ノ途中とその現地パートナーSaffron Coffee(サフロンコーヒー)です。その土地にあった種苗作りや、栽培や生産に関する研修や技術指導などの取組を進めています。同社の現地担当者、宮﨑咲弥(みやざきさや)氏は「熱心に取り組む農家が多いので、今後に期待している。かつて、他の支援者からコーヒーの木を配られたが、収穫までに頓挫してしまった農家もあると聞いている。実際に収穫期を迎え収穫物を現金化できる数年先まで、いかにモチベーションを維持させるかが重要だ。」と語ります。宮﨑氏も、JICA海外協力隊の経験があり、ルワンダでコーヒー農家と協働し、品質向上に取り組んだ経験を振り返り、「コーヒー栽培の技術や知識のみならず、現地の人々とのコミュニケーションの取り方に至るまで、当時の活動そのものが今にいきています。」と語ります。

(株)坂ノ途中は、環境保全に配慮したコーヒー栽培を行うことを重視しており、ラオス国内でも森林減少が深刻な本事業の対象地域で、サフロンコーヒーと共に、森林を守りながら農作物を育てる、アグロフォレストリー注1という農法によるコーヒー栽培に取り組んでいます。森の中、適度な日陰の下でゆっくり熟すことで上質なコーヒーが採れるようになり、森を守りながら、農家の収入の安定化にもつなげることを目指しています。プロジェクト期間には村にコーヒーの精製加工場を建設し、本事業終了後も現地との関係性を継続していく予定です。田才氏は「事業終了後も活動が継続されるのが民間企業と協力するメリットです。今後もプロジェクトの発展に取り組みたい。」と語ります。

今後、コーヒー栽培が軌道に乗り生計の向上が見込まれる中、WFP事業で改善されてきた栄養習慣がさらに定着することで、低栄養状態に置かれていた乳幼児や妊産婦等を含む農村全体の人々の、より豊かな生活につながることが期待されます。


注1 注19を参照。

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