(10)SDGs達成のための科学技術イノベーション(Science, Technology, and Innovation for SDGs:STI for SDGs)
現在、世界では、製造業やサービス業にとどまらず、農業や建設を含む多様な産業分野で情報通信技術(ICT)注74、人工知能(AI)、ロボット技術などが活用され、社会変革が生じています。
国連は、持続可能な開発のための2030アジェンダ(パラグラフ70)に基づき、国連機関間タスクチーム(UN-IATT:UN Inter-agency Task Team on STI for SDGs)を設立し、各国との連携の下、地球規模でのSTI for SDGsを推進しています。2021年もSDGsに関する国連STIフォーラムが開催され、限られた資源を最大限活用しながらSDGsを実現するための「切り札」として、STIへの国際的な期待が高まっています。
●日本の取組

2021年9月2日、松本外務大臣科学技術顧問が、鷲尾外務副大臣(当時)に対し、「地球の健康(planetary health、地球環境と人間の健康の連関):食料システム転換のための科学技術」とした提言とSTIショーケース(事例集)を提出
日本は、これまでの経済発展の過程で、STIを最大限活用しながら、保健・医療や環境、防災などの分野で自国の課題を克服してきた経験を有しています。そうした経験を基礎として、開発途上国が抱える課題解決のため、「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」注75などを通じて、科学技術面での協力に取り組んでいます。たとえば、2021年に実施されたウクライナにおけるチェルノブイリ災害後の環境管理支援技術の確立は、SATREPSによる課題解決の好例といえます(SATREPSによる具体的な取組については「匠の技術、世界へ3」および「匠の技術、世界へ4」を参照)。
加えて、途上国におけるSDGs達成に貢献しうる日本の優れた科学技術の活用を促すための「STI for SDGsプラットフォーム」の構築に向けた調査・分析を進めています。
UN-IATTはSTI for SDGsのためのロードマップ策定を世界各国で促進させるため、エチオピア、ガーナ、ケニア、インド、セルビアの5か国をパイロット国として、「グローバル・パイロット・プログラム」を実施しています。このプログラムにおいて、日本は、2020年度から世界銀行への拠出により、ケニアに対して、農業分野での支援を実施しています。
また、2021年、科学技術外交推進会議注76は、国連食料システムサミットおよび東京栄養サミット2021に向け、「地球の健康(planetary health、地球環境と人間の健康の連関):食料システム転換のための科学技術」とした提言を発信しました。また、この提言に基づき、飢餓(きが)・栄養不良を改善し地球環境にも配慮した食料システム転換に資するものとして、日本の強みを活かしたSTI事例をとりまとめたSTIショーケースを発信しました。