(9)資源・エネルギーへのアクセス確保
世界で電力にアクセスできない人々は2019年時点で約7.6億人、特にサブサハラ・アフリカでは、同地域人口の46%に上るといわれています。電気やガスなどのエネルギー供給の欠如は、産業発達の遅れや雇用機会の喪失を引き起こし、貧困をより一層深めるといった問題につながります。今後、世界のエネルギー需要はアジアをはじめとする新興国や開発途上国を中心にますます増えることが予想されており、エネルギーの安定的な供給や環境への適切な配慮が欠かせません。
●日本の取組

ラオスの電力輸出や安定供給のための系統計画策定や運用を強化するための技術協力での発電所視察の様子(写真:JICA)
日本は、開発途上国の持続可能な開発を推進するため、近代的なエネルギー供給を可能にする支援を提供し、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、省エネルギー設備や再生可能エネルギー(水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱など)を活用した発電施設など、環境に配慮したインフラ(経済社会基盤)整備も支援しています。
たとえば、2021年、日本は、国土が広い海域にまたがり、気候変動の影響に脆弱(ぜいじゃく)な太平洋島嶼(とうしょ)国地域において、エネルギー安全保障および低・脱炭素社会実現の観点から、グリッド接続型の再生可能エネルギーの主流化に向けた支援を行っています。ドミニカ共和国においては、輸入化石燃料に電力供給源の多くを依存する同国のエネルギー効率化を支援するため、円借款により、全国の公道における街灯のLED化などを支援しており、同国の公共セクターの省エネルギー化の促進および温室効果ガス排出量の削減に貢献しています(「国際協力の現場から」も参照)。
また、日本は、石油・ガス・鉱物資源などの開発において、資金の流れの透明性を高めるための多国間協力の枠組みである「採取産業透明性イニシアティブ(EITI)」を支援しています。採取企業は資源産出国政府へ支払った金額を、資源産出国政府は採取産業から受け取った金額を、それぞれEITIに報告しています。47の資源産出国と、日本を含む多数の支援国に加え、採取企業やNGOが参加しており、資金の流れを透明化することで、腐敗や紛争を予防し、成長と貧困削減につながる、責任ある資源開発の促進を目指しています。