匠の技術、世界へ 3
「沖縄発」の知見と技術で島国トンガの再生可能エネルギー事業を支援
~災害対応型の風力発電(可倒式風車)の導入~
地元学生を対象とした可倒式風車の見学会(写真:株式会社プログレッシブエナジー)
現地の技師とともに風力発電機を組み立てる様子(写真:株式会社プログレッシブエナジー)
南太平洋の島嶼(しょ)国であるトンガは、エネルギー資源に乏しく、電力供給の大部分を輸入ディーゼル発電で賄っています。島国であるため輸送コストは割高となることから電気代が高くなり、また、国際的なエネルギー資源価格の変動による影響を受けやすく、国家財政や国民生活に影響を与えています。同国は、自国のエネルギー安全保障と世界的な温室効果ガス排出削減という2つの課題に対応するため、2010年から「トンガ・エネルギー・ロードマップ(TERM)」を策定し、再生可能エネルギーの促進を積極的に進めています。
その中で、沖縄電力グループの株式会社プログレッシブエナジー(PEC)が、台風など沖縄と共通の気象課題を抱えるトンガでの可倒式風車の導入に協力することになりました。PECでは、風車そのものを90度近く地面に倒すことで、台風時の強風による損傷や倒壊の防止を図り、さらには従来の風車よりも容易に維持管理ができるという利点をいかし、2009年から可倒式風車を沖縄県内離島で建設、保守・維持管理してきています。沖縄と類似の災害に苦しむ国々の課題解決の一助とするために同技術の海外展開を検討する中で、JICAの民間技術普及促進事業を通じて可倒式風車の導入計画をトンガに提案し、その後、日本の無償資金協力を通じて、2019年までに首都ヌクアロファが位置するトンガタプ島に5基の可倒式風車を設置しました。
同社の常務取締役の儀保稔(ぎぼみのる)氏は、「可倒式風車への理解を深めてもらうところから始めるべく、沖縄にトンガ電力公社の技師を招いて維持管理作業を経験してもらい、トンガにも導入したいという期待を持ってもらった。」と当時を振り返ります。トンガでの導入に際して、技術スタッフとして現地に赴いた知名俊英(ちなしゅんえい)氏は、当時直面した苦労について、「言葉・文化の壁はもちろんのこと、建設工事を行う際の安全意識が日本と大きく異なった。高所で作業する際は安全帯を着けるなど、日本では当たり前に行っている基礎的なことから丁寧に指導する必要があった。」と語ります。PECは、このような安全面の技術指導のみならず、設備の運用・維持管理に係る研修も実施しました。「日本人の技術力に頼りっきりになるのではなく、日本から教わった技術をトンガの方々が先頭に立って、主体的に活用していきたいと思ってもらえたらうれしい。」と知名氏は語ります。
トンガの風力発電設備は、PECが海外展開の検討を始めた2012年から足かけ8年で完成しました。儀保氏は、「見学に訪れた地元中学生や住民が、完成した風車をみて歓声を上げていたのが印象的だった。また、電気代が安くなることへの期待が寄せられた。」と、トンガの人々の反応を振り返ります。
技術営業部電機課長の湧田森人(わくたもりと)氏は、「風力発電所の整備を日本の無償資金協力で行うのは、トンガが初めてと聞いている。弊社のような沖縄の小さな会社がこのような大きな事業に携われて光栄に思う。今回の経験で得た多くの知見をいかし、同じような課題を抱える他の国へも展開したい。」とやりがいと今後の展望について話します。
このような思いを受け、風力発電のみならず、太陽光発電も含む再生可能エネルギーの導入等、より幅広い事業を海外にワンストップで展開していくため、2021年に沖縄電力グループ5社は共同で「シードおきなわ合同会社」を設立しました。沖縄で育まれた再生可能エネルギー技術がより一層世界に広まっていくことが期待されます。
現在、トンガ政府は国内の電力供給を2035年までに100%再生可能エネルギーで賄うという野心的な目標を掲げています。日本は引き続き環境負荷の少ない発電システムの整備を通じて、太平洋島嶼国を含む各国のエネルギー安全保障、そして世界の温室効果ガスの排出削減に貢献していきます。
